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MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

骨に名前を取り戻す

2011-07-19 18:44:52 | 科学

身元不明の白骨死体。
現代なら失踪者のDNAデータから
簡単に身元を割り出せる?
というわけにも
まだまだいかないようで…

7月12日付 Washington Post 電子版

CT scans help reconstruct faces of unidentified victims to solve cold cases 未解決事件解明のため、身元不明の遺体の顔の再構成にCTスキャンが一役

Reconstructfaces

Inova Alexandria Hospital で身元不明の頭蓋骨のCTスキャンのために専門家たちが集まっている

By Rachel Saslow
 Inova Alexandria Hospital のCTスキャンは普段は脳卒中、血栓症、あるいはその他の臓器損傷の診断に用いられている。しかし最近、同院ではCTスキャナーが新たな目的で用いられている:何年間も行方不明となって死亡した子供の頭蓋骨を検査する目的である。この一年、National Center for Missing & Exploited Children(NCMEC:行方不明および搾取された子供たちのためのセンター)は3例のそのような未解決事件ならびに一件の成人のケースの背後にある謎を解き明かす一助とするために Inova の放射線部門と手を組んできた。「頭蓋骨がここに来るまでが既に十分に恐ろしい話なのです」と、Alexandria に本部を置く非営利団体 NCMEC の法医学画像診断の専門家 Joe Mullins 氏は言う。「小さな箱を開け、森の中で発見された7、8才の子供の頭蓋骨を取り出すのは辛いです。しかし誰かがそれをしなければならないのです。それゆえ、私たちは、行方不明の子供を探り当て、彼らにそれぞれの名前を戻してあげる手伝いをしたいと思い全力を尽くすのです」
 Mullins 氏の仕事はアメリカのテレビドラマ“Bones”や“CSI”そのもののように見える。彼はアドブ・フォトショップを使って、推測されるその人物の系統や年齢に基づいて筋肉や皮膚などの仮想的なレイヤーを構築し、死者がどのようであったかを再構成する。FreeForm モデリングと呼ばれる技術によって、Phantom というジョイスティック様のアームを用いて、まるで粘土のようにコンピューター画面上で彼が行う作業を確認することができる。死者を知っている人たちに認識してもらえることを期待して出来上がった画像はチラシとして配布されたりメディアに届けられたりする。
 しかし、Mullins 氏が顔面の再構成を行うためには、まずCTスキャンでデジタル化した頭蓋骨像を手にする必要があり、これによってX線技術やコンピューター技術を用いて3次元のイメージを作ることができる。Mullins 氏はCTスキャン、FreeForm、フォトショップを用いたこの方法を約5年前から取り入れている。彼は、自分以外にこの方法を使う法医学アーチストを世界で2、3人しか知らない。ほとんどの法医学アーチストは軟部組織の代わりになるものとして成型用の粘土を用いて頭蓋骨を再構成している。
 カリフォルニア州法務局の法医学アーチスト Barbara Anderson 氏はこの技術を用いたことはないが、頭蓋骨が古く脆弱なケースではこの方法はきわめて価値があると考えている。なぜならこの方法では標本が直接手で触れられる機会が少なくなるからである。
 「未解決事件でこれまで不可能だったことができるようになると思います」と、彼女は言う。それが粘土に取って替わるかどうかは時間の問題でしょう」
 Mullins 氏と Anderson 氏が共に指摘する点として、より多くの法医学アーチストがデジタル化に進んでいない理由としてソフトウェアの高い費用がある。しかし、この技術がさらに高度化しているように考えられることからその点は必ずしも改善していないと、Anderson 氏は言う。
 「成功はすべてアーチストの能力に委ねられています。100%です」と、Anderson 氏は言う。「世界で最良のツールを持つことはできますが、アーチストが事例や骨を理解するのに時間を割くことがなければ、よく似せることはできません」

Getting creative 独創的に考える

 何年もの間、Mullins 氏は Smithonian's National Museum of Natural History でCTスキャンを用いてきた。そこではCTスキャンが、ミイラ、恐竜の骨、あるいはストラディバリウスのヴァイオリンなどの物体を検査するために日常的に用いられていた。そこでは形質人類学者 David Hunt 氏が、死者の系統、一般健康状態、あるいは識別のための細部を見つけ出す目的で頭蓋骨を解析していた。しかし一年あまり前に Hunt 氏の機械が故障したため、マサチューセッツ州 Provincetown の当局が1974年に Cape Cod のビーチで発見された殺人の被害者である遺体 “Lady in The Dunes” の頭蓋骨を送り込んできたとき NCMEC は独創的に考える必要があった。Mullins 氏が顔面の再構成を開始するためにどうしてもCTスキャンが必要だった。
 そこで Inova Alexandria 病院の登場となる。NCMEC 副代表の John Rabun 氏は、Inova Alexandria の最高責任者で年来の職業上の友人である Christine Candio と連絡をとった。
 「どんなに微力でも、この気の毒な女性の身元を発見し、彼女の家族に気持ちの区切りをつけさせる手助けができれば、それは光栄なことだと思いました」と、Candio 氏は言う。そうして Provincetown 警察は2010年5月に “Lady in the Dunes” の新しい画像を公開した。残念ながら本ケースはいまだに解決に至っていない。
 同病院の CT 臨床部門コーディネーターの Robert Winters 氏によると、彼の部門はこのプロジェクトにわくわくしていたという。「チーム全体が『見てみたいし、関わりたい』といった感じでした」
 Smithsonian の CT はその後修理されたため NCMEC はそこでまたスキャンを再開している。しかし、NCMEC の当局者たちは、同病院との提携することで、国内の警察官に CT スキャンを行うために地域の医療センターと連携する気にさせることにつながると期待している。そのようにして、画像が Mullins 氏の元に送られ、彼は直ちにデジタル再構成を開始することとなった。より大きな構図で見ると、警察が簡素化された過程によって小児の事例だけでなく、すべての種類の未解決事件を解明するのに役立つだろう。
 「検視官の部屋の棚に置かれていて、それをどうしたらいいのか誰もわからない、米国だけでその他の数千個にのぼるそんな頭蓋骨を救うことになるでしょう」と Mullins 氏は言う。

