かぶれの世界(新)

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天邪鬼・日中領土紛争考

2012-09-19 17:37:09 | 国際・政治

尖閣列島を巡る日中間の緊張は収まる気配が少し出てきた。昨日は尖閣周辺の接続海域を航行中の中国監視船と海洋船が領海に近づき侵犯もあったというが、漁船が大挙して押し寄せる事態は避けられた。これからは経済領域で中国の嫌がらせが始まり長期戦になる見込みだ。

このタイミングで視点を変えてマスコミが余り報道しないポイント、私特有のへそ曲がりで皮肉っぽいタッチで考えてみたい。今、NHKでPBS(米国公共放送)が珍しく時間をかけて日中領土摩擦の解説をしていた。比較的公平な見方をしていると感じた。政府がやらせたデモとまでは言ったが、暴動になり工場が目茶目茶に破壊されたシーンまでは流してなかった。

日本の発信力と世界の受け止め

先ず日本の発信力の問題だ。東日本大震災の時はショッキングな映像が全世界に流れ、世界から直ちに支援の声が寄せられた。今回の中国の反日運動が暴動に至った映像は我々には十分ショッキングなはずだが、世界はそうでもないという印象を受ける。上記のPBSはマシで、全体的に寧ろ冷ややかに見ている気がする。

私が考える最大の理由は、アフガン・シリア等の中東を始め世界には戦争やテロなどで死者が続出し今も止まらない悲惨な映像が日常的に流れており、被害にあった日本企業の経営者はテロだと怒ったが、テロと同列の悲惨さという尺度から見ればもっと酷い映像が山ほどある。世界は酷い映像に溢れ麻痺している。領土紛争による小競り合いは聞き飽きているのだ。

経済的影響力の変化が一因

次の理由として、世界第2位のGDPの経済規模になった中国は、世界経済に大きな影響を与えていることだ。特に財政危機から中々抜け出せない欧州の財政悪化国は、中国からの資金をのどから手が出るほど欲しがっている。欧州は身の回りの問題で必死だ。日中紛争は遠い国の他人事だ。

欧米の人達の多くは詳細事情を知らないし、歴史上の領土紛争の多くはどちらかが一方的に正義というような事はないことも経験している。欧州にとっては日本に特有の問題であり、自らに火の粉が降りかかるようなことを避ける決意だ。彼らは建前を云々する前に、中国を刺激するような発現を抑制しているように感じる。それは責められない。

改めて中国は一体どういう国?

まず前提として中国はこういう国であるという認識が基本である。つまり中国は相手国との外交交渉には暴動や輸出禁止の強硬手段も躊躇わない、世界の常識やルールに従う国ではない。時には手段を選ばず威圧してでも国益を守る国である。これは善悪の問題ではない。中国はその一つという現実を認め、その上で冷静に対策を講じるべきだ。

もう少し砕けた言葉で中国人を描いてみよう。今回の暴動を見て義和団の乱を描いた映画「北京の55日」を思い出す方がいるはずだ。清朝末期に世界の帝国主義に収奪された中国人民が起こした反乱だ。列強に押さえ込まれた歴史も、映画では欧米からの視点で作られた。だが中国人にとれば、政治プロセスも外交交渉の是非もなくとも、明らかに「反乱に理あり」の出来事だった。当時の中国人のマインドセットは今も脈々と流れていると感じる。

そういう理由はさておき、娯楽映画として描いたウンカのように離散集合し破壊する人民の圧倒的な数(超大衆と呼ぶことにする)にある種の怖さを感じた。これが当時映画を見た時の無知な私の印象だ。ニュースで見た日本の進出企業に対する暴動には、同じ映画を見た時と同じ怖さを感じた。やっぱり、これが中国人のDNAか、100年経っても何も変わらないなーと。

超大衆を利用する中国政治

この超大衆を政治が利用するのも長い歴史で形作られた中国統治者の遺伝子と私は感じる。この100年を振り返ってみて、文化大革命も天安門事件もその構図だったといわれている。いわばお家芸だ。午前中ネットが伝えるニュースで、今回の政治の裏幕は実は次期主席の習近平というトクダネ(?)が流れてきた。次期政権の影響力を高める為の絶好の機会として利用したという。

直接のきっかけを辿ると、石原東京都知事の尖閣列島買取りによる日中関係の悪化を恐れた野田政権が、尖閣国有化で事を荒立てないよう国有化したことが裏目に出た。マスコミが都知事のいわば暴挙を、はやし立てたのも問題だった(中国には挑発的だったと思う)。伝えられる次期主席の狙いが本当ならば、どちらにしてもつけ込まれた可能性が高い。

