さすらい人の独り言

山登り、日々の独り言。
「新潟からの山旅」別館
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さすらいの風景 敦煌 その1

2010年06月22日 | 海外旅行
敦煌に到着して昼食をとった後、さっそく陽関に向かいました。

陽関は、古代の関所跡で、漢代には玉門関と陽関が、西の境界になっていました。

敦煌市から西南に約70Kmの位置にあります。バスが近付くと、丘の上にあるのろし台跡が、遠くからでも見えてきました。

史跡入り口には、立派な門が再建されていました。



城壁の回りには、攻城兵器が並べられおり、歴史ファンとしては興味深く見ることができました。



施設内に入ると、銅像がお出迎え。張騫の像です。



張騫(ちょうけん)は、漢の時代の外交官です。

匈奴の侵略に悩まされていた漢の武帝は、大月氏は、その王が匈奴と争って殺され、王の頭蓋骨が酒の盃にされたため、匈奴を恨んでいるといううわさを聞きます。大月氏と同盟を結んで、匈奴を討つべく、張騫を筆頭にした100人ばかりの使節団を送りだします。

使節団は、匈奴に捕えらて拘留されます。妻も与えられて子供も生まれますが、十余年後に脱走して大月氏に向かいます。

大月氏にようやくたどり着いたものの、大月氏は、豊かな地に根を下ろして現状に満足し、匈奴に対する恨みは忘れており、同盟は失敗におわります。

帰国の際にも匈奴に囚われますが、王位継承の内紛に乗じて脱出します。十三年の時を経て帰国した際には、張騫に従う者は二人になっていたといいます。

大月氏との同盟は失敗に終わったものの、張騫の得た西域の情報によって、漢の西域支配が進むことになりました。

張騫は、西域物語の登場人物の中でも、ひと際輝いています。



裏門に抜けていきます。



門を出ると、丸太で囲った駐屯地が広がっています。



丘の上には、漢代の狼煙台を見ることができます。



王維の像も置かれていましたが、その詩については後ほど。



丘の上までは、標高差も距離もあるなと思ったら、電気自動車が運んでくれました。



砂漠の斜面を登っていきます。



一気に、狼煙台も近付いてきました。





丘の上で電気自動車を下ります。

狼煙台の周囲は、保護のために、立ち入り禁止になっていました。



丘の縁にはあずま屋が置かれていました。



そこからは、広大な砂漠の風景が広がっていました。



傍らの砂山には、中国風のあずま屋が置かれていました。



陽関の名前は、王維の漢詩を通して良く知られています。

渭城朝雨裛輕塵  渭城の朝雨 軽塵を裛し
客舍青青柳色新  客舎 青青 柳色新たなり
勸君更盡一杯酒  君に勧む 更に尽くせ一杯の酒
西出陽關無故人  西のかた 陽関を出づれば故人無からん

異なる書体で詩が石に刻まれていました。



また、漢の前線基地であったことから、王翰(おうかん)の涼州詞も浮かんできます。

葡萄美酒夜光杯  葡萄の美酒 夜光の杯
欲飲琵琶馬上催  飲まんと欲すれば 琵琶馬上に催よおす
醉臥沙場君莫笑  酔うて沙場に臥す 君笑うこと莫かれ
古來征戰幾人囘  古来征戦 幾人か回る



さて、この「葡萄美酒」ですが、葡萄をつまみに酒を飲むという解釈もあるようですが、ワインと考えた方がやはりすっきりするようです。

トルファンをはじめ、葡萄栽培が盛んですので、ワインも造られています。レストランでも、ワインを注文することができました。代表的なものは、楼蘭ワインのようです。

この赤は、ライトボディーのフルティーという感じで、中華料理にもあいました。



白の方は、すっぱく葡萄ジュースといった感じで、あまり美味しくはありませんでした。

ただ、レストランで出されているものなので、酒屋で銘柄を選んで買えば、味も変わるものと思われます。



お土産に買ってきた夜光杯です。

夜光杯とは、祁連山脈より産出される玉を研磨加工して作る杯です。鉄分が含まれていることから磁石にくっつきます。

薄く削られて、光を通す物が良いとされています。

漢詩の解釈では、白玉とかガラスの杯という説明がされていますが、この緑色の夜光杯を、詩に重ね合わせることにしましょう。

涼州詞の世界を体験できましたが、「醉臥沙場」を実際に行えなかったのは残念です。



電気自動車で丘を下る途中から見る、再建された陽関です。どうも中国では、遺跡の入場料をかせぐために、一帯を観光施設に変える動きが盛んなようです。きれいなトイレが設けられていることはありがたいです。
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