A small part of the job  仕事の一部

 頭蓋骨の再構成は Mullins 氏の仕事のごく一部に過ぎない。彼は時間の多くをエイジ・プログレッション(age progression)に割いている。これは、2年以上行方不明となっていた子供の写真を元に、現在彼らがどのようになっているかの画像を作成するものである。最大限正確な予測像を推測するため、しばしば、その子供の兄弟や両親の写真を用いている。さらに死体安置所の子供の写真を撮るという粛然とした仕事があり、彼の表現によればそれは『彼らをデジタル的に復活させること』であり、その結果彼らの画像がメディアに公開されることになる。
 James Madison University で美術とグラフィック・デザインで学位をとった Mullins 氏は同センターのすべての頭蓋骨再構成を扱っている。彼のケースの中に、ロサンゼルス近郊の浅い墓で2006年に発見された身元不明の女性の遺体についての仕事がある。警察は依頼をかけ、頭蓋骨を写真撮影し、検視官や法医人類学者によって解析を受け、その情報をアーチストに渡してスケッチを作成した。そのスケッチは2年間出回ったが結果は得られなかった。
 「もし新たな手がかりが得られず、私たちがこの新しい技術を持っていることを警察が耳にすることがあれば、彼らはやり直しのため私たちに頭蓋骨を送ってくるのです」と、Mullins 氏は言う。「それは彼らがあらゆる手段を使い尽くした後です。私はテレビのショーに出ているだけのように現場には出向くことはありません」
 彼は2008年に頭蓋骨を受け取り、それを Smithsonian の Hunt 氏に送った。その遺体が10代後半から20代前半で、健康状態にあり、かつ健康な歯を持っていたヒスパニック系かアフリカ系アメリカ人の血を引く女性であることを Hunt 氏は割り出した。
 「もし彼女に大きな骨折があったり、鼻中隔彎曲があったり、歯並びが悪かったりするなら、それは法医学アーチストにとっておあつらえ向きである。なぜなら、それらは軟部組織に変換される材料となるからです」と、Mullins 氏は言う。
 この頭蓋骨ではそれは当てはまらなかったが、Hunt 氏は Mullins 氏に別の手がかりを与えた。彼女がディオンヌ・ワーウィックの鼻のようだったと言ったのである(Hunt 氏は Mullins 氏に対してしばしば有名人に例えてみせる)。

Narrowing the possibilities  可能性を狭める

 Hunt 氏は頭蓋骨を見てただちにその系統を知ることもあると言うが、それほど簡単ではないこともある。そのような場合、頭蓋骨を計測することが可能性を絞り込む助けになる。
 頭蓋骨のCT 画像と Hunt 氏の助言を元にして、Mullins 氏はフォトショップで女性の顔の再構成を開始した。鼻の格好や幅、耳介の格好、眉毛の位置、さらには髪の毛の生え際の予測まで、「顔の軟部組織についてのそれらすべての情報は頭蓋骨に刻みこまれています」と、Mullins 氏は言う。
 Muyllins 氏は人物の系統に基づいて目鼻立ちの配置や計測値を計算する公式を用いる。Hunt 氏も Mullins 氏も、人骨からだけではその人物の体重を決定することはできない。しかし時には、遺体には衣類が付随していることもあり、それが死者の体重を知るヒントになりうる。
 デジタル再構成には約1週間を要した。警察官は2008年6月に公開の会合でその新しい画像を公開した。ある市会議員がその画像を見て、それが Stephanie Quezada ではないかと警察に話した。彼女は2005年に20才で失踪していたのである。彼女の写真が載せられているポスターが数年間彼の事務所に貼られていたのだった。
 4ヶ月後、DNA鑑定の結果からその頭蓋骨が Quezada のものであることが確認された。
 過去5年間に NCMEC が行ってきた30ほどのデジタル再構成のうち、Quezada のケースはこの新しい技術が用いられて解決できた唯一の未解決事件である。
 「毎日朝起きて私を仕事に向かわせようとするのは希望です」と、彼は言う。「希望がなければ、自分の仕事はできません」

アメリカには色々な職種があって、
専門性を発揮している人たちがいるのだなぁと、
あらためて感心させられる。
文中の『法医学アーチスト』は
forensic artist を無理やり訳したのだが、
本当はどう訳すべきなのだろうか?
死者の魂を救うために、
日本でも、
警察と病院がもっと協力し合う
必要があるのかもしれない。

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『不老不死』へのカウントダウン

2011-07-12 13:21:42 | 科学

みなさんの人生が1,000年だとしたら、
どのような人生設計を立てられるだろうか?
おそらくダラダラとした毎日を送る人が
増えるのではないだろうか?
今後数十年以内に人の寿命が1,000年になる
可能性があるのだという。

7月4日付 Reuters.com より

Who wants to live forever? Scientist sees aging cured 永遠に生きたいと誰が思うのか?科学者たちは老化は治せると考えている。

Whowantstoliveforever_2

By Kate Kelland
 (ロンドン発・ロイター)もし Aubrey de Grey 氏の予測が正しいとしたら、150才の誕生日を迎えるまで生きる最初の人間は既に生まれている。そして1,000年生きる最初の人間はその人より20才も年下ではないだろう。
 長寿研究のために創設された財団の主任研究員で生物医学老年病学者の de Grey 氏は、彼自身の生涯のうちには医師たちが老化を “治す” のに必要な(老化とともに迎える病気を払いのけ、永久に人生を延長する)すべての手段を持つようになるだろうと推測している。
 「今後25年ほどのうちに、医学的管理の(私たちが呼ぶところの)決定的なレベルのもとで老化がもたらされる可能性は五分五分であろうと思います」。イギリスの Royal Institution academy of science での講演前のインタビューで de Grey 氏はそう述べた。
 「決定的という表現で私が言いたい意味は、私たちが今日のほとんどの感染症を医学的にコントロールできるといったようなことです」 定期的 “メンテナンス” でかかりつけの医師のもとへ行くようになる時代を De Grey 氏は想定している。そのころまでに、そういった “メンテナンス” には、健康を維持するための遺伝子治療、幹細胞治療、免疫増強、その他の様々な先進的な医学技術などが含まれるだろう。
 De Grey 氏は2000年に博士号を取得した Cambridge University の近くに住んでおり、現在、2009年に共同設立しカリフォルニアに拠点を置く非営利団体 SENS(Strategies for Engineered Negligible Senescence) Foundation の主任科学研究員を務めている。
 彼は老化というものを、身体中の様々なタイプの分子レベル、および細胞レベルの損傷の生涯にわたる蓄積であると表現する。
 「その概念はいわゆる予防的老年医学で取り組むようなことですが、そこでは病気の素が大量のレベルに達する前に分子レベル、および細胞レベルの損傷が定期的に修復されるようになるのです」と、彼は説明する。

CHALLENGE 挑戦

 将来、まさに平均余命がどれくらい、またどれほどの速さで延びるかがいくらか議論のテーマになっているが、その動向は明確である。今のところ毎年平均で3ヶ月平均余命が延びており、2030年までに世界中で百才以上の人たちが100万人存在することになるだろうと専門家たちは予測している。
 これまででは、記録上世界で最も長く生きた人は122才であり、2010年には日本だけでも100才以上の人たちは44,000人以上存在していた。
 しかし、さらに長い寿命に向かう傾向は、富裕国から開発途上国に広がっている肥満の蔓延のために壁に当たるかもしれないと指摘する専門家もいる。
 De Grey 氏の考えは飛躍的過ぎるように聞こえるかも知れないが、de Grey 氏のSENS 説が『あまりに不適切で学術的議論の価値はない』と指摘した分子生物学者のために Massachusetts Institute of Technology (MIT) Technology Review 誌が2005年に提供した2万ドルは誰にも獲得されていない。
 9人の著名な科学者の一団が de Grey 氏の研究を『偽科学』と片付けてしまったことから彼の怒りの非難を受けその委員会の審査員たちは決断を迫られたのである。
 こういったレッテルは公正ではないと彼らは結論し、むしろ、『興味深いと考える人もいるかもしれないが、他方で自由に疑いを持つ人もいるようないまだ検証されていない着想の真ん中に SENS は存在している』と論じた。

