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クルマを走らせていた。その時、私は長年友人たちとやっていたバンドをやめて、あるミュージシャンのボーヤのような形で、手伝いをしながら、時々ほかのバイトをしたり、昼間からだらだらとデートをしたりと、適当な暮らしをしていた。1989年。時はバブルの絶頂であったが、ぼくには何の恩恵もなかった。
秋風がやや涼しくなっていた昼下がり、西へ向かってアクセルを踏んではブレーキを踏むという渋滞。セドリックのバンに師匠が弾くベースを満載しながら、さらに当時一千万ぐらいしたフェアライトを積んで、のろのろと進んでいた。
これから、どうなるのだろう、とは考えなかった。でも、この後、音楽をやっていけるかどうか、不安にはなっていた。カーラジオは、ヒステリックな音楽をひっきりなしに流していた。
退屈まぎれにチューニングを変えたとき、ラジオから流れてきたギターのリフに、頭をガツンと殴られた気がした。Mixed Emotions。バンド全員で声を合わせるサビ。
You are not only one with mixed emotions
いろんな気持ちを抱えているのは、お前だけじゃないんだぜ。ミックは言ってくれた。キースはご機嫌なサウンドをドライブしてくれた。
今でも覚えている。あの時、ぼくはこのままの刹那的で楽しいだけの、暮らしをやめようと思った。自分を生かせる仕事をし、自分の好きな音楽を同時にやっていこうと思ったのだ。
ストーンズ。ありがとう、俺は今も音楽を、ロックをやっているよ。あんた達のおかげだ。
Shine a lightを見て、思い出したのだった。