<2L>
2L 51SABD(SACD-Hybrid+Blu-ray 音声ディスク) \3650
5.0 DTS HD MA
5.0 LPCM 24/96
2.0 LPCM 24/96
ソナー (Sonar)
マグナル・オーム(1952-):ハープ作品集
目的たれ vere meininga (1999 rev.2005)
(ハープ、エレクトリックハープ、弦楽六重奏と朗読のための協奏曲)
今朝、目覚めると det var mjukt (ソプラノとハープのための)
この真っさらの今 dette blanke no (ハープ、天使たちと朗読のための)
エレン・セーイェシュテード・ボートケル(Hrp、エレクトリックHrp)
ヒルデグン・リセ(朗読)
ベーリト・ノルバッケン・スールセット(S) グレクス・ヴォーカリス
カール・ホグセット(指)オスロ室内ソロイスツ
録音:2007年1月、8月 リス教会(オスロ、ノルウェー)
[制作:モッテン・リンドベルグ 録音:モッテン・リンドベルグ、
ハンス・ペーテル・ロランジュ]
ディヴェルティメンティ(2L 50SABD)に続いて2LがSACD+ブルーレイ仕様でリ
リース!今回は美しい作風で知られるノルウェーの作曲家マグナル・オームの
ハープ作品集。マグナル・オームは作曲家としてひとつのビジョンをもってい
ます。ハープのために書いた作品を集めたアルバムに彼は、『ソナー』のタイ
トルをつけました。超音波を発射し、未知の物体の姿や物体との距離を探知す
る装置、ソナー(sonar - sound navigation and ranging)。人間もまた、意味
を探りつづけるため物質的、精神的空間に向けて象徴的ソナーを放つ。宇宙に
答を求め、信号を送る。その表現が人生であり音楽。オームはそう語ります。
古箏と弦楽六重奏のための作品をハープと弦楽六重奏と朗読のための協奏曲に
改訂した「目的たれ」では、(図1)のように演奏者、楽器を配置しより音響効
果を高めています。クラーク・E・ムースタカスの詩をテクストとする「今朝、
目覚めると」、オーム自身の詩による「この真っさらの今」。エレン・セー
イェシュテード・ボートケルのハープに弦楽器あるいは声が応えます。作曲者
のビジョンから生まれた澄んだ音空間は聴き手に反射し、その新たな想像を誘
うはずです。
2L 52SACD(SACD-Hybrid) \2280
シェル・モルク・カールセン(1947-):
コラールソナタ 第3番、トランペット・ミサ
ヨン・ラウクヴィーク(1952-):嘆き
シェティル・ヴェーア(1932-):トランペットとオルガンのためのソナタ
エギル・ホーヴラン(1924-):カントゥス X(Cantus X)
ヤン・フレードリク・クリスチャンセン(Tp)
テリエ・ヴィンゲ(Org:リレストレム教会のリューデ&ベルグ(Ryde & Berg)
オルガン(2004)
録音:2007年6月 リレストレム教会(リレストレム、ノルウェー)
[制作:ヨルン・シメンスター 録音:ハンス・ペーテル・ロランジュ]
トランペットとオルガンの共演アルバム。ヨン・ラウクヴィーク、シェティル
・ヴェーア、エギル・ホーヴラン。ふたつの楽器のために彼らが書いた音楽は
どれも、やさしく瞑想的な気分にみちています。
ヤン・フレードリク・クリスチャンセンは1973年から2007年までオスロ・フィ
ルハーモニックの首席トランペット奏者を務め、ゲオルク・ショルティが指揮
した国連創立50周年記念コンサートのオーケストラのメンバーにも選出。現在
はノルウェー音楽大学の教授を務め、オスロ・シンフォニエッタのメンバーと
して演奏活動を続けています。その柔らかいトランペットの響きでクリスチャ
ンセンは、同郷の作曲家たちの "歌" に美しい共感を示します。オルガンは
Simaxの「ノルウェーのオルガン」録音シリーズを担当するオルガニストのテ
リエ・ヴィンゲ。アルバムの録音はオスロ近郊の町、リレストレムの教会で行
われました。2004年に設置されたリューデ&ベルグ・オルガンとクリスチャン
センのトランペットが独立した響きを保ちながら、美しく融け合います。2Lの
エンジニア、ハンス・ペーテル・ロランジュが巧みな録音技術で音を捉え、素
晴らしい音楽として聴かせてくれます。