CELL THERAPY 細胞治療

 人によっては、数百年間生きられる可能性が特別魅力的ということにはならない。病気で弱った高齢者の人々や段々と適応できなくなった社会のイメージが浮かび上がってくるからである。
 しかし、de Grey 氏が取り組んでいることはそんなことではないと言う。死に至る病気を寄せ付けないようにすることが第一の焦点である。
 「これは、悪い健康状態で人々を生かそうという状況では決してありません」と、彼はロイターに対して語った。「これは人が高齢となった結果、病気になるのを防ぐのが目的なのです。私たちが研究している特殊な治療はより良い健康を実現することの副次的効果として長寿がもたらされるだけなのです」
 De Grey 氏は加齢による損傷を7つの主要なカテゴリーに分類しているが、もし継続的なメインテナンスという彼の予測が実現するとすれば、それぞれのカテゴリーに対して修復の技術が開発される必要がある。
 いくつかのカテゴリーについては、科学はいまだ最初期の段階にある一方、すでにそこに科学が確立されているようなカテゴリーもある。
 「幹細胞治療はこの中で重要な役割があります。損傷の一つのタイプ、すなわち細胞が死んで自動的に置き換わることのない場合に起こる細胞の喪失を元に戻すのが目的となっています。既に人間において臨床試験が行われている段階にあります」と、彼は言う。
 幹細胞治療は現在、脊髄損傷の患者で臨床研究が行われており、de Grey 氏らは、同治療がいつかは疾患によって損傷を受けた脳や心臓を修復する方法を見つけるために用いられるようになるだろうと言う。

NO AGE LIMIT 年齢制限なし

 心血管疾患は世界で最も重大な、加齢に関係した死因であり、研究者たちがたどるべき道が見出されてはいるものの、この疾患に達するまでの道のりはまだ長いと、de Grey 氏は言う。
 心不全、心筋梗塞、あるいは脳卒中の原因となる心臓疾患は de Grey 氏が『分子的ゴミ』と呼んでいるタイプの、すなわち身体の代謝過程における副産物の蓄積によってもたらされるが、それらを私たちの身体は分解したり排出したりすることができない。
 「そのゴミは細胞内に蓄積し、最終的には細胞の機能の障害になるのです」と、彼は言う。
 de Grey 氏は、現在米国において、そのゴミを分解し、細胞を掃除することのできる酵素を人間以外で発見することに仲間の研究者たちと取り組んでおり、そうなれば、目的は、この能力を人間に与える遺伝子治療を考案することになる。
 「動脈壁の細胞に蓄積する特定の変性した型のコレステロールの例でそれを行うことができれば、私たちは本当に心臓血管疾患に罹らなくなるでしょう」
 将来人がどれくらい長く生きられるようになるかについて確固たる予測を行うことに de Grey 氏は難色を示すが、寿命を延長させるそれぞれの進歩によって、科学者たちはさらなる科学的進歩を遂げるための時間を稼ぐことができることになるだろうと、彼は言う。
 彼の考えによると、1,000才まで生きる最初の人間は、初めて150才まで生きる人から20年以内に生まれる可能性があるという。
 「私はそれを寿命脱出速度と呼んでいます。そこでは、老齢期の健康障害を、時が流れるより速く先延ばしにすることのできる十分に包括的な一群の治療法が存在するのです」
 「人がどれくらい長く生きられるかという観点で実際に予測してみることは全く無意味です。なぜならそれは不慮の事故のような他の原因で死亡するリスクによって決まるからです」
 「しかし、人がどれくらい昔に生まれたかによって制限が課せられるべきではありません。メンテナンスの本質は、それが無制限に有効であるということなのです。

自分も、あと25年、なんとか健康を保っていれば、
ひょっとして150才まで生きられるかも。
ただし、
かなりの『メンテナンス』が必要となりそうだが…(苦笑)
今はそんなに生きたくない、と思っていても、
周りの(特に憎たらしい人間が)続々と長生きする
世の中になれば、自分も是非、と思うように
なるのかもしれない。
いやな世の中になりそうだ。

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小さきものから

2011-06-27 18:26:58 | 科学

コーネリア・バーグマン博士は
嗅覚研究ではかなり有名な研究者らしい
(美女でもあるようだ)。
線虫を用いた神経系の研究の第一人者らしいが
その研究内容は複雑である。
ネットでも色々と紹介されているようなので
詳細はそちらでご参照いただきたい。

6月20日付 New York Times 電子版

In Tiny Worm, Unlocking Secrets of the Brain 小さな虫の中で脳の秘密を解明する

Celegans

線虫が特定の化学物質に晒されニューロンが反応すると明るい緑色に輝くよう科学者によって線虫の二つのニューロンに操作が加えられている。

By NICHOLAS WADE

 East River を見下ろす8階のラボで Comelia I. Bargmann(Cori Bargmann)博士は二人の研究員が微細な線虫を操作しているのを見ている。鼻先を管の中に突っ込んだ状態で透明なプラスティックの棒の上の微小な溝の中に虫を捕まえていた。他の虫によって産生された信号化学物質、フェロモン(pheromone)が管を通して送り込まれる。ニューロンが反応すれば虫の頭部の2つのニューロンが明るい緑色に発光するよう研究者によって遺伝子的に操作が加えられていた。

Celegans2

C.elegans と呼ばれる小さな線虫は302個のニューロンしかない。そのため神経回路の研究に格好の対象となっている。研究者らは、線虫の行動をコントロールするために個々のニューロンがどのように相互に作用するかについて全貌を明らかにし始めている。

