ミスター・ピーノの【見るが勝ち通信】その35
イケヤの知人のピーノさんが
いつも私を含めたご友人の方に送られているメルマガのお裾分けシリーズ。
『ミスター・ピーノの【見るが勝ち通信】』です。
海外滞在が長く、外国語にもご堪能な方です(日本人です)が、
一週間程度で物凄い量のものを見る、読む、聴く。とにかく私もビックリ。
私も見習いたいと思っております。
ピーノさん、今年一年とてもおせわになりました。
映画や本を選ぶときの最大の指針にさせていただきました。
それにしても、スゴイ量ですね。
今回は今年のベスト3も載ってます。
ぜひご覧ください。
読者の皆様、感想等ございましたら、
私が責任を持ってお伝えしますので
ぜひコメント欄にお願いします。
では、レッツゴー。
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おはようございます。 今年最後のメールです。
◇今年は「情報の電子化」に伴うさまざまなできごとが起きました。「iPad」
や「iPhone4」などハード(デジタル機器)の発売と、「twitter」や「Facebook」、
「YouTube」(尖閣列島の中国漁船追突)や、「WikiLeaks」(米国務省の極秘
文書の漏洩)などを通して拡大したIT世界。来年は「地デジ化」も控えており、
数年後にはきっとアナログの電話回線は、すべて光ファイバーに置き換わる
でしょうね。「高速化」とデータベース(クラウド)のインフラ整備で多種多様な
サービスが実現されるのもすぐで、情報がさらに飛び交う世界になりますね。
◇マドリッドでは、大学都市の裏、北西のほとんど市の境界線に近いところ
に5年間(1988~1993)住み、週末になると、羊飼いが30、40頭の羊を引き
連れて牧草を食べに来てました。14階建てのマンションの裏手が牧草地で、
「ここが市内?」と思えないのどかな場所でした。 この駐在時期日本では、
バブル真っ盛り、欧州ではベルリンの壁やソ連の崩壊が起き、スペインでは
湾岸戦争の影響(米軍駐留)を受け、バルセロナ・オリンピックやセビージャ
(Sevilla)万博を開催。今思うと激動の時代でなかなか貴重な体験でした。
◇スペインのブラック・ジョークで、ある日本人ツーリストを主人公にした話。
闘牛場の裏手にあるレストランに入った彼はスペイン語が分からないため、
隣の席で客が食べている“肉ダンゴ風”のお皿を示して、「アレを!」と注文。
給仕が顔を横に振り「No, No.本日は売り切れ」、カレンダーを指差し、「明日
ならあるかも・・・」と言い旅行者は翌日再度その店を訪問。「アレある?」と
聞くと「Si, Si.(Yes, Yes)」 しばらく待ってお皿に盛られた料理を見て彼は、
「昨日に比べて随分小さい!」と怒ったところ、給仕はひと言、「No siempre
muere el toro.」(必ずしも牛が死ぬワケじゃない)・・・ではその料理は(笑)
◇2010年個人的なベストは、
【コンサート】
①Carole King & James Taylor
②clammbon
③山下達郎
【演劇】
①2番目、或いは3番目
②図書館的人生Vol.3
③異邦人
【映画】
①The Hurt Locker(ハートロッカー)
②El secreto de sus ojos(瞳の奥の秘密)
③Le Concert(オーケストラ!)
