語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】今、そこにある汚染水危機(3) ~次の震度6~

2013年09月24日 | 震災・原発事故
 (1)汚染水タンクは、連結部分にプラスチックの素材を使っている。ここが壊れたら、タンクの内容物が流れ出し、太平洋に直接流れ込む。そうなると、影響は今の汚染水漏洩の比ではない。
 地震が、地盤が不均一でデコボコになる不等沈下や隆起を引き起こすと最悪だ。不等沈下で、端と端との沈下量が違うと、タンクが歪みを起こし、接合部に亀裂が入ってしまう可能性がある。
 事前に地盤の調査をしっかり行っておけば、こうした事態を防げる。
 しかし、東電はそれを怠った前科がある。後に300トンもの汚染水漏れを起こすことになったタンクは、貯水試験中に地盤が20cmも沈下したことで基礎にヒビが入り、解体されて別の場所に移設したものの一つだった。このタンクは、地盤沈下の際にパーツに歪みが生じていた可能性がある。
 そもそも、3・11の時にフクイチ周辺の地盤は70cmも沈下した。タンクの重みが沈下を促した可能性もあるが、3・11の地震で地盤が弱くなっていた可能瀬もある。

 (2)さらに、次にフクイチを襲う地震の問題がある。  
 福島で今後、震度6の地震が発生することもあり得る。
 それ以上に懸念されるのが、海溝の反対側で起こる大地震だ。大地震のあとに海溝などのプレート境界で起こる大地震の「双子」のような地震のことだ。インドネシア・スマトラ沖大地震(2004年12月、M9.1)後にも、2012年4月にM8.6の地震が起こった。
 こうした地震は、沖合の海底における巨大地震になるので、地上で感じる揺れがさほど大きくない場合でも、3・11のような大きな津波に襲われる可能性がある。安部首相のいわゆる「フクイチに作られた港の護岸の中にとどまっている汚染水」が、一切合切混ざって海に広がってしまうことになる。
 3・11と同じ高さの津波が襲ってくれば、当時より地盤が70cm沈下しているので、3・11より70cm高い津波が襲ってくることになる。
 タンクは、杭で地面に固定されているわけではない(地盤が不等沈下したとき歪みが起きやすくなるから)。津波の直撃を受けたら、簡単に移動・転倒してしまう。こうして倒壊したタンクは、太平洋の沖合に流されていく。高濃度汚染水が詰まったタンクが太平洋を漂流することになれば、国際社会における日本の信用は地に堕ちる。

 (3)津波の再来に、東電はいかなる対策をとっているか。
 石を金網で包んだ応急対策の防波堤しかない。抜本的な対策は、何ひとつとっていない。

 (4)ふたたび地震が起きた際、汚染水以上に破滅的な事態となるのは、爆発によって建屋が損傷している4号機だ。
 耐震補強と称して支柱を入れたりしているが、そもそも建屋自体がひどく損傷しているので、根本的な対策は難しい。4号機のプールには、大量の使用済み燃料が入っている。地震によってプールが崩落したら、また、水が無くなったら、大変な事態になる。
 燃料プールには、1,553本の燃料集合体がある。うち、1,331体が使用済みで、放射性物質の塊になった集合体だ。広島型原爆で14,000発分の放射性物質(セシウム137換算)が含まれている。
 
 (5)東電は、プール内のガレキを除去して、今年11月に燃料棒の取り出しを始める、としているが、作業は困難を極める。使用済み燃料は発熱しているし、地震による壊れ方次第では、再臨界の可能性もある。それ以上に可能性が高いのは、放射線を遮蔽しているプールの水が地震で漏れてしまって失われ、人が近づけなくなり、収拾作業がほとんど不可能なほど難しくなってしまうことだ。
 4号機は、3・11後1年をかけて、爆発で骨組みがむき出しになっていた5階以上の床の上の部分がようやく撤去された。東電は、その建屋の真横に、巨大な庇のように4号機を覆う建物(「燃料取り出し用カバー」)を建設中だ。これを足がかりに燃料棒の取り出しを進める計画だ。
 だが、燃料棒取り出し作業は慎重この上なく進めなくてはならない。もし、取り出す際に燃料棒が折れたら、そこから放射性クリプトン(肺癌を引き起こす)のガスが出てくる。このガスは、セシウムを吸着するようなフィルターでは除去できない。作業員は避難するしかない。風向きによっては、東京にまで到達するかもしれない。 

□記事「徹底解明「原発汚染水」 これが真相だ ~あなたと家族の生命がかかっている~」(「週刊現代」2013年10月5日号)
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 【参考】
【原発】今、そこにある汚染水危機(2) ~汚染水は海で薄められるか~
【原発】今、そこにある汚染水危機(1) ~封じ込めは可能か~
【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~
【原発】廃炉費用を電気料金に上乗せ ~制度を変えた経産官僚は出世~
【原発】ウソだらけの汚染水「緊急」対策 ~安部首相の抽象論~
【原発】国の汚染水対策3つ ~「汚染水は海に流せ」?~
【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~
【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~
【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~
【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~
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