Corneliabargmann

Cornelia I. Bargmann 博士は線虫の脳がどのように機能しているかどうかを解明中である。

 小さな動物の行動を探索するためのこういった独創的な技術は Bargmann 博士のラボや他のラボによる長年の研究の成果である。知的能力の程度において線虫は低級であるにもかかわらず、その神経系の研究は人間の脳を理解するのに最も有望なアプローチの一つを提供してくれるのである。というのも、それはまさに同じ機能的要素を用いながら、何百万倍も単純だからである。
 一般に線虫として知られている Caenorhabditis elegans はわずか1mmの長さの小さな透明な動物である。腐敗した動植物で増殖するバクテリアを餌とする。これはいくつかの理由で格好の実験生物となっている。その一つにその脳がかなり単純であるということがあり、そこには302個のニューロンしかなく、神経間の連結部であるシナプスは8,000箇所しかない。こういった連結は個体間でほとんど同一であり、このことは、すべての線虫において脳は本質的に同じように配線されているということを意味する。そのようなシステムを理解するのは、数十億のニューロン、10万マイルの生物学的回路、および100兆ヶ所のシナプスからなる構造を持つ人間の脳よりかなり容易であるに違いない。
 生物学者の Sydney Brenner 氏はこのゴールを念頭に置いて1974年に実験動物として線虫を選んだ。302個のニューロンがどのように接続されているかという神経回路図を誰かが彼に提供してくれれば、彼はこの線虫の行動を割り出すことができると考えた。
 線虫の神経回路系統を再構成する仕事は、現在 University of Wisconsin に所属する John G. White 氏の肩にかかることになった。線虫体の20,000枚の電子顕微鏡の断面図を調べる必要があった作業に10年以上取り組んだ末、White 博士は、302個のニューロンがどのように相互接続されているかを正確に解明した。
 しかし、線虫ですら脳の神経回路図が複雑であることがわかり Brenner  博士のコンピューターでのアプローチは成功していなかった。Bargmann 博士は White 博士の神経回路図を採用し、他の方法でそれが解明されるかどうかを見た最初の生物学者の一人だった。
 Cori Bargmann 博士は、米国南部 Deep South の小さな大学都市ジョージア州 Athens で育った。そこのUniversity of Georgia で父親は統計学を教えていた。彼女の両親は通訳をしていて、Rolf Bargmann 氏がニュルンベルク裁判所で働いていたときに知り合った。母親の Ilse さんはオーストラリアの動物行動主義者の Konrad Lorenz と Karl von Frisch の研究をドイツ語で彼女に読んで聞かせていた。このことが彼女の神経科学への関心の素地を作ったのである。
 「私が科学の道を選んだのはラボが好きだったからです」と Bargmann 博士は言う。彼女は機械や道具が好きで、自分自身で物を作り、他の誰も知らないことを学ぶ楽しみを好んでいた。抜群に優秀な学生だった彼女は博士号をとるために一流の癌生物学者である Robert A. Weinberg 氏の M.I.T. のラボで研究することになった。そこでは癌を起こし得る最初の変異遺伝子が分離されている。「それは素晴らしく刺激的な時間でした」と、彼女は言う。
 彼女の仕事は neu と呼ばれるラットの遺伝子をクローニングすることだった。その遺伝子に変異が起こると腫瘍を生ずるが、それはラットの免疫系が攻撃し破壊できる腫瘍である。数年後、人間版の neu 遺伝子に相当する HER-2 が乳癌で増幅しているのが発見され、その受容体たんぱく産物が、有力な乳癌治療薬のハーセプチンと呼ばれる人工抗体のターゲットとなっている。
 Bargmann 博士は、博士課程終了後の活動として動物の行動について研究することに決めた。マウスはそういった研究の標準的な動物であるが、彼女は毛で覆われた動物を傷つけるのが好きではなかった。「Weinberg 先生のラボで、マウスで何かしなければならないたびに泣きだしていました」と、彼女は言う。毛に覆われていない代わりの動物がミバエだった。彼女はカリフォルニアの有数の研究所の面接を受けたが、その時は夫がそこへの異動を希望しなかった。
 それで線虫が残ったのである。今では世界中には数百の線虫のラボがあり、それらのうち30ほどが Bargmann 博士のラボと同じように、線虫の神経系に焦点を当てている。1987年には「線虫に今ほどの評価があったわけではありません」と、Bargmann 博士は言う。しかし、ちょうどM.I.T. では、H. Robert Horvitz 氏が米国で最初の本格的な線虫ラボの一つを創設していた。彼女は彼のラボに加わり、線虫について書かれたものをすべて読んだが、それにはこの小さな領域の非公式な雑誌 The Worm Breeder’s Gazette のすべてのバックナンバーが含まれていた。
 彼女は、C. elegans の特異な行動は記載されているものの、十分解明されていないことを知った。この動物は水質汚染化学物質を摂取し、興味をそそるものであると感じた方向へ移動する。White 博士の神経回路図はその前年の1986年に発表されていた。それを手にしながら、彼女はこの線虫の302のニューロンのどれがその化学物質追跡の行動を支配しているのかを明らかにしようと思っているとHorvitz 博士に言った。
 この研究課題はあまりに大胆であると彼は考えたが、この試みに6ヶ月かけてもよいと言った。線虫の脳内のそれぞれのニューロンは知られており、3文字の名前が割り当てられている。顕微鏡下に特異なニューロンを同定でき、レーザー光線で焼くことが可能であり、その操作によって線虫から一体どんな機能が失われたかでそのニューロンの機能が推測できるのである。
 一つ一つニューロンを断つという作業を繰り返し Bargmann 博士は辛抱強く前進した。顕微鏡下で一つのニューロンを他のニューロンと区別するのは容易ではない。「一房ブドウの中ではそれぞれの粒が違っているのはわかっていても、それを必ずしも見極めることができないことに似ています」と Horvitz 博士は言う。「彼女がまずしなければならなかったことは線虫の神経解剖を学ぶことであり、それまでにただ一人しかやっていなかった方法で彼女はそれを行ったのです」(彼が指しているのは、成虫体内にある全959個の細胞の卵細胞からの系統を追跡した John E. Sulston 氏のことである)
 線虫の休眠状態への切り替えをコントロールするニューロンを彼女は偶然発見した。これは食べ物が少なかったり、仲間が過剰状態にあるときの生き残りの戦略である。そしてついに彼女は嗜好をコントロールするニューロンを発見した。それらのニューロンがなければ線虫は化学物資を追跡できないこと、線虫の他のすべてのニューロンを断ってもこの能力を保持していたことを示したのである。
 彼女はまたこの線虫が味覚だけでなく嗅覚、すなわち空気中の化学物質を感知する能力、を持っていることを発見した。線虫は腐敗しかけている植物や死骸を餌とするバクテリアを食べることから、線虫は腐敗の臭いを感知しそれを目指して追いかけることができるに違いないと彼女は考えた。これらの実験で漏れ出てくる臭いを伴う隙間風は Horvitz 博士のラボで苦情を招いた。成功を収めてから彼女はこう述べている。「Horvitz 氏は私に、私の科学者としての強みは、私が線虫のように考えることができることだと言いました」
 「Cori は線虫のように考えるだけでなく才能を持っています」と、今、Horvitz 博士は言う。彼女は厳密で独創的なやり方で考えることができる人ですが、ほとんどの人がまねできません。それゆえ彼女はさらに新しい種類のアプローチをたびたび開発してきました」
 Bargmann 博士は自身のラボを立ち上げるため 1991 年に University of California, San Francisco に移った。そこで彼女は線虫が嗅覚を持っているという自身の知見をさらに追求することから始めた。1991年、Richard Axel、Linda Buck 両氏は嗅覚の分子的基盤を発見した。それによると、鼻の中の嗅神経終末に分布し特異な臭いに反応するたんぱく、すなわち臭気物質受容体を作り出す遺伝子が、ラットで少なくとも約1,000個存在するという。
