A Challenge To Fate

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【リズムの時代】多次元宇宙で共振する相対性響鳴体~デヴィン・グレイ『リラティヴ・レゾナンス』

2015年09月11日 00時56分49秒 | 素晴らしき変態音楽


『Devin Gray/RelativE ResonancE』

Skirl Records

Devin Gray (ds)
Chris Speed (ts, cl)
Kris Davis (p)
Chris Tordini (b)

1. City Nothing City
2. In the Cut
3. Notester
4. Jungle Design (for Hannah Shaw)
5. Transatlantic Transitions
6. Undo the Redo
7. RelativE ResonancE (for Tadd Dameron)
8. Search It Up

All compositions by Devin Gray (VonerMusic, BMI)
Produced by Devin Gray; recorded by Tom Tedesco at Tedesco Studios, NJ
Mixed with Eivind Opsvik; mastered with Liberty Ellman; edited with Nathaniel Morgan



ドラマーとは微に入り細に入り共演者を鼓舞する狼藉者である。

メイン州で生まれ育ち、2006年にニューヨークへ移り、アメリカ/ヨーロッパで様々な活動を繰り広げるデヴィン・グレイ。リーダーとして率いる2つのバンドのうち、エラリー・エスケリン(ts)、マイケル・フォーマネック(b)、デイヴ・バルー(tp)とのカルテット「ディリーゴ・ラタプラン」は2012年アルバム『Dirigo Rataplan』をリリースし、"グレイの作曲は、繊細なテンポ感と波打つ弾力性を、絶妙なバランスで表現する"と高く評された(New York Times)。



しかし、もうひとつのバンド「リラティヴ・レゾナンス(RelativE ResonancE)」は、2007年の結成以来音源を発表することなくひたすらリハーサルとライヴ経験を重ねてきた。8年目の今年6月、満を持してアルバム『リラティヴ・レゾナンス RelativE ResonancE』がリリースされた。グレイが「多次元のモザイク構造のアルバム」と語る通り、収録された創造性に満ちた楽曲は、バンド・メンバーの才能を最大限に発揮させている。



クリス・スピード(ts,cl)と女性ピアニストのクリス・デイヴィスは、それぞれ持ち前の幅広い感情表現を活かして、大胆で荒々しいランニングと穏やかなストロークの間を行き交う。ベーシストのクリス・トルディーニは起動エンジンとしてバンドの屋台骨を支える。グレイ自身は繊細な役どころを演じ、リード楽器が切り開いた空間に、絶妙なタッチでアクセントの道標を付け加える。

堅固だが同時に流動的なエモーションを持つ楽曲構造が、グレイの言う「モザイク構造」であろう。四人がそれぞれ自由度の高い演奏を繰り広げる中に、個々の創造性を際立たせる絶妙なキメやブレイクが仕込まれており、演奏者は我知らず潜在能力の底の底まで曝け出し、ワンランク上の陶酔感を聴き手に分け与えるのである。



包み込む母性と突き放す残忍性を兼ね備えたドラマーならではの感性が、作曲に於いてもバランスとアンバランスの垣根を取り払い、人間の非均衡性を詳らかにしたのである。本質的に不釣り合いな人間たちが共に鳴ることで生まれる微かな震えのモワレが心に響く。『RelativE ResonancE=相対する共鳴』とは言い得て妙である。


Devin Gray Official Site

ドラマーが
作曲すれば
万事順調

Chris Pitsiokos / Devin Gray / Pascal Niggenkemper - at SpectrumNYC - February 11 2014


<参考記事>
【Disc Review】木管ジャズの黄金郷~ハリス・アイゼンシュタッド『ゴールデン・ステートII』
【リズムの時代】第2回:トマス・フジワラ&ザ・フック・アップ『アフター・オール・イズ・セッド』
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