(1)官僚の定義
(a)明確な定義はない。
(b)狭義には、国家公務員採用試験Ⅰ種合格者で、霞が関用語でいうキャリア(官僚)だ。省庁の課長以上の国家公務員は、「高級官僚」と呼ばれる。
(c)広義には、国家公務員(特別職及び一般職)100万人。ちなみに、地方公務員は300万人だ。
(2)出世争い
(a)キャリア15,000人の圧倒的多数は東大卒。キャリアは、出世コースのゴール、事務次官をめざして競争する。同期入省のほぼ全員が本省課長クラスまで横並びで出世するが、その後出世レースは激しさを増し、出世できない者から脱落していく。事務次官になれなかったキャリアは、退職時の地位に応じた地位・待遇のポストに再就職する。これが「天下り」だ。
(b)Ⅱ種およびⅢ種合格者はノンキャリアと呼ばれる。キャリアおよびノンキャリアは、俗称で、この「制度」も霞が関の慣例にすぎない。ノンキャリアの出世は課長補佐までだが、キャリア制度批判を受けて、人事院は1999年に指針を作成。各省庁にノンキャリアからの幹部への抜擢を促した。その結果、2005年にはノンキャリアから150人以上が課長級以上に昇進した。
(c)また、国家公務員制度改革基本法(2008年成立)により、2012年度から国家公務員採用試験Ⅰ種は「総合職」、Ⅱ種およびⅢ種は一般職に再編された。
(3)官僚の仕事
(a)官僚の主な仕事は、予算案と法律案の作成だ。
(b)政治家のサポートも欠かせない仕事だ。国会期間中は、大臣の「答弁書」作りに追われる。「質問主意書」への回答作りも官僚の仕事だ。
(4)官僚の行動原理
(a)建前はともかく、いかに予算を分捕り、OBを含めた自分の省庁の利益を確保するかが唯一の行動原理だ。
(b)予算をつけることに成功したら、OBが天下った外郭団体に発注する。最近は随意契約に対する批判が強いので競争入札にするが、入札参加には「同種の事業を○年行っていること」などの条件をつけ、OBのいる団体が無事入札できるようにする。・・・・現役はOBを支え、OBはいずれ現役に「天下りポスト」を譲る、という「省益=自分の利益」という構図だ。この「霞が関」の掟にそむき、所属官庁の利益を損ねてでも「国益のために」働くと、守旧派に「改革派官僚」のレッテルを貼られて、霞が関から追放される。
(c)現役官僚は、できるだけ多くの予算を勝ち取り、OBのいる外郭団体に利益をもたらせば、退職後の面倒を見てもらえる(霞が関ムラの論理)。先輩の仕事を受け継ぎ、後輩に「ソツなく」引き継げば、減点されることはない。しかし、「省益第一」の先輩の仕事を否定し、国益のために働けば「外れたことをした」と見なされて、その時点で出世街道から外れる。
(d)東大法学部卒のエリートなのに、出世レースに敗れて事務次官になれなければ、40代後半から50代で退職だ。失業後、再就職先が見つかるか。その不安と「天下りの旨み」のどちらをとるか。答は明らかだ。霞が関に自浄作用を求めるべくもない。
(5)天下り
(a)天下りは、神道では、神が天界から地上に下ることを意味した。今では、退職した高級官僚が出身官庁の所管する外郭団体や関連する独立行政法人などに再就職することの意味で使っている。
(b)天下りした官僚OBは、数年ごとに団体等を渡り歩き、そのつど高額の退職金を手にする【注】。
(c)天下りが霞が関で慣例化した理由は、キャリア官僚による「早期退職慣行」があるからだ。天下りは、省庁の人事システムに組み込まれており、関連法人のポストは所管する官庁の縄張りだ。
(d)天下り先のOBが恥をかかぬよう、省庁から関連法人等には事業が回される。「必要だから」ではなく、「付き合いがあるから」。
(e)阿部内閣の渡辺喜美・行政改革・規制改革担当大臣は、国家公務員法を改正し、公務員による天下りあっせんを禁止。各省庁のあっせんを禁じる代わりに「官民人材交流センター」を設置し、再就職先のあっせんを一元的に行うことにした。
(f)しかし、これではやりにくい、と官僚側は新たな手を策謀した。官内閣は「退職者管理基本方針」を閣議決定。「現役出向」を拡大させた。民主党の「定年まで勤務できる環境整備」も実現。利益を確保し、相手の顔も立てる。官僚が省益確保のために知恵を絞ったのだ。
(g)年功序列を撤廃し、能力主義を導入するとともに、各省庁の人事を一元管理する改革をしなければ、天下り問題は解決しない。
【注】ある農水省OB(元水産庁長官)は、6団体を渡り歩き、少なくとも3億2,000万円の所得を得た。あるいは、「【消費税】増税推進する財務官僚の高給・天下り・脱税 ~大武健一郎~」「【消費税】財務官僚の華麗なる天下り ~生涯で8~10億円の稼ぎ~」参照。
以上、高橋洋一『国民が知らない霞が関の不都合な真実 ~全省庁暴露読本~』(双葉社、2012)に拠る。
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(a)明確な定義はない。