 C. elegans の全遺伝子情報はすでに解読されていたため Bargmann 博士は線虫の臭気物質受容体の遺伝子を同定することができた。実際のところ、線虫は2,000個の遺伝子を持っていたのだが、これはラットの約2倍である。
 「これが線虫の行っていることなのです」と、Bargmann 博士は言う。線虫は見ることができない。線虫の世界は視覚の世界ではなく嗅覚の世界である。餌である土壌のバクテリアを嗅ぎつけ、一方では有害なものを回避する必要がある。部分は不快なものだが臭いに対する最高の鑑別家にこの線虫を仕立て上げるために遺伝子の10%が用意されているのである。
 嗅覚遺伝子を手に入れたことで、Bargmann 博士は、線虫の嗅覚がどのように機能するかの解明に遺伝学を応用することが可能となった。彼女は、変異を持った線虫を用いることによって特定の受容体が特定の臭いを認識することを彼女は示した。これは Axel-Buck の発見から示唆されていたことであったが、それまで誰にも明確にされていなかった。
 彼女は odr-10 と呼ばれる遺伝子に変異がある線虫は diacetyl(ジアセチル)を嗅ぎわけられないことを発見した。この化学物質はバターにその臭いをもたらすものであり、線虫の大好物であるバクテリアによって産生される。Diacetyl を感知する臭気物質受容体たんぱくを作る odr-10 遺伝子は線虫を臭いの方へ導くニューロンで活性化している。
 Bargmann 博士は、線虫が嫌うような臭いを感知するニューロン内でのみ odr-10 が発現するよう操作した。するとこれらの線虫はバターの臭いを敬遠したことから、線虫が臭いを心地よいと見なすか嫌いと見なすかを決定するのは臭気物質受容体ではなく神経系の回路そのものであることが示された。
 これは驚くべき結果だった。なぜなら、ほとんどの人たちは、感覚情報は中立的に感じられ、その後諸状況からそれが良いか悪いかが脳で決定されていると考えていたからである。虫レベルでのみこういったやり方で行動していると主張する科学者もいたが、その後同じ結果がマウスにおいても得られている。
 Bargmann 博士はこの機序を進化的意味合いで考えている。「情報の一端がより確かになればなるほど、それはますますゲノムにシフトされてゆきます」と、彼女は言う。生物はその方が、何が良くてなにが悪いかを学ぶのにリスクを冒さなくてすむのである。つまり、遺伝子はそれを神経系にプログラミングすることで正しい行動を決定づけるのだ。線虫は diacetyl がおいしい食べ物を意味していると知るよう脳が配線されているのである。
 遺伝子を変異させることで線虫を研究してきた Bargmann 博士は、次に線虫の行動の遺伝的基盤における自然のバリエーションを探った。本来、ほとんどの線虫は塊状に集まる傾向にあるが、C. elegans のラボの異型では通常と異なり単独で存在することを好むようになっていた。彼女は行動におけるこの違いを npr-1 と呼ばれるたんぱく(neuropeptide Y receptor-1)における一つのアミノ酸の入れ替えと関連づけた
  このシステムがどのように機能するかを知るのにはさらに数年を要した。そして線虫における社会的行動がRMG と呼ばれる一対のニューロンによってコントロールされていることがわかった。この2つの RMG ニューロンは、線虫を集合させるいくつかの環境信号を感知する様々な感覚ニューロンからの入力を受け取る。RMG はこの情報を統合し、信号を線虫の筋肉に送るのである。
 この RMG ニューロンの通常の役割は社会的行動を促進することであるが、npr-1 遺伝子が活性化しているときには RMG ニューロンは感覚ニューロンからの入力を受け取ることができず、その線虫は単独の行動に切り替わるのである。
 線虫の嗅覚を解明しながら、Bargmann 博士は一人の嗅覚研究者 Richard Axel 氏と恋に落ちた。Axel 博士は Columbia University に勤めており、彼女が Rockfeller University に場所が見つかったことから、ニューヨークで彼と付き合うことができるようになった。Axel 博士がサンフランシスコの彼女のアパートを引き払うのを手伝っていたとき、自分がノーベル賞を受賞したことを聞いた。
 この喜ばしいニュースの直後、売り払うものを運ぶために近隣の Goodwill store まで運転しなければならなかった。「もしあなたが科学者と結婚したら、四六時中、科学のことを話すことになるとみんなに思われるでしょう」と、Bargmann 博士は言う。彼らは発表の前にお互いの論文を読むが、一緒に実験を計画することはしない。Axel 博士は嗅覚情報が、人間およびマウスの脳で最も高次レベルの大脳皮質でどのように処理されるかについて研究している。
 「たぶん週に一度か二度くらい私たちが夕食を共にしていて、Richard が『大脳皮質は見込みがない』と言ったなら、私は言います、『だから私は線虫で研究しているのよ』」と、Bargmann 博士は言う。
 24 年間この小さな動物を研究してきて、彼女は、その神経系がどのように機能しているかの理解にさらに近づいていることを確信するようになっている。しかし White 博士によって提示された神経回路図を解釈するのがなぜそんなにむずかしいのだろうか?彼女は、その神経回路図が最初に記載された雑誌のボロボロになったコピーを自分の棚から引き出す。その図は神経系において302個のニューロンのそれぞれが他のニューロンと構成している電気的接続を示している。これらは人間のニューロンによって形成されるのと同じ種類の接続である。
 電気的信号を伝達するシナプスに加えて、ニューロン間には直接的な化学的連絡が可能な、いわゆるギャップ・ジャンクションも存在する。ギャップ・ジャンクションの回路はシナプスのそれとは全く異なっている。Bargmann 博士が connectome(コネクトーム)と呼んでいるものではお互いに重なりあう2つの別々の神経回路を持っているだけでなく、再配線し続ける第3のシステムも存在する。これはニューロンから放出されて他のニューロンに影響を及ぼすホルモン様の化学物質、neuropeptides(神経ペプチド)に基づくものである。
 この神経ペプチドは恐らく脳全体の状態あるいは気分をコントロールするのに役立っているだろう。神経ペプチドがどのように機能しているかについての強力なヒントは npr-1 遺伝子によってもたらされた。この遺伝子は神経ペプチドに反応するたんぱくを合成する。この npr-1 遺伝子が活性化していると、そのニューロンは、その局所的回路には参加しなくなる。
 線虫の行動が神経回路図から計算できない理由はそのためかもしれない。接続のパターンは、線虫の250の神経ペプチドの影響下にひっきりなしに変化しているのである。
 このコネクトームは電気的接続を示しており、それゆえこれは線虫の脳内を情報が移動する最も速い回線である。「しかし、もし時を選ばずニューロンの一部集団だけが機能しているとしたら、このコネクトームは曖昧なものとなってしまうのです」と、彼女は言う。
 人間の脳もまた気分を定め、行動を修正する神経ペプチドを持っている。深刻な局面で疼痛の伝達経路が中断され、それによって重傷にもかかわらず人が機能することができるような場合、おそらく神経ペプチド が作用しているのだろう。
 人間の脳は線虫の脳より極めて複雑ではあるが、神経ペプチドから神経伝達物質に至るまで人間の脳は同じ構成要素の多くを用いている。そのため線虫の神経系について知り得たことすべては人間のシステムにも当てはまる可能性が高い。
 線虫の神経系は決まって単純に表現されるが、それは人間の脳と比較する限りに確かである。線虫は22,000の遺伝子を持っているが、それは一人の人間とほぼ同数であり、その脳は生物的機構の中でも高度に複雑な部品である。Bargmann 博士やその他のラボの研究によってその作動メカニズムの多くが解き明かされてきた。
 線虫の神経系が完全に解明されたと言うには何が必要だろうか?「みなさんは端から端まで行動を理解したいと思うでしょう。そして、行動がどのように変化するかということも理解したいでしょう」
「そのゴールは達成不可能ではありません」そう彼女は付け加えた。

