わずか23時間の滞在となった今回の
オバマ大統領の日本訪問。
14日に行われた大統領来日演説では
日本を持ち上げ、
自らを『太平洋大統領』と名乗るなど
オバマ氏らしさ満点の内容だった。
しかし、
プラハ演説で示した核兵器廃絶への
オバマ氏の気込みを感じた人たちは
今回、被爆国での演説ということから、
強烈なアピールを期待していたことだろう。
そんな人たちからしてみたら
大きく肩すかしを食らわされた感じだったに違いない。
今回の来日では被爆地には見向きもされず、
訪問は今後も当分は見果てぬ夢となりそうだが、
いつの日か、訪問が実現することとなれば、
それはそれで、果たして
どういう意味を持つことになるというのだろうか?
来日前の記事であるが
11月12日付 Washington Post 電子版から
Hiroshima: The dreaded invitation 広島から:恐ろしげな招待状
Obama declines offer to visit the bombed city on his first trip to East Asia オバマ大統領は初めてとなる東アジアへの外遊では被爆都市訪問の申し入れを辞退
By Blaine Harden日本の学童は広島にある平和資料館を訪れる。オバマ大統領もいつかは訪れるかもしれないが、少なくとも今回の外遊では実現しない。
HIROSHIMA, JAPAN?金曜日のオバマ大統領の日本訪問に際して、やっかいな招待状が彼を待ち受ける。それは、これまで在職中の米国大統領が一度も受け入れてこなかったものであり、今回日本でのオバマ氏の過密スケジュールから調整不能なものである。
しかし、多くの日本人は今年に入りずっとこの招待状について話題にしており、ずっとオープンにされたままである。それは米国の原子爆弾が64年前に広島と長崎で何をしたのかを見に来てほしいというものだ。
オバマ氏―『核兵器のない世界』についての感動的なスピーチを行った人物、そして、思いがけない2009年のノーベル平和賞の受賞者―なら、過去を断ち切って、唯一米国が人間に対して落とした兵器によって壊滅した都市を訪問してくれるのではないかという期待が日本国中に高まった。
「済んだことは仕方がありません」と、広島で生まれ、地元の大学に通っている、Haruna Udo さん(19才)は言う。「謝罪は必要ありません。しかし、もし原爆の仕業をオバマ氏が見ていないのなら、ここに来て見るべきです」
あ
Uneasy relationship 不安定な関係
オバマ氏は大統領として初の東アジア外遊の最初の訪問地となる東京には24時間足らずの滞在となる予定だ。そして、『今回』はこの招待を受けることはできないと述べた。しかし、火曜日に日本で(NHKで)放送されたテレビ・インタビューでは、自分の任期中にいつか、それらの都市を訪問する機会が持てたら光栄に思う、とオバマ氏は述べた。
大統領の広島、長崎訪問の可能性に対する日本の関心の強さは、アジアで米国と最も親密な同盟国・日本と米国の二国間関係における高まりつつある緊張と、一方で揺るぎない強さを表すものである。
オバマ氏は日本では高い評価を受けており、7月に行われた Pew Research Center の調査によれば、国際問題で彼が正しいことを行うと85%の人たちが信じているという。一年前、ジョージ・ブッシュ大統領に対して同様の信頼を持っていた人は世論調査対象者の25%に過ぎなかった。
しかしながら、米国自体はそれほど信用されていない。Pew によって当地で調査された人たちの3分の2以上が、米国の経済的影響力が日本に対して好ましくないと述べており、昨秋の日本の米国向け輸出の突然の急落によってこの輸出依存の国が半世紀以上で最も深刻な経済的苦境に陥ることになった経緯を反映していると思われる。
新しく選出された鳩山由紀夫総理大臣は、公式にはオバマ氏称賛を明言しているものの、戦時の際、国を守ってもらうという条約で縛られた、彼が表現しているところの “いささか受け身的な” 米国との関係から抜け出そうとしている。
そのため、アフガニスタンにおける米国主導の多国籍軍を支援する軍艦への燃料補給というインド洋における8年間の任務をやがて終わらせる予定だ。また日本国内のアメリカ海兵隊航空基地の移設と8,000人の海兵隊員の日本からグアムへの移動を含む260億ドルの軍事案を再開しようとしている。米国と日本は2006年にこの協定に合意しており、その一部について再交渉を申し出ている鳩山氏に対してオバマ政権は苛立ちを見せている。
この未解決の問題は、日米同盟の重大な障壁となっており、東京でのオバマ氏の発言が注目されるのは確かだ。
あ
Ground zero 爆心地
そういった会談の中で公式協議議題として取り上げられそうにないのがオバマ氏に対する広島と長崎への招待だ。それでも、この訪問のわずかな可能性が、新聞の社説、教室での討論、あるいは夕食時の議論に油を注ぐこととなっている。オバマ氏のノーベル賞がまさに投機の賭け金を上げているような状態だ。
「過去のノーベル平和賞の受賞者たちの多くがグラウンド・ゼロ(爆心地)を訪れている」東京から約530マイル南西にある広島市に本社を置く中国新聞の社説の記事だ。「我々は彼自身がその場所に行ってその目で見ることによって、核のない世界を求める意欲を新たにすることを彼に求める」
