(1)汚染水は海洋で薄まっても、放射性物質が無くなるわけではない。
拡散した放射性物質も、生物が集めて濃縮されていく。「生物濃縮」される。
魚介類の放射性物質による汚染について、これまで放射性セシウムが注目されてきた。しかし、問題なのは放射性ストロンチウムだ。セシウムは軽いので、建屋の爆発とともに舞い上がり、風にのって遠くまで運ばれた。一方、ストロンチウムは重いので、汚染水となって海に出て、海底にジワジワと広がっていく。
魚介類などに含まれるストロンチウムは、測定が非常に難しい。急いでも15日くらい、下手をすると1ヵ月間くらい要する。魚は鮮度のよいうちに食べたいというニーズがあるから、流通前の検査項目には入っていない。
(2)タンクから流出している汚染水には、このストロンチウムが大量に含まれている。東電が稼働させている放射性物質除去装置の「サリー」(東芝製)は、セシウムしか除去できないからだ。
事実、問題のタンク周辺を通り、外洋に直接つながる排水溝で採取された水からは、高濃度のストロンチウムが検出され続けている。
9月11日には、前日までの10倍超の220Bq/リットルのストロンチウムが検出された。
海が汚染されているのは確実だ。しかるに、この排水溝にはいまだに常時モニタリングする体制すら構築されていない。
(3)放射性ストロンチウムがこのままダダ漏れし続けたらどうなるか。
セシウムは粘土質などに強固に吸着されるので、川底や海底に溜まり、水から除くのは容易だが、ストロンチウムは広がりやすく、汚染はより深刻なものとなる。
幅広い種類の魚を汚染し、さらに生物濃縮で大きな魚になるほど多く蓄積してしまう可能性が高い。しかも、ストロンチウムは計測がセシウムよりずっと困難だ。
さらに、成人の場合、体内に入ったセシウムが代謝・排出によって半分になる期間が100日間であるのに対し、ストロンチウムはカルシウムに似ているため骨や歯に取り込まれてしまい、体内で半減するのに18年間を要する。長い間骨の中にとどまって、血液を作る骨髄に放射線で傷をつける。そのため白血病や骨癌の原因になる。
チェルノブイリ周辺の子どもたちも、歯に放射性ストロンチウムが取り込まれていた。
ストロンチウムを避ける調理法はない。せいぜい、骨を避けること、丸ごと食べる小魚などを極力避けることくらいだ。
(4)セシウムやストロンチウムより厄介なのは、トリチウム(三重水素)だ。水の分子を構成している水素原子の中まで、科学的性質は水素とまったく同じだ。酸素と結合して水を作る。水から水を分離できないから、トリチウムを除去することは、とても困難だ。
汚染水漏れを起こしたタンク周辺では、すでにこのトリチウムが地下水に到達し、観測井戸の水から15万Bq/リットル超の高濃度で検出されている。
半減期12年のトリチウムが放出する放射線エネルギーは、セシウムやストロンチウムのそれより危険性は低い。しかし、人体の60%は水分で、DNAにも水素原子が含まれているから、そこへトリチウムが入ると、やがてDNAの構造に異常が生じる。トリチウムの危険性は、それが放出する放射能によるものだけではない。
(5)放射性物質を蓄積しやすい魚は、アイナメ・カレイ・ヒラメなど海底に棲む底生魚だ。スズキやメバルなど沿岸部の狭い範囲で一生を過ごす魚にも汚染が続く。国の基準値100Bq/kgを大幅に超える魚もある。
スーパーなどで、関西圏の産地などが明示されている魚介類がある一方、「太平洋産」という表示のものがある。これは本来、沖合で獲れた魚につける表示なのだが、汚染された海域に近い場所で獲れたものが紛れ込んでしまう可能性がある。
また、カマボコやツミレなど加工食品に入るものや、外食産業で「白身魚」などと括られてしまうものは、産地が不明だ。当分、要注意だ。
□記事「徹底解明「原発汚染水」 これが真相だ ~あなたと家族の生命がかかっている~」(「週刊現代」2013年10月5日号)
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【参考】
「【原発】今、そこにある汚染水危機(1) ~封じ込めは可能か~」
「【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~」
「【原発】廃炉費用を電気料金に上乗せ ~制度を変えた経産官僚は出世~」
「【原発】ウソだらけの汚染水「緊急」対策 ~安部首相の抽象論~」
「【原発】国の汚染水対策3つ ~「汚染水は海に流せ」?~」
「【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~」
「【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~」
「【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~」
「【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~」
「【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~」
「【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~」
「【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~」
「【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~」
「【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~」
「【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出」
拡散した放射性物質も、生物が集めて濃縮されていく。「生物濃縮」される。
魚介類の放射性物質による汚染について、これまで放射性セシウムが注目されてきた。しかし、問題なのは放射性ストロンチウムだ。セシウムは軽いので、建屋の爆発とともに舞い上がり、風にのって遠くまで運ばれた。一方、ストロンチウムは重いので、汚染水となって海に出て、海底にジワジワと広がっていく。
魚介類などに含まれるストロンチウムは、測定が非常に難しい。急いでも15日くらい、下手をすると1ヵ月間くらい要する。魚は鮮度のよいうちに食べたいというニーズがあるから、流通前の検査項目には入っていない。
(2)タンクから流出している汚染水には、このストロンチウムが大量に含まれている。東電が稼働させている放射性物質除去装置の「サリー」(東芝製)は、セシウムしか除去できないからだ。
事実、問題のタンク周辺を通り、外洋に直接つながる排水溝で採取された水からは、高濃度のストロンチウムが検出され続けている。
9月11日には、前日までの10倍超の220Bq/リットルのストロンチウムが検出された。
海が汚染されているのは確実だ。しかるに、この排水溝にはいまだに常時モニタリングする体制すら構築されていない。
(3)放射性ストロンチウムがこのままダダ漏れし続けたらどうなるか。
セシウムは粘土質などに強固に吸着されるので、川底や海底に溜まり、水から除くのは容易だが、ストロンチウムは広がりやすく、汚染はより深刻なものとなる。
幅広い種類の魚を汚染し、さらに生物濃縮で大きな魚になるほど多く蓄積してしまう可能性が高い。しかも、ストロンチウムは計測がセシウムよりずっと困難だ。
さらに、成人の場合、体内に入ったセシウムが代謝・排出によって半分になる期間が100日間であるのに対し、ストロンチウムはカルシウムに似ているため骨や歯に取り込まれてしまい、体内で半減するのに18年間を要する。長い間骨の中にとどまって、血液を作る骨髄に放射線で傷をつける。そのため白血病や骨癌の原因になる。
チェルノブイリ周辺の子どもたちも、歯に放射性ストロンチウムが取り込まれていた。
ストロンチウムを避ける調理法はない。せいぜい、骨を避けること、丸ごと食べる小魚などを極力避けることくらいだ。
(4)セシウムやストロンチウムより厄介なのは、トリチウム(三重水素)だ。水の分子を構成している水素原子の中まで、科学的性質は水素とまったく同じだ。酸素と結合して水を作る。水から水を分離できないから、トリチウムを除去することは、とても困難だ。
汚染水漏れを起こしたタンク周辺では、すでにこのトリチウムが地下水に到達し、観測井戸の水から15万Bq/リットル超の高濃度で検出されている。
半減期12年のトリチウムが放出する放射線エネルギーは、セシウムやストロンチウムのそれより危険性は低い。しかし、人体の60%は水分で、DNAにも水素原子が含まれているから、そこへトリチウムが入ると、やがてDNAの構造に異常が生じる。トリチウムの危険性は、それが放出する放射能によるものだけではない。
(5)放射性物質を蓄積しやすい魚は、アイナメ・カレイ・ヒラメなど海底に棲む底生魚だ。スズキやメバルなど沿岸部の狭い範囲で一生を過ごす魚にも汚染が続く。国の基準値100Bq/kgを大幅に超える魚もある。
スーパーなどで、関西圏の産地などが明示されている魚介類がある一方、「太平洋産」という表示のものがある。これは本来、沖合で獲れた魚につける表示なのだが、汚染された海域に近い場所で獲れたものが紛れ込んでしまう可能性がある。
また、カマボコやツミレなど加工食品に入るものや、外食産業で「白身魚」などと括られてしまうものは、産地が不明だ。当分、要注意だ。
□記事「徹底解明「原発汚染水」 これが真相だ ~あなたと家族の生命がかかっている~」(「週刊現代」2013年10月5日号)
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【参考】
「【原発】今、そこにある汚染水危機(1) ~封じ込めは可能か~」
「【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~」
「【原発】廃炉費用を電気料金に上乗せ ~制度を変えた経産官僚は出世~」
「【原発】ウソだらけの汚染水「緊急」対策 ~安部首相の抽象論~」
「【原発】国の汚染水対策3つ ~「汚染水は海に流せ」?~」
「【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~」
「【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~」
「【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~」
「【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~」
「【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~」
「【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~」
「【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~」
「【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~」
「【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~」
「【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出」