むずかしすぎてよくわからないが、要するに
個体のどの行動の側面が遺伝子によって決められ、
どの側面が経験によって影響を受けるのか?
その謎解明の鍵を C. elegans が握っているらしい。
しかし、小さく単純な構造に思われる線虫においても
相当に複雑なメカニズムが存在するようである。
地道な実験の繰り返しには
気の遠くなるような努力と忍耐が求められそうだ。
つくづく自分の性格ではとても無理な世界であると
痛感するのである(頭脳からして無理)。

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『未知』に備えてこなかったツケ

2011-03-29 00:04:18 | 科学

福島第1原子力発電所の緊急事態は
収束に向かうどころか、
さらに放射能漏れの危険が増しており
混迷の度合いが益々深まった状況だ。
現代の科学の全知を結集しても抑えきれないとは
やはり原子力はパンドラの箱なのかもしれない。
日本政府や東京電力は未だに
今回の地震・津波を『未曾有の』自然災害、
『想定外の』事態と繰り返し、
現状に陥ったことが不可抗力であると
国民に理解してもらいたいようである。
しかし、海外には、そのような言い訳は
一切通用しないと見るべきである。
以下の記事を読むと、今回の一連の事故が
人災であることは間違いないようだ。

3月26日付 New York Times 電子版

Japanese Rules for Nuclear Plants Relied on Old Science 古い科学に依存する日本の核施設の基準

By Norimitsu Onishi and James Glanz
 世界に tsunami(津波)という単語をもたらした国、日本において、核施設はほとんどがこの水の壁の潜在的な破壊力を軽視していた。消防士たちがいまだ懸命に鎮静化を試みている福島第1発電所をはじめとするいくつかの施設が日本の海岸線に点在し始めて数十年になる2006年まで政府のガイドラインにこの単語は登場すらしてこなかった。

Fukushima1

日本の地震のあと津波が爆発や火災を起こした福島第1原子力発電所の2号機の制御室に土曜日には電力が戻った

Fukushima12

福島第1原子力発電所の3号機から立ち上る煙

 頻繁に津波を起こし得る構造プレートの衝突に囲まれている島国で、3月11日福島発電所を襲った約46フィート(約14メートル)に達した今回の津波に比べてその防備が悲しいほど貧弱であったのは、そういった警戒感の欠如で説明できるかもしれない。台風からは護るが津波は想定されていなかった離岸防潮堤は防御の第一線として早々に屈してしまった。この発電所が建設されたときの防潮堤の約3倍の高さまで波は増高していたのである。
 日本の歴史上間違いなく最大で、海底を激震させ巨大津波を引き起こしたマグニチュード 9.0 の地震を技術者たちは想定できなかったと、日本政府や電力会社は繰り返し述べている。たとえそうであっても、既に入手したデータによると、環太平洋地域のほとんどあらゆる場所におけるマグニチュード7.5程度の地震でも今回の福島の防潮堤を十分越えるほどの大きさの津波を生じていた可能性があると、地震学者や津波の専門家は指摘している。
 2002年に諮問委員会によって拘束力のない勧告が行われたことを受け、この発電所の所有者で日本最大の電気事業者である東京電力は、福島第1に予測される最大津波を17.7(5.4 m)から18.7フィート(5.7 m)の間にまで引き上げたが、これは13フィート(約4 m)の防潮堤よりかなり高い。しかし、同社は、おそらく高い水位から守るために、海岸近くの電気ポンプの高さを8インチ(約20cm)上げることだけで対応していたようであると、監督機関は言う。
 「私たちは前例に基づいて初めて動くことができるのですが、その前例がなかったのです」と、1990年代後半に福島第1の所長を務めていた元東京電力原子力技師の Tsuneo Futami 氏は言う。「私が同発電所の代表を務めていたとき、津波についての思いが私の頭をよぎることはありませんでした」
 東京電力から日本の専門機関、原子力産業協会に提供されたデータによると、津波ほど重要な因子とはならなかったが、今回の地震が福島の地を揺らした強さもまた同発電所に採用された基準を超えるものであったという。今わかっていることによれば、今回の津波が現在の核危機を引き起こしたのは、子炉冷却システムに電力を供給するのに必要な補助発電機が浸水したことによると考えられている。
 日本はその卓越した技術的専門知識で知られている。しかし、数十年間、日本の官僚主義と一部の工業技術体制は原子力発電所を守るための古い科学的指針に固執しており、これまでの地震や津波の記録に過度に依存するあまり、1970年代以降の地震学や危機評価における進歩を生かそうとしてこなかった。
 一部の専門家には、福島における津波の驚異に対する過小評価から、日本の北西海岸にある東京電力の柏崎原子力発電所を襲った2007年7月の地震(そこでは津波はなかった)が腹立たしく思い起こされている。柏崎の地は、発電所の設計上想定された最大震度の2.5倍揺れたのである。
 「柏崎事故のあと、あの時点で数年の準備期間があったわけですが、今回福島で同じ事態に遭遇することになってしまったのです」と、カリフォルニアで活動している地震危機評価の専門家 Peter Yaney 氏は言う。彼は Nuclear Regulatory Commission(原子力規制委員会)とエネルギー省の代表として福島を調査しているところである。
 福島が設計されたとき、地震学と、原子力発電所の土木建築工学との接合がいまだ未熟だったと、日本政府の委員会の一員だった原子力発電所の耐震の専門家 Hiroyuki Aoyama 氏(78才)は言う。技術者たちは多くの当て推量を行い、原子力発電所内部の構造は、一般の建物の3倍の耐震性を持つべきであるという基準を採用していた。
 「3倍という数字の決定には何の根拠もありませんでした」と、東京大学の土木建築工学名誉教授である Aoyama 氏は言う。右手の親指と人差し指でピストルの格好をしながら、「腰からピストルを抜いてしまっていた(特に考えることなく行動していたの意味)のです」と付け加えた。「目標が曖昧だったのです」