2L 46SACD(SACD-Hybrid) \2280
Springar etter Gudmund Eide
(グームン・アイデにならったスプリンガル/スタムネス)
Ginas vals
(イーナのワルツ/(ハルダンゲルのニルス・チョフロートにならった)、他
ベーリト・オプハイム・ヴェシュト(Vo)
録音:2007年6月 ヤール教会(ベールム、ノルウェー)
[制作:ヨルン・シメンスター 録音:ハンス・ペーテル・ロランジュ]
ノルウェーの農民舞曲、スロッテル。村人たちの踊りにはフィドル弾きの伴奏
がつきものです。でも、プレーヤーのいない時には歌い手が代役を務めること
もありました。歌い手はフィドルを口真似し、意味のない "言葉" を即興で歌
います。その伝統のスタイルを正しく伝えるため、このアルバムで歌うヴェ
シュトは、アーカイヴに保存された録音を研究、それにも基づき歌唱の録音を
行いました。 ベーリト・オプハイム・ヴェシュトはノルウェーを代表する民
謡歌手のひとりです。フォークにとどまらないジャンルを超えた活動は、ノル
ウェー室内管弦楽団、オスロ室内合唱団、BIT20アンサンブル、ノルウェー放
送管弦楽団との共演にまで及び、フォークオペラ版《魔笛》のノルウェーとス
ウェーデンをまわる公演では夜の女王とパパゲーナの役を歌いました。弾むリ
ズムの歌、のどかな歌に谷間の暮らしの楽しい時間がしのばれます。
<SUPRAPHON>
SU 3976 \1780
(1)ドヴォルザーク:ミニアチュアOp.75a(B.149, 1887)
(2)同:バガテルOp.47(B.79, 1878)
(3)同:テルツェット ハ長調Op.74(B.148, 1887)
(4)ヨゼフ・スーク(1874-1935):ピアノ四重奏曲イ短調Op.1(1891)
ヨゼフ・スーク(Vn)
(1)(2)(3)ミロスラフ・アンブロシュ(Vn)
(1)(3)(4)カレル・ウンターミューラー(Va) (2)(4)イジー・バールタ(Vc)
ヤン・シモン((2)ハルモニウム、(4)ピアノ)
録音:2008年10月27日、11月1、3 & 4日プラハ、
ボヘミア・ミュージック・スタジオ
チェコを代表する名手で、数多くの録音や度重なる来日公演を通じて私達にも
なじみの深いヴァイオリニスト、ヨゼフ・スークはことし2009年に80歳を迎え
ます。
ドヴォルザークが創作中に「まるで壮大なシンフォニーを書いているかのよう
に、わたしを喜ばせる」と音楽出版社ジムロックに打ち明けた「ミニアチュア」
は、まもなくヴァイオリンとピアノに編曲された名作「ロマンティックな小品」
のオリジナル。あたたかな温もりを感じさせ、ときにメランコリックにと、人
懐こい旋律の魅力にあふれたドヴォルザーク3作に続くのは、直弟子スーク27歳
のときのピアノ四重奏曲。3楽章形式で、劇的に開始され、夢みるようなアダー
ジョを経て、情熱のほとばしるフィナーレで閉じられます。
大家スークが息子や孫の世代にあたる仲間たちとの最新録音は、曾祖父ドヴォ
ルザークと、祖父で同名の作曲家スークによる室内楽というアニヴァーサリー
にもってこいのプログラムとなっています。
SU 3967 \1480
マルチヌー:
(1)ヴァイオリン協奏曲第1番H 226
(2)ヴァイオリン協奏曲第2番H 293(1943)
(3)ラプソディ・コンチェルト-ヴィオラと管弦楽のためのH.337(1952)
ヨゼフ・スーク(Vn & Va)
ヴァーツラフ・ノイマン(指)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:(1)1973年11月5-7日(2)1973年9月24-26日(3)1987年11月18&20日プラハ、
ルドルフィヌム
(ディレクター:(1)(2)エドゥアルド・ヘルツォーク(3)パヴェル・キューン、
エンジニア:(1)(2)ミロスラフ・クルハン(3)ヴァーツラフ・ロウバル)
リマスタリング:2009年プラハ、
ルドルフィヌム・スタジオ(エンジニア:オルドジフ・スレザーク)
一時期、チェコ・フィルの第2ヴァイオリン奏者を務めていたこともあるマル
チヌー。マルチヌーがパリ時代に名手サミュエル・ドゥシュキンのために書い
たヴァイオリン協奏曲第1番(1933年完成)が、ようやく世界初演されたのは1973