(b)狭義には、国家公務員採用試験Ⅰ種合格者で、霞が関用語でいうキャリア(官僚)だ。省庁の課長以上の国家公務員は、「高級官僚」と呼ばれる。
(c)広義には、国家公務員(特別職及び一般職)100万人。ちなみに、地方公務員は300万人だ。
(2)出世争い
(a)キャリア15,000人の圧倒的多数は東大卒。キャリアは、出世コースのゴール、事務次官をめざして競争する。同期入省のほぼ全員が本省課長クラスまで横並びで出世するが、その後出世レースは激しさを増し、出世できない者から脱落していく。事務次官になれなかったキャリアは、退職時の地位に応じた地位・待遇のポストに再就職する。これが「天下り」だ。
(b)Ⅱ種およびⅢ種合格者はノンキャリアと呼ばれる。キャリアおよびノンキャリアは、俗称で、この「制度」も霞が関の慣例にすぎない。ノンキャリアの出世は課長補佐までだが、キャリア制度批判を受けて、人事院は1999年に指針を作成。各省庁にノンキャリアからの幹部への抜擢を促した。その結果、2005年にはノンキャリアから150人以上が課長級以上に昇進した。
(c)また、国家公務員制度改革基本法(2008年成立)により、2012年度から国家公務員採用試験Ⅰ種は「総合職」、Ⅱ種およびⅢ種は一般職に再編された。
(3)官僚の仕事
(a)官僚の主な仕事は、予算案と法律案の作成だ。
(b)政治家のサポートも欠かせない仕事だ。国会期間中は、大臣の「答弁書」作りに追われる。「質問主意書」への回答作りも官僚の仕事だ。
(4)官僚の行動原理
(a)建前はともかく、いかに予算を分捕り、OBを含めた自分の省庁の利益を確保するかが唯一の行動原理だ。
(b)予算をつけることに成功したら、OBが天下った外郭団体に発注する。最近は随意契約に対する批判が強いので競争入札にするが、入札参加には「同種の事業を○年行っていること」などの条件をつけ、OBのいる団体が無事入札できるようにする。・・・・現役はOBを支え、OBはいずれ現役に「天下りポスト」を譲る、という「省益=自分の利益」という構図だ。この「霞が関」の掟にそむき、所属官庁の利益を損ねてでも「国益のために」働くと、守旧派に「改革派官僚」のレッテルを貼られて、霞が関から追放される。
(c)現役官僚は、できるだけ多くの予算を勝ち取り、OBのいる外郭団体に利益をもたらせば、退職後の面倒を見てもらえる(霞が関ムラの論理)。先輩の仕事を受け継ぎ、後輩に「ソツなく」引き継げば、減点されることはない。しかし、「省益第一」の先輩の仕事を否定し、国益のために働けば「外れたことをした」と見なされて、その時点で出世街道から外れる。
(d)東大法学部卒のエリートなのに、出世レースに敗れて事務次官になれなければ、40代後半から50代で退職だ。失業後、再就職先が見つかるか。その不安と「天下りの旨み」のどちらをとるか。答は明らかだ。霞が関に自浄作用を求めるべくもない。
(5)天下り
(a)天下りは、神道では、神が天界から地上に下ることを意味した。今では、退職した高級官僚が出身官庁の所管する外郭団体や関連する独立行政法人などに再就職することの意味で使っている。
(b)天下りした官僚OBは、数年ごとに団体等を渡り歩き、そのつど高額の退職金を手にする【注】。
(c)天下りが霞が関で慣例化した理由は、キャリア官僚による「早期退職慣行」があるからだ。天下りは、省庁の人事システムに組み込まれており、関連法人のポストは所管する官庁の縄張りだ。
(d)天下り先のOBが恥をかかぬよう、省庁から関連法人等には事業が回される。「必要だから」ではなく、「付き合いがあるから」。
(e)阿部内閣の渡辺喜美・行政改革・規制改革担当大臣は、国家公務員法を改正し、公務員による天下りあっせんを禁止。各省庁のあっせんを禁じる代わりに「官民人材交流センター」を設置し、再就職先のあっせんを一元的に行うことにした。
(f)しかし、これではやりにくい、と官僚側は新たな手を策謀した。官内閣は「退職者管理基本方針」を閣議決定。「現役出向」を拡大させた。民主党の「定年まで勤務できる環境整備」も実現。利益を確保し、相手の顔も立てる。官僚が省益確保のために知恵を絞ったのだ。
(g)年功序列を撤廃し、能力主義を導入するとともに、各省庁の人事を一元管理する改革をしなければ、天下り問題は解決しない。
【注】ある農水省OB(元水産庁長官)は、6団体を渡り歩き、少なくとも3億2,000万円の所得を得た。あるいは、「【消費税】増税推進する財務官僚の高給・天下り・脱税 ~大武健一郎~」「【消費税】財務官僚の華麗なる天下り ~生涯で8~10億円の稼ぎ~」参照。
以上、高橋洋一『国民が知らない霞が関の不都合な真実 ~全省庁暴露読本~』(双葉社、2012)に拠る。
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