語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【官僚】キャリア官僚を優遇する自民党「公務員制度改革」

2013年10月26日 | 社会
 (1)10月15日に自民党行政改革推進本部で両省された国家公務員制度改革案骨子は、改革どころか、完全な「反改革」となってしまった。
 この法案は、自民党が麻生政権時代に国会提出した(2009年)法案に似ているが、実はまったくの骨抜きだ。

 (2)そもそも、公務員改革は、何のために行うのか。
 現在、公務員の人事・組織に関して、
  ・人事院・・・・給料や各給ランクごとの定数を決める権限
  ・総務省・・・・組織の機構(局・課)の配置(新設・廃止など)を決める権限
  ・財務省・・・・それらに関する予算を決める権限
をそれぞれ持っている。
 このため、時代の要請に合わせた柔軟な組織・人員の配置替えができない。<典型例>農水省がなお強大な組織を保持。
 <問題点1>人事院(事務局は霞が関官僚)が第三者機関と称してお手盛りで処遇を決めるため、民間よりかなり高い給与が放置されたり、組合の要求がそのまま通ってしまう。
 <問題点2>官僚の人事が各省縦割りで行われるため、官僚の評価が各省庁の権限・予算・天下りポストの拡大にどれだけ貢献したか、という観点で行われ、国民への貢献という観点での評価にならない。・・・・優秀な若手や外部の民間人を幹部に登用しようとしても、官僚が抵抗する。一度幹部になったら、不祥事でも起こさない限り降格にならないので、抜擢しようとしてもポストが空かない。ブログやツイッターで暴言を吐いた官僚でも、停職処分後は、管理職として処遇せざるを得ないのも同じ問題だ。
 <問題点」3>総理や大臣が官僚の利権を奪う改革を実施する場合、官僚のサボタージュに遭う。官邸や大臣の機能が弱く、思うように改革が進められない。・・・・<問題点2>のとおり、真剣に改革に取り組まない幹部をすぐに降格できないこともこの傾向を助長している。

 (3)かかる問題の解決を図ろうとしたのが、2009年の自民党の改正案だった。
  ・人事院、総務省などの人事・組織関係の権限を新たに内閣人事局を作って全面的に移管する。
  ・総理と官房長官が各省の大臣と協力し、官僚に頼らずに人事と組織配置を仕切る。
  ・総理や各省大臣が守旧派官僚に負けないよう国家戦略スタッフ(総理の補佐)を自由に配置できる。
  ・政務スタッフ(大臣の補佐)を内閣が自由に配置できる。
  ・民間人登用のため、幹部の公募を総理が指示できる。

 (4)これらに対して、人事院はむろんのこと、霞が関をあげた反対があった。しかし、連日のバトルの末、ナントカこれを抑え込んだ。
 唯一、できの悪い幹部を降格する規定が不十分だったが、それも2010年の自民・みんな共同案では幹部を任期付きにする、という解消策がシメされていた。

 (5)しかるに、今回の自民党案は、
  ・人事院の権限をさまざまな形で温存して「公務員の守護神」役を維持し、
  ・国家戦略スタッフは事実上見送り、
  ・政務スタッフも大臣補佐官としてたった1人だけ
というような骨抜きとなってしまった。むろん、降格規定は野党時代の案を葬り去った。
 しかも、驚くべし、民間との人事交流と称して、事実上の天下り先の拡大など、官僚の焼け太り策まで盛り込んでいる。

 なぜか、新聞はこの問題を一切報じない。

□古賀茂明「公務員「改革」の欺瞞 ~官々愕々第83回~」(「週刊現代」2013年11月2日号)
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 【参考】
【官僚】その行動原理 ~天下りの構造~
【震災】1人の官僚を切れば5人の失業者を救える ~『日本中枢の崩壊』~
【読書余滴】天下りは年功序列のなれの果て ~『官僚のレトリック』~