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ものづくりへのオマージュその3

2008年07月08日 | Weblog
中国に負けない

 先に紹介した「町工場は日本の宝」の著者のお一人である橋本久義氏は、日本の製造業の「応援団長」である唐津一氏と同様に、「日本の製造業は中国に負けない」と言われている。「応援団長」と筆者が勝手に名づけた唐津氏は、個人でデミング賞も受賞されている品質管理において日本の第一人者である。唐津氏、橋本氏共に東京大学工学部のご出身のようだが、その後のご専門の分野の異なりから中国に負けない論理の切り口は違う。

唐津氏が品質管理を含め技術的論点に対して、橋本氏は国の仕組み作りの観点から述べておられる。ただお二人に共通だと思われるのは、日本人の心のありようが、ものづくりには欠くことのできぬ資質であり、同じ機械で作るものさえ、作る人の心根によって差がでるものとの見解である。

 『いいものをつくる能力は、中国の人には間違いなくあると思う。だが、それは仕事の質が金額に応じて変わるというお金の関数になりがちだ。日本人は儲からなくても、自らを鍛えるために能力を発揮していこうとするところがある。どうせつくるならいいものをつくろうとする。だから、日本人の意欲というものは、あるところから「収入の関数」ではなくなる。・・・』のように橋本氏は先の著書の中で述べておられる。

 唐津氏も、『日本人は世界で一番ものづくりに向いている国民である。良い製品を作るために努力することを当たり前と感じ、会社から要求されている以上のことを、当然のようにこなしてしまう。しかも融通が利き、臨機応変な対応が自発的にできる。』とその著書「中国は日本を追い抜けない!」2004年10月刊/PHP研究所、で述べられている。一方で唐津氏は、中国人は1級の商才の持ち主であるが、ものづくりには向いていないと断言されている。

『商売においては、ものづくりではあまり重要視されない駆け引きのうまさが決定的な要素となる。この「駆け引き」は日本外交に象徴されるように日本人には不得手な部分だ。しかしものづくりは、駆け引きとは対極にある「謙虚さと好奇心」が必要だ。日本人はこの点に非常に優れた民族特性を持っている。謙虚であることで、観念や常識を変更しやすく自分たちより優れたものを認める。好奇心からそれらを徹底的に調べて学ぶ。好奇心から「なぜだろう」が生まれ、改善行動に駆り立てられる。日本のものづくりの基盤がここにある』と唐津氏は述べておられる。


  註!本稿、唐津氏の著書からの引用には、誌面の都合上筆者の編集が入っていることをお断りさせていただきます。
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