しこたま酔っ払った金曜日の帰路、ターミナル駅の広場付近で奏でられるきれいな音楽に心をつかまれる。しばらく聞き入ってしまい、気づくと終電がない。そんな経験、一流のドランカーなら誰でもあるはずですよね。ありませんか。
つかの間、通り行く人々の心をなごませてくれるストリートミュージシャン。なかには、「楽器じゃない何か」を巧みに使って音楽を奏でるパフォーマー系(別名・イロモノ系)の人たちもいます。野菜で笛をつくって上手に吹く人、空き缶を叩きわけてリズムを織り成す人。すごいなあ、と一瞬見とれさせてくれます。ただ音楽としてはどうかな?
今回紹介するのは、ドラムの代わりに「あるもの」を使って演奏をするイケメン君。あーはいはい、そういう系いるよね、と思ったあなた! そのキモチすっごいわかる、でもね、この子はレベルが全然違うんでございますよ! テクノ・エレクトロ系の音楽が好きな方は特に、必見です。
オーストラリアで活躍するストリートミュージシャン、ゴード(Gordo)くん。すっきりとしたイケメンの彼が操るのは、なんと「バケツ」! それも製品ではなく、使用済みの洗剤の入れ物らしきシロモノ。それをたたいて音楽にするなんてスゴい――
とまあ、正直ここまでなら、よくありそうなパターンです。ああバケツをたたいてちゃんと音楽になるんだね、すごいねえ。そんな感想で終わっちゃいそうなものですが……
ゴードくんの場合、奏でるサウンドがケタ違いにカッコいいんです!! テクノやエレクトロのビートを思わせる、スクエアでシャープなサウンド。大道芸にありがちな「ぽんわりした人のいい音」では決してなく、それどころかこのままクラブでかけてもなんの違和感もない疾走感あふれるオトを出しています。バケツで。
どうやってそんなサウンドを作り出しているのか、というと。ハイハットに相当する音は右手でコンクリートの舗装を叩く。スネアは、バケツをそのまま、バスドラムは足で傾けて叩くことで表現。これを基本として、周囲にある音の違うバケツを叩いたりリムショット(周囲を叩く)で音を変えたりしながら、さまざまなパターンのリズムを奏でていきます。スティックをくるくる投げて回す心憎いワザもときおりはさみながら。
その正確さ、その構成力、そしてなにより高揚感。シンセサイザー並みのスピードでどんどん姿を変ていくビートはいつしか、聴く側をすっかりトリコにしてしまいます。バケツなのにね! だまされたと思って、一度YouTubeで観てみてください。思わずハマってしまい、クラブに出かけたくなってしまいますよ。
ところでGordoくん、少し前までは日本で学生をしており、東京の池袋や渋谷などで活動していた模様。とてつもないレベルのバケツプレイヤーとして、知る人ぞ知る存在だったようです……見たかった! とはいえたまに来日してはイベントなどでプレイしているようなので、また近々どこかで彼のプレイを見られるかもしれません。
バンドやろう
ドラムはバケツで
問題ない
▼バケツの中でも / 踊ってばかりの国