Evolution of Designs  設計の進化

 日本の技術者たちが40年以上前に最初の原子力発電所の設計にとりかかったとき、将来のエネルギーへの投資物件をどのようにして守るかについての手がかりとして、過去を頼りにした。数世紀におよぶ公文書には津波がどのように海辺の村を水浸しにしたかについての情報が含まれており、これによって技術者らは津波の高さを推測した。
 それによって、記録上最も高かった津波より高く防潮堤が築かれた。日本で4番目に古い核施設である福島第1では、東京電力の関係者は、参考値として当時の津波の高さを採用した。それは、1960年にチリで起こったマグニチュード9.5の地震によってもたらされた10.5フィート(3.2 m)の高さである。日本の原子力監督機関である原子力安全保安院の耐震の専門家 Marsaru Kobayashi 氏によると、同発電所が建設された13フィート(約4 m)の高さの断崖は天然の防潮堤として機能するだろうとされたという。
 18フィート(5.5 m)の高さを持つ沖合いに設けられた防波堤は同社の津波対策の一環として建設されたものであると、東京電力の広報担当者 Jun Oshima 氏は言う。しかし、(主として船舶を避難させる目的の)この防波堤は台風には対抗できるが、津波には効果がないと監督当局は指摘していたと、Kobayashi 氏は言う。
 数十年間、津波に対する備えは、日本の電力会社や原子力監督機関にとって優先事項にはなっていなかった。つい2週間前まで原子力発電所を襲うような津波が存在していなかったという事実によって彼らは安心していたと、専門家たちは指摘する。津波をシミュレーションすることが津波の危険性を評価する新しい手段をとなっていたが、原子力発電所の運営担当者たちは、老朽化した施設にほとんど手を加えることはなく、原子力監督機関も彼らに要求しなかった。
 技術者たちは地震についても同じアプローチをとった。福島発電所の設計に関して、1600年からの公文書によれば、現在の福島県の沖合いの最大の地震でもマグニチュード 7.0~8.0であったと記録されていたと、Kobayashi 氏は言う。
 「私たちはそれを専門家任せにしました」と、この発電所の建設を監督した元東京電力副社長の Masatoshi Toyoda 氏は言う。そして、「どれだけ多くの墓石が倒れたかといったような情報を求めて古い文書を調べていたのです」と付け加えた。
 結局、政府委員会の専門家たちがより厳しい建築基準を強く求め始め、1981年までに、ガイドラインでは地震への言及はなされるようになっていたが、津波には触れられていなかった。1995年の壊滅的な神戸の地震のあと、その圧力が急速に高まっていったと、1990年代後半の日本の原子力安全委員会の副議長だった Kenji Sumita 氏は言う。
 十数ヶ所の原発の建設を完成させることを中心に考えてきた電力会社は、より厳しい基準を採用することに難色を示し、原子力安全委員会におけるこの問題についての会合に代表を送ろうとしなかったと、Sumita 氏は言う。
 「他のグループは直ちに人を出していました」と、Sumita 氏は学術関連や建設業界の専門家たちを指してそう述べた。「電力会社はフットワークが悪く参加しなかったのです」
 一方、地震の科学や危機評価は世界中で進歩していった。米国原子力規制委員会がそれら新しい手法を十分に採用していないことで厳しく批判されてきたが、同機関は、発電所ごとに新しい見直しを行い、それらの多くを採用したと、原子力発電所の設計と地震の危険性を専門にしている Simpson Gumpertz & Heger 社の構造工学技術者 Greg S Hardy 氏は言う。
 文化的、歴史的、あるいは単に財政的など、どんな理由かわからないが、原子力発電所で働いている日本の技術者たちは、記録に基づいて最大の地震と彼らが信じるものを想定し続けてきた。
 しかし、そういった手法は、これまで発覚していなかった欠陥や、まれではあるがとてつもなく巨大な地震のような重大な不確実性を考慮に入れてなかったことになる。米国電力研究所が出資する研究の一環として2007年の地震後に柏崎を訪れた Hardy 氏はそう語っている。
 「日本は遅れととってしまったのです」と、Hardy 氏は言う。「これが最大の地震だったと宣言してしまった時点で、新しいデータとして入ってくるものを再評価することが難しくなってしまいました」
 この分野で、『蓋然論的』あるいは未知のものを考慮に入れることと対極にある、『決定論的』と表現されるこのアプローチが日本ではどうしたわけか続いてきたと Noboru Nakao 氏は言う。彼は40年間日立の原子力技術者を勤め、沸騰水型原子炉のオペレーターのトレーニング・センターの所長を務めたコンサルタントである。
 「日本の安全規則は全般に決定論的です。なぜなら、蓋然論的手法は大変困難だからです」と、Nkao 氏は言い、「しかし米国にははるかに多くの危機評価法があります」と付け加えた。
 津波の科学もまた進歩している。その大きさについての測定ははるかに向上しており、起こるたびごとに統計データが大量に蓄積され、コンピューター計算によって様々な大きさの地震によってどのような種類の津波が生ずるかを予測できるようになっている。United States Geological Survey(米国地質調査所)の Eric Geist 氏、および University of Southern California の土木工学教授 Costas Synolakis 氏による第一線の津波専門家による2編の別々の研究論文によると、マグニチュード 7.5 程度の低さの地震でも、福島原発を護っている13フィートの防潮堤を十分越える津波を生じうることが示されている。
 Synolakis 氏は津波の危険性に対する日本の過小評価を、『大災害につながった愚かな誤りの連鎖』と呼び、関連するデータがこの領域の誰にも見過ごされてしまうことは実質的にありえないことであると述べている。

Underestimating Risks 危険性を過小評価する

 津波への明確な言及は2006年に制定された日本の原子力発電所の新たな基準に初めて登場した。
 「2006年のガイドラインでは地震に付随する現象として津波について言及しており、電力会社に対してそれを考慮するよう求めています」と、構造工学の専門家である Aoyama 氏は言う。
 そのリスクは2002年にいくらか注目を集めている。当時政府の諮問団体である日本土木学会は原子力オペレーターに向け津波のガイドラインを発表したのである。
 教授や東京電力など電力会社からの代表をはじめとする同学会の研究グループは、断層や各地の地形についての新しい研究や過去の津波のデータを詳細に調べ、同ガイドラインを作成したと、同研究グループのあるメンバーは述べている。彼は微妙な立場にあることから今回匿名で語っている。
 同メンバーによるとこの研究グループは最近それらの基準に対して改定を議論していたところだったという。今回の津波のちょうど一週間前に開催された同グループの最後の会合では、議事録によると、原子力発電所に対する津波による損害を予測するために3次元シミュレーションの有用性が研究者たちによって議論されていたという。「私たちは過去のデータだけでなくそれ以外のものも考慮しました」と、同メンバーは言う。「私たちは想定を試みました。私たちの目的は不確定なことを減らすことだったのです」
 恐らく、日本以外の科学者たちによるもっとも厳しい見方は、たとえ記録された津波という狭いレンズを通して見ていたとしても、福島の津波に対する防護対策が容易に乗り越えられてしまう可能性が認識されているべきだったというものだ。科学研究や当時の報道によると、1993年、マグニチュード7.8 の地震は日本の西側の海岸に30フィートを越える高さの津波を生じ、広く徹底的な破壊を繰り広げた。
 Yanev 氏が書いた報告によると、大きな被害を受けた奥尻島では、「津波によって最も被害の大きかった人口集中地域の大部分は15フィートにもおよぶ対津波壁で囲まれていた」という。そこでは福島の防潮堤よりさらに1~2フィート高く作られていた。
 しかし、18年後に起こるだろうことの前例となったこの奥尻の壁は総じて津波の効果を和らげていたとしても、結局それ以上の波には無効であったと、地震の危険評価の専門家である Yanev 氏は言う。
 そして、遠い過去であっても、新しい警告として役割を果たしてくれていたかもしれない新しい情報をもたらしていたのである。
 福島第1が稼働して20年経ったとき、古い記録を詳細に調べていた研究者たちは Jogan と呼ばれる地震(貞観地震)が同発電所のすぐ北の地域で内陸約1マイルまで達した津波が実際に起こっていたものと推測した。その津波は西暦869年に襲っていたのである。

東京電力による『計画停電』は
さらなる混乱を招いている。
原子力発電がなくなったら
これだけ大変なのですよ、と
国民に知らしめようとの意図すら
感じてしまう。
原子力がそれほど必要だったのであれば
とことん慎重な対応をとっておくべきだったのでは
ないだろうか?(遅きに失してしまっているが…)

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『チェルノブイリ』を活かせるのか?

