かぶれの世界(新)

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

忘れられない本(1)

2023-08-11 20:59:46 | 本と雑誌
小学校中退の主人公が幾多の困難を乗り越えて日本植物学の権威になった朝ドラ「らんまん」を、ドラマが始まった頃からほぼ毎日見ている。大した学歴もない私が一時は米国と競って最先端の電子計算機の開発を担当した自分と重ね合わせて見る。主人公と一緒にして考えるのは恐れ多いが、私の場合は一冊の本がきっかけを作ってくれたと思う。

中学生の頃から電子計算機に興味があったが、私みたいな田舎者が専門家として仕事するのは実現不可能な夢だと思っていた。同じ中学生の頃に野球部に入り将来はプロ野球の選手と夢見ていたが、私は地域大会で負けてあっさり夢が破れた。残った夢が電子計算機の専門家だった。

私はその夢を実現する具体的なプランも持たぬまま美人事務員に惹かれ(私の特徴です)、電子計算機の専門家がいない(後で気づいた)学校で学んだ。それではと図書館に行き関連する書籍を読み、計算機を作る為の基礎知識を教えてくれるとある専門書を購入した。

それが、「ディジタル代数学」(尾崎弘・木下行三著 共立出版)だった。当時としては中々の値段1400円を少ない小遣いで買った。巻末の参考文献は殆どが横文字で、英語を真面目に勉強するようになった。最初のきっかけは通知簿の英語の成績が酷かったのを見て父母の英語教育支援が役立ったが。当時学校では情報処理学科も先生もおらず、この本が先生だと思い熟読した。

経緯は省略するが、その後通信機が主力で電子計算機も製造する会社に就職し、周辺装置の開発部門に配属された。1年間下働きし小型機の論理設計を任される機会を得た。「ディジタル代数学」で学んだ理論を適用し、理解できない直属上司を飛ばして開発責任者の主任の前で説明する機会を得た

私は最新の手法を専門用語を駆使して説明した。応用物理の修士資格を持っていた主任は私の説明を理解してくれ、それ以来私は一躍注目される存在になった。有名大学出身の上司や同僚ばかりの職場で、そんな学歴のない私が知識を持つ技術者であると示し新たな機会を与えてくれた。

お蔭でその後職場で最先端機器開発に参加する機会を何度も得た。新しい仕事をやり切ると更に新しい挑戦が巡ってくるという好循環が生まれた。今まで誰にも言ったことはないが、遡ればきっかけは「ディジタル代数学」だった。そんな私だから、自分の子供達に適切な教育機会を与える苦労もしなかった。

私は仕事に熱中した一方で、子供達に適切な教育機会を与えたのは家内だった。彼らが最高レベルの教育を受けたのは私が米国に赴任し仕事をしてた頃だ。彼らは私のような忘れられない本を手に入れたのか、或いは与えられたのか知らない。ましてや孫達はどうすべきか口出しできない。その資格もない。■

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 田舎暮らし雑感2023(8) | トップ | 川辺の出来事 »

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事