最近のいろんなライブを見て思うのは、コンテンポラリーなギタリストかどうかは、ディレイあるいはルーパーをどの程度使いこなしているかによると思う。例えば非常に素晴らしいギタリストであっても、ベテラン、ありいはご同輩ぐらいのギタリストの場合、ディレイはあくまでリバーブ的な使い方をしている。
しかし、例えば加藤一平さん、市野元彦さん、ビル・フリッセルや最近注目しているアメリカの女性ギタリストMary Halvorson、あるいは音響系のロックギタリストなどのコンテンポラリーなギタリストは有名無名に方はかかわらず、ディレイなどを非常に上手に、かつ面白い使い方をしながら本質的な意味で自分の演奏に取り入れている。
考えてみれば、ディレイと言うエフェクターはコーラスやディストーションのように自分の演奏している音に効果を付加するタイプのエフェクターとは実は違うのだ。ディレイとは、自分がした演奏をリピートする効果であるが、実際はもう一つの発音体であり、もう一つの楽器だ。
自分の演奏とは時間的にずらしたり、あるいは音程的にずらしたりしながらもう一つの発音体として扱うことで、もう1人の自分のような演奏を繰り広げることができるのだ。これは単なる室外リバーブやエコーとは全く違う発想の演奏である。
先般の岸本賢治さんのライブで見たギターの演奏は、ギターソロの時、気づかないうちに伴奏に自分のコードワークをルーパーで使っていた。後で思えばソロの冒頭かトランペットのアカンパニメントの時にワンコーラスサンプリングしたのだろうが、すべてが流れるように音楽的だったのでどこでサンプリングをしてたのかわからなかったし、ギターソロのときバッキングでギターが聞こえてきた時は、だれか別のギタリストがいるのかと周りを見回してしまったぐらい自然に使いこなしていた。素晴らしいルーパーの使いこなしだった。
↑岸本賢治さん
さらに、これはギタリストだけに限らない。
エレクトリックバイオリンやベーシストたちの中には、ギタリスト視点では、エフェクターの使いこなしが心もとないというか足元が危ないように見える方もいらっしゃるが、最近はボーカルあるいはマルチインストロメンタリストの人たちが、ディレイやルーパーを使って実に上手で現代的なパフォーマンスを見せてくれることが多い。
先般ホンブログで記事を書いたヘッドホンライブでの霧島さんのパフォーマンスもそうだった。コーラスは自分で多重録音し、そしてそれをバックに演奏をする。音楽に詳しい友人に教えてもらった天才マルチ・ミュージシャン、ジェイコブ・コリアーなどは、もともと1人でマルチの楽器を演奏して歌を歌い目の前で曲を作り上げていくいわゆるルーパーのマスターのとしてのパフォーマンスを行っているようだ。これも実に新しい一人バンドのスタイルだ。
いずれにしても、事例やルーパーの使いこなしが、これからのコンテンポラリーのミュージシャンの1つの試金石であり、大きな武器となるに違いないと感じている。
というわけでライン6のディレイも買わなくてはならない。長い言い訳だ。