『藤子不二雄Aファンはここにいる』発売

 11日に、「藤子不二雄ファンはここにいる/koikesanの日記」のkoikesanさんこと、稲垣高広さんによる藤子A作品評論本『藤子不二雄Aファンはここにいる Book1 座談会編』が、発売された。
 これは、七人の藤子Aファンがメーリングリストを利用して藤子A作品を語り合った座談会を本にまとめたもので、A先生の作品を単独で本格的に論じた本としては、はじめてだろう。以前に米沢嘉博氏が『藤子不二雄論』を出したが、こちらは二人で一人の「藤子不二雄」を論じた本だった。A先生の作品のみを七人もの熱心なファンが論じ合った今回の本は、画期的と言っていい。


 などと、他人事のように書いてはいるが、実は僭越ながらこの私もその七人の中に参加させていただいた。自分の発言が本として出版される事になろうとは、恥ずかしいやら照れくさいやら、不思議な気分だ。




今回は、完全に本名で参加



 思い返せば、稲垣さんからこの座談会へのお誘いがあったのが昨年の9月初頭だから、もう一年が経ってしまった。
 最初にお話を伺った時は、「藤子A作品評論本の中にファンによる座談会を含めたい」と言うだったので気軽に参加したのだが、皆熱心なファンばかりなので、どの作品に対しても白熱した内容のメールが飛び交って、非常に盛り上がった座談会になった。そのため、「本の一部」ではなくて座談会が丸々一冊の本になってしまった。しかも、「Book1」と付いている事から察して頂けるかと思うが、これでもまだ座談会の全ての内容を収録しているわけではない。
 今回は、自己紹介から始まって、『まんが道』『少年時代』、本格的ギャグ漫画(『忍者ハットリくん』『怪物くん』『フータくん』など)、先鋭的ギャグ漫画(『黒ベエ』『仮面太郎』『マボロシ変太夫』など)、ブラックユーモア短編、『劇画 毛沢東伝』を、主に取り上げて論じている。この作品ラインナップでは、まだまだA先生の作品の全てを語り尽くしているとは言えない。なにしろ、代表作の『プロゴルファー猿』や『魔太郎がくる!!』ですら、今回の本ではまだ論じられていないのだから。
 参加者が、あまりに熱心に多くのA作品について愛情たっぷりに語り合ってしまったために、とても一冊の本だけでは収まりきらないほどの分量になってしまったのだ。座談会の期間も当初設定されていたよりかなり延長されて、最終的には3ヶ月半もの間、A作品について徹底的に語り合っていた。私にとって近年で最もA作品漬けになった日々だった。今回、書名に「Book1」と付いてはいるが、「次」があるかどうかは今回の売れ行き次第のようなので、ぜひ多くの方に買って読んでいただきたい。


 それにしても、あらためて一冊の本となった座談会を読んでみると、元のメールのやりとりを知っているだけに、稲垣さんのまとめかたの上手さには舌を巻く。メーリングリスト形式だったので、一通のメールに複数の人が返信を出す場合もしばしばあったが、それらのメールも違和感なく読めるように巧く配置されている。おかげで、自分の文章を含めて、あらためて新鮮な気持ちで読む事が出来た。
 ファンの形や活動は人それぞれ、さまざまだが、今回の本はファン活動の一つの成果として胸を張って多くの藤子Aファンにおすすめしたい、素晴らしい内容になったと思う。それは、前述した稲垣さんの素晴らしい編集と、参加された方々のあふれんばかりの藤子A作品への愛があったからこそだ。そんな座談会に参加させていただいた事を、誇りに思いたい。



 と言うわけで、繰り返しになりますが、『藤子不二雄Aファンはここにいる Book1 座談会編』は、社会評論社より絶賛発売中であります。「濃い」人ばかりが集まっておりますが、稲垣さんが丁寧にA先生ご本人や作品の紹介をされているので、ファンなら誰でも楽しめる本になっていると思います。ぜひ、お読み下さい。
 稲垣さんのブログにこの本を入荷した書店のリストと、ネット書店へのリンクがあるので、興味のある方はそちらをご覧下さい。よろしく、お願いします。
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