世界短編傑作集5

「世界短編傑作集5」(江戸川乱歩編 東京創元社 1961)。

創元推理文庫の一冊。
あんまり本がぼろぼろなので、一編ごとにちぎって読んだ。
巻末の出版案内が横書きだ。

収録作品は以下。

「黄色いなめくじ」 H・C・ベイリー
「見知らぬ部屋の犯罪」 カーター・ディクスン
「クリスマスに帰る」 ジョン・コリア
「爪」 ウィリアム・アイリッシュ
「ある殺人者の肖像」 クウェンティ・パトリック
「十五人の殺人者たち」 ベン・ヘクト
「危険な連中」 フレドッリク・ブラウン
「証拠のかわりに」 レックス・スタウト
「悪意」 ディビッド・C・クック

それから、ボーナス・トラックともいうべき、クイーンの「黄金の二十」。

カーター・デイクスンとフレドリック・ブラウンのものは、以前読んだことがあった。
レックス・スタウトはネロ・ウルフ物なのだけれど、表記が「ニーロ・ウルフ」だ。

面白かったのは、つぎの3編。

「黄色いなめくじ」(宇野利泰訳)。
フォーチュン氏もの。

兄のエディ・ヒルと妹のベツシィが溺れ死にそうになった。
エディが、ベッシィを殺そうとしたため。
エディは以前盗みをはたらいて、少年裁判所に送られたことも。
フォーチュン氏が捜査をすすめると、兄妹たちの同居人、ワイヴン夫人の死体が発見される。
はたして犯人はエディで、口封じのために妹を溺死させようとしたのか…?

兄妹のけなげさが印象的。
しかけは、「EQMM」で読んだ「あざみの綿毛」と一緒。
綿毛やなめくじが、死体が移動されていたことを発見するきっかけとなる。

タイトルの「黄色いなめくじ」とは、なにかの比喩かと思ったら、そのものずばりだった。
あちらには、黄色い色のナメクジがいるのだろうか。

「ある殺人者の肖像」(橋本福夫訳)。
わたしの回想録。
これも子どもがらみの話。

わたしの友人、マーティン・スレイターには、オリン卿という父親がいる。
オリン卿は、福音主義者の准男爵で、とかく息子につきまとい、見当違いの愛情を押しつける。
わたしが休みをスレイター邸ですごしていたとき、ついに事件が…。

はじめから犯人が割れているタイプの作品。
で、手段が語られるだけかと思いきや、最後でもうひとひねり。
くどい描写が、崇高さへとつながる。

「十五人の殺人者たち」(橋本福夫訳)。
舞台は戦時中のニューヨーク。
わたしがひとから聞いた話、という形式。

3ヶ月に一度、最高級の医者たちがあつまる、Xクラブという会合。
この会は誤診による殺人の、告白の会だった。
この日は新たなメンバーを加える予定。
新メンバーのウォーナー博士は、自分の誤診談を語りはじめる。

ベン・ヘクトはちょっとうるさい感じの小説を書くけれど、これは後味がいい。
深い余韻をのこすラスト。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )