(1)驚くべし。田中俊一・原子力規制委員会委員長は、9月2日の記者会見で発言した。「海に放水することは避けられない」と。
(2)汚染水問題の経緯・・・・8月19日、4号機の山側にあるH4エリアのタンクから、高濃度の300トンの汚染水が漏れていることがわかった。
いま、汚染水を貯留するためのタンクは千基あるが、実はそのうち約350基がフランジ型タンク。鋼板をボルトで締め合わせただけの簡易型で、溶接タンクに比べて安価、かつスピーディに組み立てられる。ただし、フランジ型は溶接されていない継ぎ目にゴムパッキンが挟まれている構造だ。急場しのぎに導入され、その後も導入され続けてきたが、当初から水漏れが懸念されていた。
はたして、8月19日以降も、H3エリアやH5エリアなどの別の場所の、同型タンクからも水漏れが相次いで見つかった。
フクイチには、地下水が1,000トン/日も流入し、うち400トンが放射線量の高い原子炉建屋やタービン建屋に流入するから、400トン/日の汚染水が生成される。よって、1,000トン入るタンク1基は、2日半で満杯になる。いまタンクの総容量39万トンの85%がすでに使われている。東電は2016年までに80万トン分タンクを増設する計画だが、いたちごっこ。水漏れのリスクは増え続けるし、ほんのわずかなトラブルでタンクの増設が追いつかなければ破綻する。
(3)かかる「無間地獄」に対する対策案は、今のところ3つ。
(a)地下水遮断・・・・建屋周りに凍土壁を作る。ただし、国の全額負担で今年度開始しても、完成まで1年はかかるし、効果のほどは未知数だ。
(b)地下水バイパス・・・・山側から流れ込む地下水を、建屋に入って汚染される前に汲み上げて海に放出する。汚染水を100~150トン/日減らすことができる。
(c)「ALPS」の早期稼働・・・・米エナージー・ソリューション社の設計をもとに東芝が製作した「多核種除去設備」。同じ東芝の「サリー」はセシウムに特化したものだが、ALPSは62の核種を除去する。いまフクイチにはA、B、Cの3系統のALPSが導入されている(総額数百億円)。これがきちんと稼働すれば(いま複数箇所に水漏れが発見されて点検中)、500トン/日の汚染水を処理できる。そして、更なるALPSの導入が、9月に決定した。・・・・ただし、ALPSでは除去できない核種が1つだけある。トリチウムだ。(1)の「海に放水」とは、トリチウム水の海洋放出を想定している。
(4)トリチウム水の海洋放出に係る疑問はさておき、(3)の3つの対策案が実行された場合、汚染水問題の収束にメドがつくかもしれない。
が、この机上の計画に対して、現場から疑問が出ている。ことに(3)-(c)について。
ALPSが東電の計画どおり9月中に使用できるようになったとしても、順調に使い続けられるかどうかは不明だ。また水漏れが生じたら、すぐにストトップしてしまう。【東電担当記者】
(3)-(a)、(b)には何とか実現させるようにしたい。が、(3)-(c)については、処理した水がどんな状態になるか、まだわからない。海洋放出は、本来、陸上保管がどうしてもできなくなった時に言うべきことのはず。まだ陸上にタンクを置くことができるし、海洋放出には反対だ。【野崎哲・福島県漁業協同組合連合会会長】
(5)3つの対策案を実施するのは、常に放射線被曝のリスクにさらされている現場の人間だ。彼らは苛酷な環境を強いられている。<例>フクイチでは、免震重要棟の1室に二段ベッドを並べ、常時50~60人が寝泊まりし、作業にあたっている。
解決には長い年月がかかる。現場のモチベーションを保ち、持続できる体制を作るべきだ。 若く優秀な人材を集めるためにも、作業ミスを減らすためにも、ある程度快適な労働環境が必要だ。兵站軽視という日本の悪しき電灯を早く止めなければならない。【澤昭裕・NPO法人「国際環境経済研究所」所長】
□記事「「汚染水は海に流せ」は暴論か?」(「週刊文春」2013年9月12日号)
【参考】
「【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~」
「【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~」
「【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~」
「【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~」
「【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~」
「【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~」
「【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~」
「【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~」
「【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~」
「【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出」
↓クリック、プリーズ。↓
(2)汚染水問題の経緯・・・・8月19日、4号機の山側にあるH4エリアのタンクから、高濃度の300トンの汚染水が漏れていることがわかった。
いま、汚染水を貯留するためのタンクは千基あるが、実はそのうち約350基がフランジ型タンク。鋼板をボルトで締め合わせただけの簡易型で、溶接タンクに比べて安価、かつスピーディに組み立てられる。ただし、フランジ型は溶接されていない継ぎ目にゴムパッキンが挟まれている構造だ。急場しのぎに導入され、その後も導入され続けてきたが、当初から水漏れが懸念されていた。
はたして、8月19日以降も、H3エリアやH5エリアなどの別の場所の、同型タンクからも水漏れが相次いで見つかった。
フクイチには、地下水が1,000トン/日も流入し、うち400トンが放射線量の高い原子炉建屋やタービン建屋に流入するから、400トン/日の汚染水が生成される。よって、1,000トン入るタンク1基は、2日半で満杯になる。いまタンクの総容量39万トンの85%がすでに使われている。東電は2016年までに80万トン分タンクを増設する計画だが、いたちごっこ。水漏れのリスクは増え続けるし、ほんのわずかなトラブルでタンクの増設が追いつかなければ破綻する。
(3)かかる「無間地獄」に対する対策案は、今のところ3つ。
(a)地下水遮断・・・・建屋周りに凍土壁を作る。ただし、国の全額負担で今年度開始しても、完成まで1年はかかるし、効果のほどは未知数だ。
(b)地下水バイパス・・・・山側から流れ込む地下水を、建屋に入って汚染される前に汲み上げて海に放出する。汚染水を100~150トン/日減らすことができる。
(c)「ALPS」の早期稼働・・・・米エナージー・ソリューション社の設計をもとに東芝が製作した「多核種除去設備」。同じ東芝の「サリー」はセシウムに特化したものだが、ALPSは62の核種を除去する。いまフクイチにはA、B、Cの3系統のALPSが導入されている(総額数百億円)。これがきちんと稼働すれば(いま複数箇所に水漏れが発見されて点検中)、500トン/日の汚染水を処理できる。そして、更なるALPSの導入が、9月に決定した。・・・・ただし、ALPSでは除去できない核種が1つだけある。トリチウムだ。(1)の「海に放水」とは、トリチウム水の海洋放出を想定している。
(4)トリチウム水の海洋放出に係る疑問はさておき、(3)の3つの対策案が実行された場合、汚染水問題の収束にメドがつくかもしれない。
が、この机上の計画に対して、現場から疑問が出ている。ことに(3)-(c)について。
ALPSが東電の計画どおり9月中に使用できるようになったとしても、順調に使い続けられるかどうかは不明だ。また水漏れが生じたら、すぐにストトップしてしまう。【東電担当記者】
(3)-(a)、(b)には何とか実現させるようにしたい。が、(3)-(c)については、処理した水がどんな状態になるか、まだわからない。海洋放出は、本来、陸上保管がどうしてもできなくなった時に言うべきことのはず。まだ陸上にタンクを置くことができるし、海洋放出には反対だ。【野崎哲・福島県漁業協同組合連合会会長】
(5)3つの対策案を実施するのは、常に放射線被曝のリスクにさらされている現場の人間だ。彼らは苛酷な環境を強いられている。<例>フクイチでは、免震重要棟の1室に二段ベッドを並べ、常時50~60人が寝泊まりし、作業にあたっている。
解決には長い年月がかかる。現場のモチベーションを保ち、持続できる体制を作るべきだ。 若く優秀な人材を集めるためにも、作業ミスを減らすためにも、ある程度快適な労働環境が必要だ。兵站軽視という日本の悪しき電灯を早く止めなければならない。【澤昭裕・NPO法人「国際環境経済研究所」所長】
□記事「「汚染水は海に流せ」は暴論か?」(「週刊文春」2013年9月12日号)
【参考】
「【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~」
「【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~」
「【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~」
「【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~」
「【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~」
「【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~」
「【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~」
「【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~」
「【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~」
「【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出」
↓クリック、プリーズ。↓