【落語】
①立川志の輔
②春風亭昇太
③柳家花緑 といったところです。
【演劇】
■ラッパ屋 「YMO~やっとモテたオヤジ」(紀伊國屋ホール、10/12/25
★★★) 56歳バツイチのサラリーマンに、15歳年下の彼女ができて起きる
ドタバタ喜劇。 社内の派閥争いに距離をおきながら同期と酒を飲み交わし、
ひょんなことから同僚の派遣社員の女性と一夜を過ごしてしまうというお話。
別れた前妻が再婚予定の彼氏を連れてきたり、母親の再婚に反対する娘
の大学の先輩が実は・・・というオチで、あり得ない設定を笑いに変えます。
“サエない”中年男の願望と錯覚、悲哀とホンネが見え隠れしている結末。
公式HP ⇒ http://homepage3.nifty.com/rappaya/036.htm■猫のホテル 「イメチェン」(ザ・スズナリ、10/12/25 ★★★★)
主宰する千葉雅子:作、福原充則が脚色・演出。今回2年半ぶりに劇団員
全員(10名)が揃っての舞台。 2001年初演の再演。“田中角栄”が主人公
です。 “越山会の女王”らしき愛人と二人三脚で、地方の土建屋オーナー
から議員になっていく姿が描かれ、地元メディアとの癒着、娘との葛藤など
虚実入り混じった内容で思いっきり笑わせながら、ここでは“敗者の論理”
が貫かれており“祇園精舎の鐘の声”(栄枯盛衰)の世界が描かれてます。
公式HP ⇒ http://www.nekohote.com/next_top.html【映画】
■相棒 劇場版 II (★★★☆)
警視庁本部(桜田門)内で起こった人質籠城事件が発端。警視庁(東京都
警察)幹部の行動に、警察庁(警視庁を管轄する上部組織)が“横ヤリ”を
入れてくるお話。最後に「エッ、それはないでしょ」という意外な展開が起き
ます。 結末まで一気に見せるのは脚本家の力です。派手さはないですが
演技力のある俳優陣(小澤征悦・國村隼・岸部一徳)を揃えた結果でもあり
主人公二人(水谷豊と及川光博)をうまくサポートしています。 EX(テレ朝)
の社風を感じる内容で、エンタメを目指すCX(フジ)との違いが面白いです。
公式HP(音声注意) ⇒ http://www.aibou-movie.jp/
■ゴダール・ソシアリスム <原題 Film socialisme>(★★★)
難解です。 全部で第三章に分かれており、「地中海クルーズの豪華客船」
「フランスの田舎のガソリンスタンド」「人類の歴史」を舞台として、ランダム
に並べられた映像と会話で構成されています。「こんなこと」や「あんなこと」
があったという提示で、チャップリンやヒトラー、スペイン内戦の映像が写し
出され、エジプト、ギリシャなどの風景を通して、今の欧州の姿を語る手法
は、すごく斬新というより、かつて見た断片の貼り合わせ(コラージュ)です。
公式HP ⇒ http://www.bowjapan.com/socialisme/
【Book】
■柳瀬尚紀 「日本語ほど面白いものはない」(新潮社、10/11/25 ★★★★)
ロアルド・ダール作品(「チョコレート工場の秘密」)の翻訳で知られる著者
が、島根県の過疎地の小学6年生16名に行った特別授業をまとめたもの。
言葉や漢字の成り立ちから、「言葉は生き物だから大切にていねいに使っ
てあげなくてはいけない」という注意まで、言葉や漢字の面白さを子どもに
語った内容で授業後の彼らの感想文まで掲載してます。“The memories
of childhood have no order, and no end.”という、ディラン・トマスの言葉
を引用して子どもたちの無限の可能性に触れた講義は楽しく面白いです。
http://www.shinchosha.co.jp/book/303952/
■石川輝吉 「ニーチェはこう考えた」(ちくまプリマー新書、10/11/10 ★★★☆)
「愛されたがる。~愛されたいという要求は、ウヌボレの最たるものである」
というニーチェの警句を序章で紹介。 ショーペンハウアーとワーグナーの
影響を受けた青年期、ボロボロになり「不信」(ニヒリズム)を通過して生を
肯定、元気になる哲学を目指そうとした三つの時期に分割。 彼の晩年に
書かれた本(「ツァラトゥストラ」「善悪の彼岸」他)が“自費出版”だったこと
を初めて知りました。ニーチェの人生と哲学を分かりやすく解説してます。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480688507/【オマケ、今週の気になった言葉】
■「本」という文字は、「木」という文字に横棒が一本ついています。この
横棒は木の根もとを表します。本は、言葉を手に入れて文字を手にいれ
た人間の根もとになってくれるんですね。
■「美」は「羊」+「大」。中国では羊は太ったものが見目良い<みめよい:
顔・形がすぐれている、器量がいい>とされていたことから、「美」という
文字ができた。 (by 柳瀬尚紀、「日本語ほど面白いものはない」より)
「本というのは、まずこっちがちゃんと相手にしなければいけないんです。
もちろん楽しいんだけれども、こっちが向かっていくだけの価値があるもの
が本です。」と言い切る柳瀬氏。 因みに、結末の「末」という字は、「木」の
上に横棒が一本ついていて、この横棒は「こずえ(梢)」を表し、木の枝の
先っぽのことなんですね。 “本末転倒”という言葉は、木の根元と枝葉が
逆転してしまい、「大事なこととつまらないこととを逆さまにしてしまう」こと
なんですね。言葉と漢字って普段、日常的に何気なく使っているんだけど、
実は奥が深いというか、自分の「無知さ加減」を改めて知る~結果に(汗)
では。 良いお年をお迎えください。