大阪の「サイコデリシャス・ハードポア・バンド」下山(gezan)のことは何度かこのブログで取り上げた。間違いなく日本で一番喧しくお下劣なバンドである彼らの1stアルバムが自主レーベル「十三月の甲虫」からリリースされた。ライヴではハードなビートとノイジーなギターのヘヴィ・サイケを聴かせるが、CDになると異常なまでに歪んだ音、意味不明な数々のサンプリング、聴き取れない絶叫ヴォーカルが炸裂し、単なるロックやサイケやノイズやハードコアの概念を遥かに超えてしまった、ホントの意味でイっちゃった作品になっている。MySpaceの音源や前作のEP「一時的な腸」を聴いたときから変なバンドだと思っていたが、このアルバムでその全貌が明らかになったわけだ。
ネットを中心としたレコ評では「震災以降の日本に対する想いを月ごとに、13月まで詠むコンセプトアルバム」と紹介されているが、どう聴いてもそんな作為的なコンセプトは感じられない。金を出せば何でも手に入る便利な時代に敢て本能の赴くままに野生児と化して制作されたのがこのアルバムなのではないかと思う。三島由紀夫の実孫である平成元年生まれのマヒトゥ・ザ・ピーポー(vo.g)の感性は時代の閉塞感をいとも簡単に突き崩してしまう淫らなエネルギーに満ちており、ライヴで全裸で演奏するカルロス・尾崎・サンタナ(b/最近サンタナからYUTAKAに改名した)をはじめとする3人のメンバーもCDでは何をどのように演奏しているのか解明出来ないカオスぶりを発揮している。80年代に非常階段が、90年代にボアダムズが、00年代にオシリペンペンズが継承してきた「関西エログロ・ロック」の将来を一手に引き受けているのが下山(gezan)なのである。
CDを聴いて「?」マークが浮かんだ人でもライヴがあったらぜひ足を運んで欲しい。なんじゃこりゃと思わせるカッコいいヘヴィ・ロッカーが一転して客席に乱入し狼藉を働く鬼畜となり暴れまくるスリルは昔のハナタラシや財団呆人じゃがたら、スターリンや非常階段の持っていた身の危険を感じさせるロックの味わいをそのままに体現しているから。暴れていられる今のうちに観ておいた方が良い。マスコミに持ち上げられて「関西テン世代の代表格」などと喧伝される(既に一部ではそう呼ばれているが)前の文字通り裸の下山(gezan)を体験して欲しい。半年前のライヴでマヒトゥにほっぺたを齧られたが、それが自慢になる日が来るに違いない。
断腸の
思いで繋ぐ
柔肌の乱れ
喧し過ぎてそう何度も聴きたくなる音じゃないわな、正直なところ(笑)。
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