滅多にガラス磨きはしないが、年末には中掃除をしてお茶を濁した。
それでも常より、ガラス窓のくもりは薄くなり、見通しがよくなっていた。
外に出ると、窓の下に鳩がうずくまっている。生きてはいるが逃げる気配はない。
捕まえると、チョット抗ったが大人しくされるままにしている。
ガラスに衝突して、意識が朦朧としているように見受けられたので、
他の動物達に見つからないように、植木の陰にそっと置く。
ハトは、農家にとってはあまり嬉しくない存在である。
畑に植えた豆の種を掘ったり、若芽をついばんだりもする。
手に掴んだハトの温かさ、艶々した羽の感覚、
頭から首筋にかけての微妙な色合いを肌で感じると、命が愛おしくなる。
夕方は、寒く雪まで舞い始めたので、まだうずくまっていたら
凍死するのではないかと心配になり覗いたら、居ない。
周囲を広く探してみたが、影も形もない。正気になり元気になって、飛び立ったことと思う。