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ものづくりへのオマージュその9

2008年07月25日 | Weblog
石油化学のものづくり

 筆者は、中小企業ではないが、企業の中でものづくりに従事した経験がある。先のプロジェクトZにも触れたけれど、石油化学プラント*4)で三交代勤務によるものづくりである。

 入社して1ヵ月半の新入社員集合教育を経て、配属された職場はエチレンオキサイドとエチレングリコールを製造するプラントであった。ここでも1ヶ月の座学研修の後、現場で三交代実習を経て本方勤務を任された。この頃日本の石油化学は、その技術をアメリカから導入してからまだ9年しか経っていなかった。工場の奥の間に位置する職場にはエチレンオキサイド、エチレングリコールそれぞれ3基ずつのプラントがあったが、それぞれ3番目のプラントは2年前の昭和39年すでに自社技術で建設している。

日本の石油化学工業は、住友化学新居浜と三井石油化学(現、三井化学)岩国・大竹を発祥の地として、昭和32年に最初のエチレンプラントが稼動している。これらのプラント建設には、戦艦大和を建造し、ゼロ戦を作り上げた日本の戦前からの高度な技術力が基盤にあった。高圧の反応器には大砲の砲身*5)を作る技術が応用されたであろうし、操船、操縦装置の技術もプラントの各種制御機器に転用されたのではないか。

 エチレングリコールは、車のラジエーター不凍液用として米国などでは昔から生産されていたが、石油化学で量産する目的は、当時急速に需要を伸ばしていたポリエステル繊維用だ。ポリエステル繊維とは東レテトロン、帝人テトロンの名でよく知られている代表的な化学繊維だ。現在は、繊維用ばかりかペットボトル用として需要が高い。エチレンオキサイドは、一部そのままで界面活性剤原料として出荷もされていたが、主にエチレングリコールの原料だ。

 エチレンオキサイド(酸化エチレン)は、エチレンを気相酸化して作られるが、エチレンの2個の炭素原子に酸素原子が又割き状態で1個ぶら下がっている構造のため、不安定で非常に危険な物質のひとつだ。触媒下、気相の有機反応を高温・高圧で行うことの危険性もさることながら、だからその製造プラントは工場の一番奥に設置されたと聞くが、精製した製品を保管、輸送するのもひと苦労だ。その点エチレングリコールは、非常に安定な化合物で、飲み込んだりしない限りあまり害はない。エチレンオキサイドを10倍量程度の水と静かに接触させて生成させ、後は蒸留するだけだ。



  *4)プラント:反応器やポンプ、蒸留塔などが組み合わさった工場施設、工業装置。
  *5)戦艦大和の主砲世界最大46センチ砲は、最大射程4万メートル、撃つたびに砲身内には約3300気圧の圧力がかかったとある
コメント
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