A Challenge To Fate

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【私のB級サイケ蒐集癖】第12夜:桑港の天鵞絨メルティーヴォイス『ヴィクトリア Victoria』

2018年03月14日 01時53分34秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


1969年にプロモーターのビル・グラハムと音楽プロデューサーのデヴィッド・ルビンソンが設立したフィルモア・コーポレーション傘下のサンフランシスコ・レコードは名前の通りサンフランシスコのアーティスト/バンドをピックアップしてリリースした。活動期間は2年半と短命だったが、当時の「シスコサウンド」シーンの代表バンド、コールド・ブラッドとタワー・オブ・パワーの他に、あまり語られることのないローカルアクトもいた。レーベルの全7枚のアルバム中2枚を占める女性シンガーソングライター、ヴィクトリアもそのひとり。同レーベルはメジャーのアトランティック・レコードがディストリビュートしたので、入手は困難ではなく、アメリカの中古盤店のCheapo(格安)コーナーでよく見かけたし、日本でも90年代まではアメリカ盤専門店に行けば楽に入手できた。だからヴィクトリアのアルバムも全然レア盤ではないし、サイケのガイドブックで紹介されることもない。Discogsのジャンル表記は「Folk, World, Country」となっている。しかし個人的にはこの2枚はアシッド風味漂う天国への旅へ誘ってくれるドリーム・サイケポップの逸品なのである。特に2ndアルバム『Victoria』の見開きジャケットの天鵞絨ソファに横たわったポートレートは、サイケデリック・ライトショーで目がくらんだアシッド中毒者を優しく癒す女神にほかならない。この美貌に魅了されて以来、ヴィクトリアのアルバムを聴く度に脳がメルトダウンし、メルティーヴォイスが頭から離れなくなってしまう。

●VIctoria - The Secret Of The Bloom(花弁の秘密)(San Francisco Records ‎– SD 201 1970年)


69年のコールド・ブラッドの1stに続くサンフランシスコ・レコードのLP第2弾。彼女がどういう経緯でビル・グラハムの目に留まったのかはわからないが、レコーディング・セッションのためにテネシー州ナッシュビルから敏腕ミュージシャン集団Area Code 615を呼び寄せるほどの力の入れようは、かなり期待されていたに違いない。プロデュースはデヴィッド・ルビンソン、エンジニアは右腕のフレッド・カテロという万全の布陣で制作された。収録曲の半分がエリア・コード614、半分がサンフランシスコのミュージシャンが参加している。ウォーレン・ジヴォン、スティーヴン・スティルス、映画音楽家のジェフリー・コマノーのカヴァーと彼女のオリジナル曲が半々。スティールギターやバンジョーを取り入れたカントリータッチのサウンドもあるが、ヴィクトリアのハイトーン・ヴォーカルはナチュラリズムを突き抜けて超自然の世界を垣間見せる。花弁の秘密というタイトルに性的なものを感じる向きにはピッタリの昇天ミュージックといえよう。

Victoria - Secret Of The Bloom



●Victoria - Victoria(麗しきヴィクトリア)(San Francisco Records ‎– SD 206 1971年)


翌71年にリリースされた2ndアルバムは満を持してのセルフ・タイトル。制作チームは同じで、ハービー・ハンコックがピアノで参加、ギターのロン・モントローズはのちにハードロック・バンド、モントローズをで活躍するロニー・モントローズその人である。しかし何よりも蕩けるのは全曲ヴィクトリアの異才が120%開花したオリジナル作品であること。ときにジャジー&メロウに,ときにリリカル&エモーショナルに展開する作曲センスを天空に融和させるメルティーヴォイスは前作以上に地に足がつかない浮遊性を発揮。ジャケットのほほえみはモナリザに似たエニグマである。特にA3の10分におよぶ組曲「Song Cycle」の輪廻感はヴィクトリアの迷宮への迷路エントランス。理解する為にはジャケを開いてベッドにおいて、添い寝しながら愛撫されるメルティー感に耽って聴くのがおすすめ。

Victoria - One Way Road


ヴィクトリアが残した自己名義の作品はこの2枚だけ。72年のハービー・ハンコックのアルバム『クロッシングス』にコーラスで参加。70年代半ばにはCrystal Pistolという女性ギタリストとヴァイオリニストを含むバンドでベイエリアをサーキットしていたという証言があるが、音源を残すことなく音楽シーンから消えてしまった。本名はヴィトリア・ドマルゴスキ(Victoria Domalgoski)、生まれは一説によると1947年8月1日カリフォルニア州サンホアキン郡。それ以外の情報はアルバムクレジットのみ。2ndアルバムにライナーノーツを書いた小説家リチャード・ブローティガンと付き合いがあったようで、1971年の小説『愛のゆくえ(The Abortion: An Historical Romance 1966)』の表紙に登場している。登場する自らの美しい肉体を憎む女性ヴァイダ(Vida)のモデルとまでは行かなくてもインスピレーションを与えたのかもしれない。



現在はアン・アーバーのリチャード・ブロ-ティガン・アーカイヴに勤務しているという噂がある。シンガーとして復帰することはありえないと思うが、彼女の若き日の輝きを少しでも多くの人に知ってもらいたいと願っている。

ヴィクトリア
メルティー女神の
独り寝よ







特別付録:美麗ヴィクトリア・ピンナップ



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