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ものづくりへのオマージュその5

2008年07月14日 | Weblog
元、通産官僚の述懐

最近は霞ヶ関の官僚に対する風当たりが強い。天下りの問題からタクシーチケットの問題まで、果てはその能力まで取り沙汰されている。マスコミや一部政治家の過度の喧伝もあるのだろうが、庶民には実態は分り難い。ただ、明治の建国以来、高級官僚と言われる能吏の手によって極東の小さな島国の日本が、ここまで来ていることも事実であろう。間違いは正すべきだが、評価すべきは正当に評価すべきだ。

 元、通産官僚であった橋本久義氏は、氏の歩んだ道から日本の中小企業のために国が果した役割を述べておられる。そして同様のことはほかの国では真似られないのではないかとも言っている。

 そのひとつは、「中小企業の組織に関する法律」である。この法律によって中小企業団体中央会が、都道府県ごとにつくられ、小さな団体作りに貢献した。工業会や商工会である。これによりライバル会社間でも情報交換が行われるようになり、切磋琢磨が進みものづくりの技術が進歩していったというのである。

さらに通産省があるときは権威によってまとめ役になり、細かくフォローをおこなった。具体的には、政府系金融機関の融資は工業会に入っていないと受けられないとか、技術的に高い目標を設定した技術開発費用に補助金を出し、融資し、税金も安くするような仕組み作りである。ライバル同士が競い合い協力し合って共に発展できるように仕向けたのだという。

また、チャンピオンを育成するということも一生懸命やってきたという。戦後自動車産業は国の基幹産業になれる可能性があるため、これを育成しなくてはならない。そこでだが、通産省は部品屋さんが強くないといい自動車は作れないから、部品産業の育成をしましょうと決めたという。ほかの国では自動車産業そのものを育成しましょうとは言っても、部品屋さんをとは言わない。そのときの基本的なやり方は、重点2社とか3社のチャンピオンのベアリングならベアリング企業に、とにかくいいものを作って貰って、補助金を出して、どんどん大きくなって貰う。ほかの企業は、チャンピオン企業を模範として技術を磨いていく。これをテント理論というらしい。テントの真ん中すなわちチャンピオン企業を持ち上げれば、まわりの裾野も持ち上がるという。

通産省は、ほかにも基本的に企業の自主性を重んじながら、技術導入の許認可権などもうまく活用しながら、民間企業をうまくコントロールしてきたというのだ。


     註!通産省は現在の経済産業省
     この稿は、「町工場こそ日本の宝」2005年8月刊/PHP研究所
     岡野雅行、橋本久義共著を参考にさせていただきました。
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