2011-03-22 22:25:32 | 科学

政府は21日、
暫定規制値を越える放射性物質が
検出されたとの理由から、
福島、茨城、栃木、群馬各県のホウレン草とカキナ、
および福島県産の原乳の出荷を制限するよう指示した。
というわけで、これまでいいイメージのホウレン草が
今回悪者にされてしまった。
ホウレン草は地面に大きく葉を広げて生育するため
空中の放射性物質が付着しやすいということらしい。
それなら他にも影響を受けやすい葉物野菜が
ありそうにも思うのだが…
さらに今後の風評被害も心配である。
また牛乳に関しては、放射性物質に汚染された牧草を
牛が食べたことによるのだということだが、
そうなると乳牛に限らず牛の健康も心配になってくる。
今回の飲食物の暫定規制値は、
どの程度放射線性物質が臓器に取り込まれると
健康に影響を及ぼすかを厳密に計算して決められた
政府の原子力安全委員会の摂取制限の指標値に
基づくものであるという。
しかし、実は、摂取した食品中の放射性物質が
人にどういった影響を及ぼすかの厳密なデータは
専門家もいまだ持ち合わせていないというのが
現状らしい。

3月21日付 CNN.com

Effect of radiation on humans still harbors mysteries 人体への放射線の影響にはいまだ不明な点がある
By Thom Patterson

Chernobyl

チェルノブイリや広島・長崎の原爆からしか放射線の影響についての確定的な情報が得られていない。

 ホウレン草や牛乳に検出された放射能をめぐっての日本の懸念については、人体に及ぼすその影響についてほとんど知られていないことを考慮すると、疑問の浮上も禁じ得ない。
 いくつかの実験が動物で行われているものの、汚染された食物を摂取することが即時的および長期的に人体にどのような影響を及ぼすかについての情報はこれまでほとんど得られていない。
 その主な理由は研究対象が少ないことであり、1945年の日本の長崎・広島の原爆と、1986年、当時ソ連の一部だったウクライナのチェルノブイリ原子力発電所の事故で被曝した人たちに限定されている。
 しかし今、日本は答えを求めているところである。それはすべて、福島第一原子力発電所の6基の原子炉に混乱をもたらし、量不明な放射線活性を持つ水蒸気の放出につながった3月11日の巨大地震とそれに続く津波の波及効果によるものだ。
 3月20日、日本政府当局は、放射線活性を持つセシウム137とヨード131の放射性同位元素が検出された原乳とホウレン草の出荷を制限した。ホウレン草と牛乳に加え、原発近くの水道水からきわめて微量の放射性ヨードが検出された。
 ヒューストンにある MD Anderson Cancer Center の腫瘍学教授 James Cox 博士は、それら産物に検出された放射線は人体に対して即時的な危険は“存在せず”、長期的な危険も“きわめて低い”と考えていると言う。
 しかし、「食物として摂取される放射線量は実際のところほとんど把握されていない」という現状を彼は認めている。
 第2次世界大戦後日本で研究が行われているが、今日の専門家たちは、原爆投下後、放射能で汚染された食物の摂取が人にどのように影響を及ぼしたかについて明確な結論を出すのに慎重である。
 しかしチェルノブイリの事故は、放射線が実際に存在していた事実はもちろん、かつてのソビエト連邦の破壊した原子力発電所の内部および周辺の人たちに対して、通常放射能汚染された人に処方されるヨード製剤が総じて有用ではなかったという事実などから、この種の研究において現実の実験室となっていた。
 その事例は現在の危機的事態と関連性がある。というのも、日本におけるホウレン草と原乳のサンプルで検出されたヨウ素131同位元素は、チェルノブイリの場合と同様、原子炉の副産物だからである。
 ヨウ素131は放射性であることから通常のヨウ素とは異なる。しかしヨウ素131の特性は他のタイプと同じと考えられ、甲状腺は容易にヨウ素を取り込むことから、人の甲状腺に集積することになると、長崎・広島の被爆者に対する放射線の影響を専門に研究している Cox 氏は言う。
 甲状腺は食物代謝や体温調節などの働きを持つきわめて重要なホルモンを産生する。ヨウ素131を集積させないために、医師は通常、ヨウ素製剤(訳註:ヨウ化カリウム)を処方する。これが甲状腺を飽和させ、入り込む余地をなくしてヨウ素131を身体から排出させる。
 Cox 氏によると、多くの子供たちを含め住民たちはチェルノブイリが放出したヨウ素131で汚染された牛乳を飲んだ。そして、放射線が他の種類の食物も同様に汚染したことは明らかであるが、この牛乳の消費が癌発症の一因となっていたものと専門家は考えている。
 ヨウ素製剤の入手困難は今それほど問題となっていない。それらの薬剤にはアレルギー性の皮膚反応や腎障害などの有害な副作用の可能性はあるが、福島第一原子力発電所近くの住民が予防的にこれらの薬剤を内服しておくのは悪い考えではないかもしれないと Cox 氏は言う。
 「慎重に検討すべきことかもしれません、特に福島周辺の子供たちに対しては」と、彼は言う。
 放射性同位元素が半分減衰するのに要する時間、すなわち半減期はヨウ素では8日間であるが、それは、8日間で放射能レベルの半分が消失することを意味する。一方、セシウム137の半減期は約30年間であり、はるかに長い期間持続する。しかし、食物として人に摂取された場合、同位元素の中でもとりわけセシウム137の影響については知られていない。
 (食物や水などを介さない)直接的放射線被曝がきわめて有害であることは専門家たちによく知られている。大線量の空気中浮遊曝露は数日程度の早期に死をもたらす。米国疾病対策予防センター(CDC)によれば、低線量の被曝は晩発性に癌が発生するリスクを高める結果につながるかもしれないという。
 CDC によると、一般に、放射線被曝による健康被害は皮膚の発赤から発癌、死亡に至るまで幅があるという。障害は、放射線の種類、身体の放射線吸収量、放射線被曝の仕方、被曝時間の長さなどに依存する。
 放射能汚染食物の摂取については、一般の人たちに比べて、そういった物を飲食した人では発癌率が高いことが研究で示されていると Cox 氏は言う。しかし、明確な結論を出すことは困難である。というのも、たとえばチェルノブイリ近郊で汚染された牛乳を飲んだ可能性のある人たちは、別の手段で同様に放射線に被曝したかもしれないからである。
 放射能汚染食物の摂取が、その祖先へと受け継がれる可能性のある遺伝的変異を生ずるという証拠もほとんどない。
 遺伝的危険性が存在するかもしれないという想定は常にあるが、人では示されてはいないのです」と、Cox 氏は言う。

基準値を越える食品を数日間食べたとしても
今も将来も健康に影響はない、と政府は説明する。
また一年間食べ続けても
CT一回分より低い被曝量なので心配ない、とか。
しかし食品による内部被曝で気になるのは、
やはり低線量の長期被曝による発癌や遺伝子異常。
ただし、これに関しては本文中にもあるように
科学的に明確に証明されているわけではない。
だからといって、証明されていないから心配ない、
というわけにもいかず、
却って余計に不安を煽ってしまう結果に
つながってしまうのかも…。

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