ユナイテッド93 UNITED93
監督:ポール・グリーングラス
出演:コーリイ・ジョンソン、デニー・ディロン、タラ・ヒューゴ、サイモン・ポーランド
(c)2006 UNIVERSAL STUDIOS
夏休みの映画状況は実は大人にとっては劣悪であって、なぜならポケモンからはじまって、いろんな子供用映画でスクリーンの半分近くが占拠されている故。いや、子ども向け映画そのものを否定する基はないのだが、夜中にひっそりと孤独を託ちながら多くの同胞たちとそれぞれの闇を共有する、という秘めやかな楽しみは、夏休みには望むべくもない。
で、とぎれとぎれの夏休みであるとはいえ、珍しく時間が捻出できそうなのに、見たい映画はあらかた見てしまっており、どれにしようか、というよりどれがマシかというネガティブなチョイスになってしまうのは、本当に珍しきコトであるかな、と。お盆ならではね。
で、ちょっと食指が動いたのが、この911連続テロの時の飛行機の様子を描いたこの映画だったのだ。
正直言って評価が難しい映画ではある。実に淡々とその時の状況を描いている。有名な役者さんは僕が知る限りいない。まるで本当に現実を見ているようである。絵に描いたような美しい男女が結ばれるとか、小説にしかない夢物語を現実化する、とか映画にはいろんなクリエイティブな機能があるわけだが、実際に起きた事実をまるで本当のように淡々と描く、というのも映画の大事な機能なのだな、ということを痛感する。
端的に言ってこれはいい映画である。そして実際の911の時の管制官たちや軍が、いかに混乱の極みに達したのか、飛行機の中はどれだけ悲惨な状況になったのか、ということがリアルに伝わってくる。風化させないためには大切なことだ。
しかし、それをしりつつ、敢えて言おう。制作者は、この映画を通して何が言いたいのか、どんなメッセージを発しているか、ということがあまりにわからない。確かにこれは事実であって、以下に迫真の仮事実を提示するか、に賭けたのはわかる、そしてこの事件がどれだけ悲惨だったのかもわかる。しかし表現者として、メッセージがニュートラルに終始するのは、見ている方としては欲求不満がたまる。どんな形でもいいから、制作者たちの思いをどこかに映すべきだっただろうな。ということで評価は激辛ですが、<★★☆☆☆>とさせてもらいます。
とはいえ、この映画は必見である、ということも言えるのであって、911の時の一つの飛行機ではこういうコトが起きていたということは知っておくべきでしょう。実に深い経験を与えてくれる映画です。
さて、以下がウェブからの映画評です。
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2001年9月11日― 午前8時42分、ニューヨークからサンフランシスコに向けてユナイテッド93便が飛び発った。その直後、アメリカン11便がワールド・トレード・センター北棟に、続いてユナイテッド175便が南棟に激突した。その時はまだ、ユナイテッド93便の乗客乗員は、穏やかなフライトを続けていた…。
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