短編を読む その12

「二十日鼠」
「サキ傑作集」(サキ 創土社 1969)

列車に乗った男が服のなかにハツカネズミがいるのに気がついたものの、合席のご婦人の前で服を脱ぐわけにもいかず苦境に立たされる。

「家庭」
(同上)

求婚をしにでかけた男が、予定の女性ではなく、時間つぶしに訪ねた帽子づくりをしている遠縁の女性に求婚してしまう。最後の一行がなければO・ヘンリ風の作品になっただろうに。

「ラプロシュカの霊魂」
(同上)

知人に金を貸した悲しみがもとで死んでしまった男。男の霊をなぐさめるため、知人は男の意にそった方法で借りた金を手放そうと苦心する。

「重要美術品」
(同上)

刺青が重要な美術品となってしまったため、男は行動の自由を失ってしまう。

「神護」
(同上)

大雪のため列車に閉じこめられた男。同乗の女性に食べ物を乞うが、ひどい高値で売りつけられる。ユーモア小説。

「幸福の黄色いハンカチ」
「ニューヨーク・スケッチブック」(ピート・ハミル 河出書房新社 2009)

出所した男は服役中、やり直す気があるなら黄色いハンカチを木につるしておいてほしいと妻に手紙をだしていた。はたしてハンカチはつるされているのか。

「島」(アステリア・マクラウド)
「記憶に残っていること」(新潮社 2008)

島で灯台守をしている女性の一代記。神話のような筆致が美しく、読み終わると長い時間がたったような感じがする。傑作。

「死者の悪口を言うな」(ジョン・コリア)
「ニューヨーカー短篇集 3」(早川書房 1976)

家の地下でセメント塗りをしていた医師のもとに、知人2人が顔をだす。医師の妻は不在。もしやと思った知人たちは、医師に口裏を合わせる約束をする。コリアはほのめかすのがじつに上手い。

「州民一同によって証言された不可解な事件」(サド)
「フランス幻想小説傑作集」(白水社 1976)

悪魔と契約した男の話。実話のような体裁が面白い。

「手掛かりは銀の匙」
「ヴァルモンの功績」(ロバート・バー 東京創元社 2020)

元フランス国家警察の刑事局長で、いまはロンドンで探偵をしているヴァルモン譚の、諧謔味あふれる一編。上流階級の窃盗事件を探偵ヴァルモンがあばく、というか、穏便に解決するため使い走りをさせられる。


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