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佐藤忠良? 「澤田清五郎」 (札幌市豊平区平岸)

2023年08月10日 12時45分02秒 | 街角と道端のアート
 個人の家の庭に設置されている銅像を、このように紹介していいものかどうか迷う。

 というのは、ここは、よその人が入ればすぐに警察に通報されるような場所ではなく、イベントなどでしばしば地域住民に開放されている所だからだ。
 公共施設ではないが、さりとて、一般の人が全く出入りを禁じられているというわけでもない庭だ。

 男性の首である。
 首というのは、頭部像を彫刻でそのように呼ぶ。

 彫刻の題材として首は非常にポピュラーであるが、野外彫刻ではかなり珍しい。

 野外彫刻の人物像は、全身像か、あるいは胸像が大半であるからだ。
 
 首のせいか、台座が2段構えになっており、これもあまり見かけないスタイルではないかと思われる。
 
 台座の前部には

 澤田清五郎
   明治拾八年九月弐日生
   昭和弐拾四年弐月弐拾八日没

と書かれている。

 1895年に生まれ、1949年にこの世を去った。
 短く刈り上げた髪や、しわが刻まれた額からは、実直そうな農家の人物像が浮かんでくる。
 澤田は豊平町(1961年、札幌市と合併)の町議や平岸小のPTA会長も務めた。
 
 
 背後に回ると、下の方にサインが刻まれている。

 どうやら

CHURYO


とあるようだ。

 これが佐藤忠良だとしたら、いままでほとんど知られてこなかった作品とはいえまいか。

 少なくとも「札幌散策」や、札幌彫刻美術館友の会の「北海道デジタル彫刻美術館」には記載がない。

 背面の下部に
「2005年5月
 荘司石材 KK」

とある。
 
 
 戦後日本を代表する具象彫刻家、佐藤忠良の歿年は2011年なので、計算は合う。
(もっとも2005年は台座の設置年月であって、銅像の年ではない可能性がある)
 
 台座の背面には、もうひとつ銘板のようなものが取り付けられていて、そこには

 吾らを慈しみ清楚にして
  謙なる人なりき
          誠一

とある。

 
 
 
 息子の澤田誠一はリンゴ農家のかたわら小説「北の夏」などを書き、月刊「北方文芸」の発行人としても知られた、北海道文学史を代表する作家である。
 2007年歿。

 最晩年の澤田誠一が亡父をしのんで佐藤忠良に制作を頼み込んだのかもしれない。
 清五郎の生存中に佐藤忠良が制作した可能性もゼロではない。


 
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