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周回遅れの読書録2017(1)

2017-02-28 18:38:27 | 本と雑誌
相変わらず読書ペースが遅い。言い訳としては、昨年暮れから読んだ本は中々読み応えがある長編作があったため。今回は自信をもって読書をお勧めしたい本がある。「スーパーパワー」(Iブレマー 日本経済新聞)と「危機と決断」(Bバーナンキ 角川書店)、「クラウドソーシング」(Jハウ 早川書房)の3冊である。

最初に、米国のとるべき道は自国優先主義と提案する「スーパーパワー」である。米大統領選の1年前にまるで「アメリカ第一」を主張するトランプ大統領の出現を予測したかのように思える内容だ。世界的に尊敬される政治学者の著者は、米国の相対的衰退の下で展開されたオバマ大統領の曖昧政策を非難し、意外にも「自国優先」を説く内容だ。おバカなトランプではない、あのブレマー先生の主張なのだ。トランプ大統領が出現しなかったら世迷言のように受け取ったかもしれない。その意味では今最も読むべき本ではないかと思う。

その次にお勧めしたいのはバーナンキ米連銀議長の回顧録「危機と決断」だ。私はリーマンショックが起こった時の数々の疑問、何故世界最高レベルの中央銀行総裁が事前に危機を認識できなかったのか、何故欧州の回復が震源地の米国より遅れたのか等々、に対する著者の明快な答えが書かれており面白かった。特に彼が欧州をどう見ていたか興味深い。

これでリーマンショックに対処した財務省及び連銀の責任者3人組の回顧録(Hポールソン、Tガイトナー、Bバーナンキ)を読んだことになる。リーマンショックに米国政府当局がどう対応したか、どんな仕組みの問題があったのか全貌がそれなりに分かり、その後の政策の理解の助けになったと思う。

上記2冊とは毛色が違うが「クラウドソーシング」も是非読書をお勧めしたい。我々高齢者にはちょっと縁遠いITが作り出した新しい知的創造の在り方を教えてくれる。優れた専門家ではなく(コンピューターやスマホと検索ソフト等を道具として当たり前に使いこなす)普通の群衆の方が優れた知的活動するプロセスは中々衝撃的だ。8年前に書かれたものだが、我が国がこの分野でどこまで来ているのか心配になる。

(2.5+)新 クラウドソーシング Jハウ 2009 早川書房 リナックスからウィキペディアやYoutubeまで様々な形のオンライン・コミュニティが創り出す集団的知性の膨大な具体例を紹介・分析し共通する考え方を解説したもの。群衆の1%の1%の1%が生み出す宝を選び出すGoogleの役割などを分かり易く体系的に説明されている。色々な具体例が出て来るので少し煩雑で読みずらいかもしれない。

(3.5+)L スーパーパワー(Gゼロ時代のアメリカの選択) Iブレマー 2015 日本経済新聞 3つの選択(1)独立するアメリカ;自国優先主義、(2)マネーボール;利益優先主義、(3)世界に積極関与;価値観で世界をリード、を米国の相対的影響力衰退の前提で議論し(1)自国優先を提案する書。オバマ大統領を慎重なマネーボール実践者と厳しく批判し、アメリカ国民は世界に関与を望まない、マネーボールは貧乏国の政策とし、利益優先主義は高価な過ちを防ぐからと選択。米国第一を説くトランプ大統領の出現を論理的に預言した内容。

(3.5)L 危機と決断(上・下) Bバーナンキ 2015年 角川書店 バーナンキ連銀(FRB)議長の回顧録で、子供から学生時代を軽く触れた後、2006年にFRB議長に就任後世界を恐怖に陥れたリーマンショックへの対応が詳細に書かれている。誰がこう言ったああ言ったと金融政策中心に700ページ以上にわたり細部が描かれており疲れる。だが、何故住宅バブル認識が遅れたか、金融システム監視が困難だったか、ベアーとリーマンの違い、欧米のストレステストの違いの影響、グラス・スティーガル法が役に立たない理由、などが単なる解説ではなく詳細な出来事を追っていくことで著者の理解が分かる。

(2.0)L 金融政策の死 野口悠紀雄 2014 日本経済新聞 金利データは経済動向を示すという考えを基本に、デフレ脱却による経済活性化を狙うアベノミクスは誤りと指摘する。機能したのは第2の矢(公共投資)だけという。だが、リーマンショック後の各国中央銀行の金融政策と回復を比べると、量的緩和などの金融政策が効果的だったはずだ。本書は理屈と結果を照らし合わせて謙虚に評価する姿勢に欠けていると感じる。

(2.0-)L 第6の波 JBムーディ 2011 徳間書店 250年前から始まったイノベーションを区分すると1)鉄、2)蒸気、3)電気、4)石油、5)ITと来て、現代は資源の効率利用する者が成功する時代と説く。言い換えると第6の波は商品からサービスを売る時代であるという。私には著者が主張する第6の時代はピンとこない、情報通信(IT)時代の一つの派生であるようで新時代の興奮を感じない。単に本として面白くないだけかも。

凡例:
 (0):読む価値なし (1)読んで益は無い (2):読んで損は無い
 (3):お勧め、得るもの多い  (4):名著です  (5):人生観が変わった 
 0.5:中間の評価、例えば1.5は<暇なら読んだら良い>と<読んで損はない>の中間
 -/+:数値で表した評価より「やや低い」、又は「やや高い」評価です。
2: 古本屋で手に入れた本
L: 図書館で借りた本
新: 「定価」で買った本

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