語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】今、そこにある汚染水危機(1) ~封じ込めは可能か~

2013年09月22日 | 震災・原発事故
 (1)原発汚染水はどこから来るのか。
  (a)冷却水・・・・400トン/日の水を循環させて冷却している。そのうち原子炉建屋から溢れ出た汚染水などを、タンクに移している。ところが、1,000基あるタンクの一部から300トンの汚染水が漏れ出ていた。漏出した汚染水は地下にしみこみ、排水溝などを伝って、すでに海に出てしまった、と目される。漏れが発見されたタンクは1基だけだが、他のタンクからも漏出している危険性は十分にある。ちなみに、東電はタンクのパトロールをしているが、配管(汚染水をタンクに移送)はチェックしていない。配管はポリエチレン製で、熱によって伸縮するから水漏れがよく起こる。それを保護するために養生シートを巻き、さらに保温材を巻くため、目視では状況が確認できない。だが、実際には配管のいろんな箇所が壊れている。配管の一部は、2,000μSv/時超の線量を示す。人が1時間浴びると、2週間以内に死亡する線量だ。
  (b)地下水・・・・原発構内に阿武隈山地から1,000トン/日の水が流入する。うち、400トン/日の地下水が原子炉建屋に流れ込んでいる。残り600トン/日が海へ出ていくが、そのうち300トン/日は敷地内で汚染されている。
  (c)雨・・・・年間400万~500万トンの雨が降り注ぐ。これが地下水となって、川や海に流れ込む。ただし、大量に降雨があっても、あるいはいくらタンクに移送しても、汚染水は増えも減りもしない。建屋内の汚染水が地下水とつながり、海へ流れ出ているからだ。 

 (2)タンク自体が危険要因だ、という指摘もある。津波の名残が建屋から溢れ出し、その汚染水をタンクに移送するなどして、海水を含むことになったタンクが多数ある。タンクは、塩分を含む環境下では、年間最大1.5mmのスピードでタンクの腐食が進む。
 タンクの蓋のスティールは6mmで、壁面はたった12mmしかない。ボルトがある継ぎ目はさらに腐食のスピードが早い。
 要するに、放射性物質と海水が混じった汚染水はタンクを内側から腐らせるのだ。
 事実、汚染水が漏れだしたタンクは、メーカーによれば5年保証なのだが、すでにサビだらけ。配管部分のパッキンは腐食し、ボルトは緩んでいる。

 (3)地中から、あるいは原発から、隣接する湾内に流れ込んだ汚染水は、水中カーテン(「シルトフェンス」)に囲まれた0.3粁米の囲いの中に収まっている、とされる。放射性物質の濃度が高いのが、この範囲だからだ。安部首相のいわゆる「湾内でブロックされている」発言の根拠だ。
 事実はしかし、福島原発に隣接する湾内にある海水の半分が、毎日外洋に流出している。
 汚染水は、太平洋全体に拡がる一方、「海のホットスポット」を作り出している。フクイチの20km圏内の海底に、セシウム137の濃度が局地的に高い場所(「アノマリー」)が見つかっている。アノマリーの場所は、沿岸からの距離によって決まるのではなく、海底の地形と土質によって決まる。窪地や、海底土の粒子が細かいところだ。
 「海のホットスポット」に棲息する魚介類が高濃度で汚染されているのは確実だ。

 (4)現在、建屋内に溜まっている汚染水は5万トン。
 これとは別に、海に向けて原発の下をゆっくり移動している汚染地下水が20万トン以上ある。
 今後、さらに高濃度の汚染水が、太平洋に流れ出るリスクを日本は抱えている。

 (4)政府は、タンクを密閉性が高い溶接式に切り替え、故障中の「ALPS」を早急に再稼働させようとしている。しかし、効果は疑問だ。
  (a)地上タンクから漏れたとされる300トンの汚染水には、8,000万Bqのベータ線放出核種がある。その正体はストロンチウム90だ(推定)。規制値以下の濃度に制御するには、30Bqつまり100万分の1以下にしなくてはならない。それを汚染の激しい現場で達成するのは非常に困難だ。
  (b)そして、トリチウムは除去する方法がない。
  (c)ちなみに、セシウム137は、揮発性が高く、事故直後から大量に大気中に放出され、東北地方から関東地方にかけて土地を猛烈に汚染した。
 ともかく原子炉建屋に流入する地下水を止めようと、政府は凍土壁を作るプランをぶち上げた。長さ1.5km、幅500m以上。前例がない。
 しかし、内容は実に心もとない。一気に凍るため、短期間での運用には適している、とされる凍土壁だが、維持には莫大な電力が必要だ。廃炉までの30~40年間、使い続けるのは、技術的にも経済的にも現実的でない。
 しかも、凍土壁が完成するのは2年も先。それが機能する保証もない。

 (5)恐るべきシナリオもある。タンクの周囲から17万Bqという超高濃度汚染水が検出されている。これは明らかにおかしい。タンク内の汚染水の濃度が急上昇するはずがない。
 事故後の水素爆発で飛び散った燃料棒の一部が土中にあり、地下水を汚染している可能性があるのだ。これは、土中に原子炉があるようなものだ。

 (6)東電が、海への汚染水流入を止めようとして水ガラスで遮水壁を作った影響で、原発の敷地全体の地下水位が上がり、地上のタンクの設置場所が50cmも浮き上がった。
 地下水を汲み上げれば地盤沈下が起こり、せき止めれば地盤が上がる。フクイチは非常に危ういバランスの上に成り立っている。

□記事「徹底解明「原発汚染水」 これが真相だ ~あなたと家族の生命がかかっている~」(「週刊現代」2013年10月5日号)

 【参考】
【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~
【原発】廃炉費用を電気料金に上乗せ ~制度を変えた経産官僚は出世~
【原発】ウソだらけの汚染水「緊急」対策 ~安部首相の抽象論~
【原発】国の汚染水対策3つ ~「汚染水は海に流せ」?~
【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~
【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~
【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~
【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~
【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~
【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~
【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~
【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出
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