かぶれの世界(新)

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危機をチャンスに変える力

2012-09-01 18:28:25 | 社会・経済

いつも悲観的なことばかり書いているので、たまには明るい話題を紹介したい。世界的に見て日本は悲観すべきことばかりではない。マスコミはケチをつけるのが仕事だと思っているが、日本には世界に誇る力がいくつもある。それも日本特異なニッチな領域ではない。ニュースを地道に拾っていくと、これは凄いというストーリが浮かんで来た。

閣列島を巡って中国と領土紛争が勃発した一昨年、事実上の報復措置として中国はレアアース輸出を大幅に制限した。ハイブリッド自動車からデジタル家電まで日本のお家芸であるハイテック機器にレアアースが使われており、輸出制限がこのまま続けば由々しき事態になると心配した。

だが、ここにきてその最大の危機は脱し、寧ろ我国の強みに転化しそうな事態になったようだ。今年の6月に「捨てたもんじゃない日本」(http://blog.goo.ne.jp/ikedaathome/d/20120624)と題し、テーマの一つとして日本の先端技術企業が着々と脱レアアース技術を開発していると投稿した。

その根拠として70年代の石油ショックに迅速に対応した日本が、一致して取り組んだ結果として競争力を高めた事例を紹介した。そこでは危機をチャンスに変えるDNAが日本にはまだ残っている、中国のレアアース輸出規制は日本が競争力を高めるチャンスになると予測した。

事態はまさにそのように進んでいる。その前に報道された情報から世界のレアアース市場をざっと俯瞰する。世界のレアアースの98%が中国で生産され、そのうち48%を日本が輸入している。2010年の輸出制限後その価格が高騰し、昨年7月には10倍以上になった。

大雑把に分類するとそのうちの1/3がハードディスクドライブ(HDD)に使用され、残りがジスプロシウムを使って高温でも性能が落ちない磁石を必要とする自動車やエアコンなど家電製品に使われている。我々の身の回りにある商品の多くがレアアースを使い、輸出にも貢献している。尖閣列島の領土争いよりも日本の基幹産業の行方の方を私は懸念した。だが、心配は杞憂だった。

中国がレアアース輸出枠を3年ぶりに前年比2.7%増やしたと、日本経済新聞(8/22)は報じた。不当な輸出規制との国際批判をかわす狙いもあるが、世界的に需要が減少して価格が大幅低下、特に大口需要家の日本のレアアース輸入が5割を下回った結果でもあると報じている。

更に、同紙(8/29)は昭和電工が中国でのレアアース合金の生産を休止したと報じた。デジタル機器などの国内販売低迷で、当面は国内工場で必要量を賄えると判断したからだという。中国以外からのレアアース調達拡大と代替品開発の動きが広がり、生産調整が長期化する可能性もあるという。

アアースの輸出規制がかかった時、前々から中国に全てを頼ること危惧していたので「やっぱり」と思わずにはいられなかった。だが一方でオイルショックの経験を思い出し、まだ頑張れる力が残っているか試されていると感じた。最近の日本を代表する先端企業の苦戦振りを考えると、心配もあったので正直ホッとしたのも事実だが。

報道によれば、突然の輸出規制に対してかなりの備蓄量があって時間稼ぎをし、その間に政府と連携して中国以外の国からの調達を精力的に進め、企業は従来から代替技術の開発を進めていたというタネを早期実用に結びつけたという。「決められないXX」どころか「前のめりのXX」だった。

要するに政府と企業の連携と迅速な対応が危機に対応して実を結んだということだ。結果として、中国は独占できたはずの極めて重要な資源の値打ちを自ら下げ、しかも中国に全てを頼ると何が起こるかわからないと世界に知らしめた。欧州向けのガスを止めたロシアみたいに。

一方、日本が開発した代替技術は世界市場で圧倒的な競争力を持つはずだ。例えば韓国の世界的な先端企業といえども、日本の代替技術を使った部品を使い続ける構造から益々抜け出せないだろう。他に選択がないのだから。

中国の輸出規制を聞いた時、「なめたらあかんぜよ」と昔の映画の有名な台詞が浮かんだ。普段は批判されることの多い政官業が一体となって取り組んだ「レアアース戦争」は、日本の底力と賞賛されて良い。だが、敢えて世界に誇る必要はない。激情に駆られることなく粛々とやることをやる日本の怖さを、そっと世界に知らしめただけで十分だ。なめたらあかんぜよ!■

コメント
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