まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

孫文はペテン師で裏切り者だというが・・

2012-06-19 12:54:09 | Weblog

             山田良政   青森県弘前出身



台湾からの帰化人で売文評論家の黄文雄氏は「ペテン師」と書き、京都の大学教授と冠に記す中西輝政氏は「裏切り者」と書いている。

黄氏の書き様や言い方は、華人系、島礁系の帰化人および、在日外国人にはよく見かける姿だ。とくに日本人の遠慮とか忖度、あるいは永い歴史の繰りごとと理解する人々や、気勢をあげて「反」を叫ぶ人々顔負けの強烈な原籍地なり、否応なしでも諦観を以て暮らしている人たちいる想いでの生地を悪しざまに批判している。なかには人品骨柄まで持ち出して非難している。

そして、書いたり、言い終わると、日本人の顔色を窺うようにして帰化人の悪しき順応さをこれ見よがしに表現する。この種の人柄は日本人が最も信用のおけない部類でもある。

中西氏はソ連のボロジンと結託して満州を支那の版図に入れると言ったことだが、辛亥革命の本質は漢民族の回復にあり、そのために異民族(満族)清朝を打倒すると興中会の誓詞に書かれている。また満州を入れると発表したとき孫文はハワイにいて知らなかったと側近の山田は語っている。

ボロジン、王精衛の関係から「ソビエト革命同志諸君・・」ともう一通の遺言が作成されている。作成時に立ち会った山田は「国民党に遺した遺言のみだった」といい、しかも孫文は署名などできる状態ではなく、息子が「親父の字は癖があるからなぁ」といいながら署名している現場に立ち会っている。

それも、遺言ぐらい残さなくては・・、という雰囲気で作成したものだったが、発表されたのは二通だった。二通とも死んでからつくった偽物だ。またソ連に追いやったのは日本だと山田は言っている。本当は日支提携してアジアを興すことが願いだった。ソ連、英国、米国、そして日本はことごとく支那の自立を妨げた。ただ、革命にはどうしても外国の援助が必要だった。日本も袁世凱と孫文を援助する二つの勢力があった。孫文からすればそのような日本をどう考えたらいいか迷ったはずだ。その時、手を差し伸べたのはソ連だった。

ともあれ、大陸中国はもともと日本人の土地ではなく、歴史も刻んでいない。言った、言わないが通用しないことも、日本ではないことで理解しなければならない。日本が進出しなければ西欧に先を越される、そんな理屈は通らない。孫文が語るのは、協力してくれた朝野の日本人先覚者への愛顧だ。そして真の日本人を彼らにみた。加え、その志を嗣ぐ日本人が再び現れることを期待して恵州で戦死した山田良政の頌徳撰文を遺している。

革命の後輩だった蒋介石は「日本が滅んだら中国も滅ぶ」と不抵抗密電を打ったこともある。それは近衛首相でさえ、いつの間にか戦争に誘引されているという感覚が、西欧の企てとして日中戦があると蒋介石もみていたことと同じだ。領袖孫文がコミンテルンの謀略誘因によって傾倒したのもその流れにあったものだと解ったのも泥沼となった日中戦のさなかのことだった。西安での拉致と国共合作の謀略もその理解を増すものだった。








臨終立ち会った側近 山田純三郎と孫文  上海へ帰途デンバー号甲板にて 





革命同志の山田にとっても「国思えば国賊」と容易に謀略にのる日本政府に命懸けの建策をしているが、偽勝利の利権を既得権とする日本には大きな国際的潮流は理解できなかった。巷間、国際コミンテルン、国際金融資本との関係を推察される孫文観もあるが、革命には資金も武器もいる。そのための一言一章を手前勝手に解釈して、言いがかりをつけるのは、その一方にも「利」という意図があるからに他ならない。つまり、タダでやることはないのだ。

日本人のなかにはそのような考えを恥じるものもいた。肉体的衝撃を狡知で言い逃れする学者やモノ書は当時もいたが、醇な日本人が大勢いた。
その底流は綿々と普遍的な人情として留まり、愛顧として民族交誼を一隅で支えている。

その一人児玉源太郎の洞察だが・・・
満州の軍閥張作霖はソ連管轄地で目先の利いたブローカーとして活躍していた。日本軍に捕らわれたとき銃殺命令が下ったとき、余りにも利発で順応性があるので二重スパイとして使おうと将校が死刑嘆願したとき、児玉源太郎は「そのようなものは信用できない、しかもそのような資質を持った人物なら尚更、将来に禍根を残す」として取り合わなかった。
事実、その通りになった。満鉄周辺地を管轄していた日本人、あるいは朝鮮人(当時は日本人)の生活を脅かし、ソ連に通じて管轄地をかく乱した。