多くの日本人の目から見れば、『アメリカが核兵器のない世界の平和と安全を求める』ことを誓ったプラハでのオバマ氏の4月のスピーチの方がより重要であった。このスピーチの中で、オバマ氏は、アメリカには『その役割を果たす道義的責任がある』、なぜならアメリカは核兵器を使用した唯一の核保有国であるからだ、と述べた。
そういった発言が、広島の地では、当時20才で爆心地から半マイルの地点で被爆した Sunao Tsuboi 氏ほか、生存被爆者を驚かせるとともに喜ばせた。爆弾からの熱線は彼の顔面、背中や両腕の皮膚を焼いた。その後、彼は前立腺がん、大腸がんや輸血を要するほどの慢性の貧血を患った。
「こういった核兵器に対するオバマ氏の姿勢は私たちに非常に近い」と、Tsuboi 氏は言う。彼は現在84才で被爆者団体のリーダーを務めている。「原爆被爆者はもうあまり長く生きられないでしょう。オバマ氏はそのことをわかっています。彼に立ち寄っていただけることを強く期待しています」
しかし、広島の大部分が焼き尽くされてから60年以上の間、第二次世界大戦からの長引く諸問題の解決に取り組む中で、日米首脳たちの選択の自由を制限してきた政治情勢をそういった期待が乗り越えることはなかったのだ。
日本の現職総理大臣の中で真珠湾を訪れたものはなく、米国を戦争に引きずり込むことになった1941年12月7日の奇襲攻撃について謝罪したものもいない。
米国では、日本の被爆者の苦難に対して親密な注意を払うことは、原爆を使用した政府の決定に対する不適切な批判につながるとしばしばみなされてきた。1995年、スミソニアン国立航空宇宙博物館は、議会の81人の議員からの圧力のもと、原爆投下の道徳性について疑問を提起させるような展示品を取り下げた。また、2003年、同博物館は広島に原爆を落とした飛行機 Enola Gay 号の展示では、それによってどれほど多くの人たちが死亡したかについて言及すべき、との提案を拒否した。
1945年8月6日に投下された爆弾は約14万人の人々の命を奪った。3日後に爆弾を落とされた長崎では約8万人が死亡した。その6日後、第二次世界大戦は日本の無条件降伏によって終結することになった。
広島では、オバマ氏への招待状は開封されたままとなるだろうが、その招待に応じるため時間を割こうととしないのがオバマ氏だけというわけではない。同市の平和推進部門によれば、核兵器を持っているどの国からも、死者の名簿が置かれている記念碑を現職の首脳が訪れたことはないという。
というわけで、
今回のオバマ大統領の来日演説から、核問題についての
くだりの抜粋である。
我々は20世紀の遺物である、我々の安全への脅威、つまり核兵器の危険に対応するための努力も、倍増させなければならない。
プラハでは、私は世界から核兵器をなくすことへの米国の決意を再確認し、その目標を追求するための包括的な重要課題を示した。日本がこの努力に加わったことを喜ばしく思う。なぜなら、地球上でこの2カ国以上に、この兵器が何をもたらしうるかを知っている国はなく、そうした兵器のない未来を共に目指さなければならないからだ。これは、我々が共有する安全保障の根本であり、共有する人道性にとっての大きな試練だ。私たちの未来自体がこれによって左右されるのだ。
明確にしたいことがある。核兵器が存在する限りは、米国は、韓国や日本を含む、同盟国の防衛を保障するため、強力で効果的な核抑止力を維持する。
しかし、この地域での核軍拡競争の加速は、これまでの何十年間の成長と繁栄を損ないかねない。だから、私たちには、核不拡散条約(NPT)の基本的な取り決めを守るよう求められている。つまり、すべての国に原子力の平和利用の権利があり、核兵器保有国には核軍縮に取り組む義務が、非核保有国は核兵器を放棄し続ける責任があるという仕組みだ。
実際、日本は、この仕組みに従えば真の平和と影響力を獲得できると、世界に示した例だ。何十年にもわたって原子力エネルギーの平和利用の利益を享受する一方で、核兵器開発を拒否してきた。そのことはあらゆる基準からみて、日本の安全保障を高め、その地位を高めてきた。
我々の責任を果たすため、そしてプラハで示した課題に向け前進するために、我々は日本の助けも得て、この国際的な取り組みを支持する国連安保理決議を全会一致で可決した。ロシアとは、保有する核の削減の新たな合意を目指している。包括的核実験禁止条約を批准し、その発効にも取り組む。来年の核安全保障サミットでは、世界中の脆弱な状況下にある核物質を4年以内に管理下に置くという目標を前に進める。先ほど述べた様に、世界的な核不拡散体制の強化は個々の国の問題ではない。すべての国の責任だ。イランや北朝鮮も含まれる
オバマ氏の演説に、小浜市は出てきても、
広島、長崎の文字は登場しなかった。
本国に多くの退役軍人を抱え、
またアメリカ軍の最高司令官であるオバマ氏としては、
立場上決断できないことや明言できないことも多いのだろう。
広島、長崎の被爆者や遺族は
アメリカ大統領の訪問を強く望んではいるが、
それは謝罪や補償を求めるためでは決してない。
世界を動かすほどの力を持つアメリカ大統領に
原爆による広島、長崎の惨状を知ってもらい、
世界に核の廃絶の重要性を発信してもらいたいだけだろう。
しかし、そういった訪問が、単に形式的なものであったり、
大統領の覚悟を伴わないものであっては全く意味がない。
まずは米国内でのオバマ氏の指導力をゆるぎなきものとし、
核廃絶へ向けての米国民の気運を高めることが重要であり、
真に米国民の代表者となったとき広島、長崎を訪れてこそ
大きな意義があると思うのである。
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