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サウスウェスト航空

2004-09-19 13:56:07 | 社会・経済
米国航空業界は9・11直後の経営危機から依然立ち直っていない。先週業界7位のUSエアが破産法11条の適用をバージニア州の連邦破産裁判所に申請した。USエアは1年半前に更生手続をしており、今回2度目の破綻は会社清算(破産法7条)の適用による会社存続の危機にある。申告によると米国航空業界の対GDP売上比率は9・11以前の0.75%から翌年0.55%に低下した。03年以降も旅客の回復以上に運賃が低下し、更に売上が下落する見込みだという。既に更生法を申請した業界二位のユナイテッド航空再建は難航、三位のデルタ航空は巨額の赤字を出し破産法申請回避に向けて必死の努力をしている。 

その中でサウスウエスト航空は着々と売上を伸ばし利益を上げている。サウスウェストは格安会社と呼ばれ、輸送単位コストがUSエアより38%も安価、路線距離を補正するとその差は更に広がる(9/14朝日新聞)。 私は96年から98年にかけてサウスウェストを何度も利用してシアトルとサクラメント間を行き来した。座席指定がなく搭乗券の代わりに搭乗口で搭乗順を示すプラスチックのカードを貰い、空いた席に座る。機内食にはサンドイッチの代わりにピーナッツが出てきた。最初ポロシャツ、ホットパンツにテニスシューズ姿の客室乗務員を見た時は吃驚したものである。格好だけを見て素人サービスと思ったがその後彼女達が只者ではないと見直すことになった。 

これらは単にコスト低減を目的にしたものではなく、徹底的に航空機の回転率を上げ定時運行を実現する狙いがあった。主要空港を経由して都市間を結ぶのではなく、近距離の都市間を直接結ぶ路線で航空機を一種類に絞り就航させ、路線展開していき成長してきた。乗り継ぎの為に発生するコストが一切発生しない。又、着陸してから乗客、荷物、食事の積み下ろしと機体点検を終わらせ再び離陸するまでの準備時間を徹底的に短縮し15分で出来るようにした。この結果、例えば他の航空会社が飛行機一機を使って1日3往復している間に、サウスウェストは4往復出来るようになった。生産設備の段取り換え速度と同じでこの差がもたらすコスト競争力は大きい。

従来型の航空会社は退職者に対する年金支払が大きな負担となっている。勿論、他の航空会社もサウスウェストに倣いコスト低減に務めてきたが中々成果が出ていない。これはサウスウェスト独特の風変わりでレイオフしない家族的な企業文化が貢献している。着陸すると機長から地上職員まで一体となって準備時間短縮の為働くといったことが会社運営のあらゆる局面で起こり低コスト体質を可能にしているのである。カンバンなどトヨタ生産方式を導入したが、それだけでは会社全体の業績改善に繋がらない例と通じる。棚卸管理能力が会社の総合力を示すといわれるように、準備時間は航空会社運営の実力を表している。日本の格安会社の苦戦は路線が羽田に一極集中している為と説明されているがそれだけか。サウスウェストは業界トップの格安かつ定時運行をしていると同時にクレーム率が最も少ない航空会社であることを忘れてはならない。

当時、私はアラスカ航空を使うことが多く他に選択がない時サウスウェスト航空を利用した。振り返るとアラスカは遅れが当たり前で、ひどい時は運休になり困った事があるがサウスウェストではその経験がない。それでもアラスカを利用したのは当時便数が多かったのと、サウスウェストの客層がビジネスマンではなく(ヒスパニック系が多かった記憶がある)、又、ロマンスシートに座り書類を開く雰囲気になかったことによる。今では企業の経費節減方針が行き渡り、ビジネス客のサウスウェスト利用が増えたと聞いている。


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