そうしなければ生きられない彼の地の国情ではあったが、満州崩壊のとき、はじめは国民党がきた。その国民党の副司令官は共産党軍が入ると、なんと共産軍の司令官になっていた。
あるいは8月15日まで満州国旗が翻っていた城内は、午後には国民党の青天白日旗が掲げられていた。
「どうしたんだ」と聞くと、
『いつも五つの旗を用意している。満州国旗、日本国旗、ソ連国旗、国民党旗、解放軍(共産党)旗だが、以前は張学良のとき少しは長持ちするだろうと丈夫な生地で作ってあった。誰が来てもすることは一緒だよ』

民族や国家などは関係ない、ただ旗幟が代るだけだということだ。
「易幟」えきし・・易はトカゲの象形で季節によって変化する意

蒋介石総統が大陸進攻を意図していたころ、台湾で反共新聞を発行していた人物は、共産党の革命第一世代の大物の遣いで中曽根総理に会いに来た。旧知の上和田秘書が対応したが、要は「個人的な関係をつくりたい」ということだ。彼らの言う個人的とは利権の関係だ。反共新聞と大陸の大物との関係など、日本人は頭がおかしくなるくらい理解しがたいものだが、彼らにとっては党も国もない。思想などというものは看板ハナシの類で、四角四面の日本人には訳が分からない。   佐藤慎一郎氏談


筆者がある講話で孫文はペテン師のことを質問されたことがある

「それは当然だ。ペテン師どころが謀略家で裏切り者、浪費家で、しかも女好きだ。どれをとっても一流だが、革命においてもそれがいえる。それでなくては革命など出来るわけがない。だからといってそれをほじくって何になる。今の歴史が書き変わるのか。そんな孫文に協力した頭山さんや犬養さん、萱野、宮崎、山田兄弟、あるいは秋山真之などが騙された愚かなあきメクラだったのか。








前右 頭山満氏





協力した日本人は食い扶持官吏や増長した軍官吏、加えて世界観や意志も乏しい政治家とは違う。みな、無条件の貢献だ、みな孫文を取り巻く中国の状況、あるいは彼の唱える経綸に賛同した。相手の事情も変われば、日本の事情も変化する。頑なに変わらぬことの方がおかしい。

後世にお人好しの日本人と評されても、刃や銃を持ったことのない人の言うことだ。あるいは客観的に、アカデミックに孫文がそうだとしても、信じられる臨場体験は他の入る隙はない。要は、痛い、辛い、悲しい、茫洋な諦観、を共有した人物が宿命といえる出生地、あるいは民族や国家という複雑な要因を以て構成された内部事情の抗することのできない転化や変遷を考えたとき、当事者は互いにその宿された立場を非難しないだろう。それが人の織りなす歴史であり、譲り合う礼だと思う。

彼らはその異なりを超えて普遍的な目標である、数百年に渡った異文化、異民族である白人社会のくびきから脱することを目標としていた。その後の経国に日本の事情に反する勢力が浸透しようが、逆に中国の事情に反する勢力の影響を受けたり、思想形態が自国におもわしくない状況が起きても、彼らの臨場体験から培った人情は、遠い未来と,永い歴史を俯瞰して、再びそのような共助の機が到来する確信があった。







恵州の戦闘で殉難した山田良政 (台北)







それはお人よしの願望ではない。童でも考える醇なる理想の実現だ。命とはそのようなときに使うのだと教えられ、また異民族にも通用する普遍な価値だ。歴史は数値に置き換えたり、記録するためにあるのではない。正対して眺め、倣うことによって人の用となるものだ。

また、そのように超然とした見かたと泰然とした人物観を養えば、たとえ歴史から見れば五十年、百年という短期間の軋轢など、互いの苦しい経国と反省の期間と考えれば、再び恩讐を超えて縁が甦ることを彼らは先見していた。そして、たかだか地球の表皮のかさぶたのようなものだと鷹揚に考える共通な体験があった。そう考えられる彼らは幸せだった。

戦後の招待外交ではないが、敵の敵は味方、知恵と財を誘い込む企て、それを単なる市場人口と経済を勘案して入り込む現代日本人の方が卑しいと思う。少し具合が悪くなると半知半解をいいことにネガティブな大陸事情に膝を打ち、合点いったような気分にさせられている日本人は情けない。とくに売文の輩や言論貴族に踊らされる日本人は小さい。

かえって、゛面白い人たちだ゛と俯瞰した眺めをしなくてはならない事を、学んでいると思うことだ。
貧しい人が金をもったにどのように遣うか、どんな人と付き合うか、その結果どのような変化が訪れるか、我が国の軍備を恃んだ大陸侵攻と、利権を意図した異国での経済、最近のバブル経済と沈滞、すべてが観えてくる。それを日本人より多くの時間をかけて繰り返している人たちが、儲けられるときに儲ける。国や他人など関係ないと考えている。そんな性癖になった事情を理解すれば、だんだんと近づいてきている、同化しつつある日本及び日本人のことを心配した方がいい」

当世は、これを偏屈な変わり者と言うらしいが・・・
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