「(ジャズにおいて)演奏時にどのくらい周りを聞くべきか」
演奏時にできるだけ落ちつく、という話しをしたら少し反響があったので、追補します。
落ちつく理由は、周りの音をよく聞くためです。
ジャズの場合、共演者の演奏を聴くことが極めて重要です。
なぜなら演奏者同士の会話こそがジャズのアドリブの根幹だから。
それがアドリブでなく、たとえテーマであっても、どんなリズムなのか、ベースラインなのか、どんな和声なのかでニュアンスが変わりますから、はやり周りの音をよく聴く必要があります。
とはいえ、プロの領域に至っていない(プロでも?)多くの楽器プレーヤーは私も含めて自分の演奏で必至になってしまいます。そうなると、自分のことばかりに注意力が集中し、周りの演奏は聞こえてきません。
またあらかじめ書いてきたソロや、だれかのコピーフレーズ、手持ちの得意のリックやストックフレーズを出しているときも、ほかの人が何を言っているのかに構わずしゃべっていることになるので、これも会話にはなりません。
では、会話として成立する演奏をするためには、どのくらい周りを聞いているべきなのか。
私のトランペットの師匠の原朋直さんに、演奏中どのくらい周りの音を聴いているのでしょうか、ときいたことがありました。
その答えは衝撃的でした。
「お客さんと同じかそれ以上聞いていること」
だったのです。
では演奏に使う能力は?
と言うとその残りの部分で演奏するということでした。
全力で周りの音を聴いていたら、自分の演奏はできませんし、たとえば演奏5割、聞くのが5割でやったとしても、その時の演奏は一人で練習しているときの半分にしかなりません。
ということは、まず音楽に関わる能力自体をものすごく上げる必要があります。そしてお客さんと同じ精度の能力で音楽を聴き、その残りの能力を演奏に割く、つまり「演奏について何も考えなくてもできる」レベルで演奏したとして、その演奏力が、お客様がお金を払って満足できるレベルになる必要があります。
最初はそれはありえないと思っていました。
しかし尊敬する多くのジャズミュージシャンの演奏(レジェンドでも身近なミュージシャンでも)が演奏しているところを観ると、特に優れたジャズミュージシャンの演奏を聞いてみると、実際にそのようにして演奏してるように見えました。
そこまでは、どんだけ遠い道なのか。