珍しい映画で、音楽ドキュメンタリーだ。
フライングキッズの浜崎貴司、、まごころブラザースの桜井秀俊、そして大沢伸一。
その3人に曲を作ってもらうドキュメンタリーで、そこで40歳代とはなにか
40歳代の人間たちは何を考えているかを描くという、ユニークなドキュメント。
新宿でみたが、観客は4人、しかも二人(カップル)は途中で帰ってしまった。
たしかにドキュメンタリーとして面白いかというと、面白くないかもしれないし、
結論が出たわけでもなんでもない、放り出されたような映画であった。
三人は無謀な企画に戸惑いながら、音楽を作るが、一人はまとめようと、一人は戸惑ったままで、一人は怒りをあらわにする、そのまるでむき出しな感じが、痛かったし、でもそれがバンドだし、音楽だなと思った。
ビートルズのレットイットビーという映画は、まさにバンドが崩壊しつつあるときの、バンドのギスギスした、気持ちがささくれ立った様子を描いていて、本当に見ていても辛く心が痛いが、そういう瞬間がたくさんある映画。或る意味で出色だと思う。名作とは言えないが。
40代の抱える要素を、
浜崎、桜井、大沢氏はそれぞれシンボライズしているようにも思えた。
桜井氏。企画の意図をくみ、なんとかまとめて、苦労もして、形にしてあげようとする、非常に善な、仕事のスタンス。
大沢氏は、その対極で、アーティスティックで、企画そのものが乱暴だし、表面的に企画に、そして各人の持ちネタの規格に沿った音楽を作る、ことへの怒り。
浜崎は、ある意味自然で、戸惑ったまま、自分のロールを果たしつつ、大沢氏にも桜井氏にもシンパシーを示す。
これは、音楽人に限らず40代の人間、が抱える、葛藤する3つの要素を体現している。
つまり、一番思ったのは、40歳代半ばである自分のことだ。
論語では「不惑」というが、いまの40は、正反対だ少なくとも俺は。
たぶん「惑うな」と言われるぐらいに惑う年代なのではないか。
家庭を持ち、仕事では中堅となり、子供は学校にいっている。
でも、いまいい家庭を作っているか、家族を幸せにしているか、
仕事で何事かを成しているか。
自問すればするほど、何もしていないのではないかという無力感に襲われる。
俺は何事もなすことなく、家族を幸せにすることもなく、日々を緊急事態に追われて走り続け、気がつけば40代を終えてしまうのではないか。