日本の立つ位置

過去の経緯はおいといて、冷静に見て中国と日本は経済的にどういう関係なのか。大雑把に言うと日本企業は中国で商売をさせてもらって利益を得、中国人観光客が落とすお金で潤っている。逆もあるが、トータルすると日本は中国から相当の利益を得ている。

経済的に見ると個々の出入りはあってもトータルで日本の方が失うものがかなり多い。つまり、日本は中国で商売をさせてもらいお金を得ている関係なのだ。世界中殆どどの国ともそういう関係にある。多分、政府官僚は損得計算表を見直して、どんな理不尽な仕打ちにもじっと我慢して嵐が通り過ぎるのが経済的にベストと考えているはずだ。

失うものが大きくても、我慢できるか

紛争が長引けば双方ともに大きな損失を受ける。だが、日本の方が経済的に失うものが大きいことが、中国を強気にさせている一因だ。メディアの多くは中国がGDP世界2位になり日本の相対的地位が低下した為というが、もっと分かりやすく言うと、日本と遣り合っても失うものは中国の方が少ない。政権交代の機会を捉えて日本叩きをやってもおかしくない。

しかし、日本が失うものを覚悟すれば中国の被る損も半端ではない。実際、今まで日本が中国にとって最大の投資国であり中国急成長に大きな貢献をしてきた。この点では恩知らずの行動だ。だが今の日本人は被る損害に覚悟が出来てないと見透かされていると私は感じる。両方が大きな損害を被るのだが、日本が先にギブアップすると彼らは思っており、今回の黒幕はそれを政治成果にして権力闘争に勝とうとしていると推測する。

戦いの場を拡げる

日本が経済的に損をする構造をどうやって変えることが出来るか、これが外交当局の重要なテーマとなるはずだ。一つの方法は日中二国間関係を世界の中で位置づけ注目を集めさせることだ。欧米企業も中国市場に巨額の投資をしており、日本企業とも競争する関係にある。中国で起こっている事は自国にも起こるかもしれないと思わせれば損得勘定は逆転する。

又、中国はことあると毎にデモを許可して官製の暴動を起こし、場合によっては輸出入の制限を使って目的を達しようとする国である。極論まで踏み込めば自国の利益の為シリア内戦で政府軍が自国民を虐殺する手助けをしていると示唆するプロパガンダが効果的ではないかと私は考える。中国にとって世界の支持もしくは紛争に目を瞑ってくれる事は日中関係以上に重要だ。

本当に外交の失敗か?

そうかもしれない。マスコミや野党は日本外交の失敗、政府の対応の拙さを非難している。しかし、上記のように石原都知事が尖閣列島を買い取ると言った時から、中国は尖閣列島を理由にして権力闘争に利用しようと機会を狙っていたと推測する。東京都ならもっと刺激的な行動に及び、いずれにしても中国は暴発したろう。中国は理屈ではなく機会が欲しかったはずであり、鄧小平の現状維持を破ったらそれだけで十分だったと思う。

海外の反応を見るにつけ日本の発信力の弱さを感じた。政府の外交力を云々するマスコミだが、逆に日本のマスコミの発信力の弱さを痛切に感じた。普段から国内にしか目を向けず、海外のメディアから引用されることもない。尖閣列島を巡る日中紛争はガラパゴス化した日本メディアの発信力のなさが鮮明になったとも言える。残念ながらそういう見方を聞くことはないと思うが。

蛇足

これからの議論は蛇足で終ることを祈る。仮にこの後も事態は中々収束せず中国に進出した企業や日本人に危害が及んだり、尖閣列島周辺での事故が起こりその対応が新たな摩擦を生んだり、米国が中立的立場を続けたとすれば、今は冷静な日本の世論が右傾化する可能性を心配する。中国の次の首脳の出方も全く予想がつかない。

現在は中国内の出来事だが自国に及ぶ恐れを感じると、或いはマスコミ等でそんな風に煽られると、自国の防衛は他国には頼れないとして日本の防衛力強化→再軍備論→核武装というように世論が徐々に高まる可能性があると推測する。「日米同盟が機能しなければ」ある意味当然なのだが、何をもって機能しないのかその定義は曖昧だ。定義はその時流れる風次第で一気に変るかもしれない。そんな日が来ないことを祈りたい。■

コメント (2)
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