年のこと。ショルティ&シカゴ響のもと、ソリストを務めたのがヨゼフ・スー
クでした。同じ1973年に、第1番の初演者スークが、同郷のノイマン&チェコ
・フィルというこれ以上ない万全のサポートを得て、第2番との組み合わせで
発表したヴァイオリン協奏曲のアルバムは、1978年度のアカデミー・シャルル
・クロのディスク大賞を獲得しています。このような名盤だけに、同じ顔ぶれ
で追加新録したラプソディ・コンチェルトを加え、すでにCD化(11.1969)され
ていますが、2009年にマルチヌーが歿後50年の節目を迎えるにあたり、同時に
傘寿を迎えるスークを祝して、最新リマスタリングで新装リリースされること
になりました。あらためて内容は決定盤と呼ぶにふさわしいものです。
SU 3968 \1480
(1)ドヴォルザーク:交響曲第3番変ホ長調Op.10, B.34
(2)グラズノフ:サクソフォーン協奏曲変ホ長調Op.109
(3)ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
カレル・クラウトガルトネル(Sax) ヤン・パネンカ(P)
ヴァーツラフ・スメターチェク(指)プラハ交響楽団
録音:(1)1959年9月28-29日プラハ、ルドルフィヌム
(2)1962年12月27-28日(3)1953年6月15日プラハ、ドモヴィナ・スタジオ
さっそうとしたスタイルにより、ドヴォルザークの第3番といえばこれ!とファ
ンの間で語り継がれる名匠スメターチェクの演奏がようやく本家SUPRAPHONで
もCD化。最新のリマスタリングで音質も上々です。さらに、ここでは初CD化と
なるカップリングにも注目。グラズノフで惚れ惚れするような音色を聴かせる
のは、クラリネットとサックスの演奏、アレンジと作曲で1950年代から1970年
代にかけて、ジャズ、クラシックを問わずマルチ・プレーヤーとして名を馳せ
たカレル・クラウトガルトネル(1922-1982)。そして、ヤン・パネンカ(1922-
1999)のヴィルトゥオーゾぶりと、スメターチェクのユニークなアプローチを
堪能できるガーシュウィンも思いがけない拾いものといえるでしょう。
<Ondine>
ODE 1145 4枚組 \6240
限定盤
エイノユハニ・ラウタヴァーラ(1928-):8つの交響曲
CD1:交響曲第1番(2003年改訂版)、交響曲第2番
CD2:交響曲第3番、交響曲第4番「アラベスカータ」
CD3:交響曲第5番、交響曲第6番「ヴィンセンティアーナ」
CD4:交響曲第7番「光の天使」、交響曲第8番「旅」
ベルギー国立交響楽団 ミッコ・フランク(指) [第1番]
ライプツィヒ放送交響楽団 マックス・ポンマー(指)[第2、3、4&5番]
ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団 マックス・ポンマー(指)[第6番]
ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団 レイフ・セーゲルスタム(指)
[第7、8番]
録音:1989年-2005年
2008年10月9日に80歳を迎えたラウタヴァーラの交響曲の道程をたどるアルバ
ム。タングルウッドでコープランドに学んでいたころに作曲したクラシカルな
第1番、もっと鋭い現代的な語法による第2番、ブルックナーのロマンティシズ
ムをモデルにしながら、技法は十二音に基づく第3番、音列技法による禁欲的
なモダニズムの第4番。それまでのスタイルを融合、ゆたかな色彩とテクスチュ
アをもつ、流れるようなスタイルに新たな展望を見いだした単一楽章の第5番、
ゴッホを題材とするオペラ《ヴィンセント》に基づき、《星の夜》以下4つの
楽章をもつ交響曲第6番、自由に流れる表現的なメロディが鮮やかな色世界に
誘う第7番《光の天使》、果てない海洋に導くかのような第8番《旅》。第1番
はミッコ・フランクとベルギー国立交響楽団が録音した、「ポエティコ」の楽
章を追加した2003年改訂版が収録されました。
ODE 1127 \2080
キンモ・ハコラ(1958-):
ピアノ協奏曲(1996)
【第1楽章フリオーゾ、第2楽章カプリッチ、第3楽章フォルツァ、第4楽章トッ
カータ、第5楽章フオーコ、第6楽章カデンツァ、第7楽章マエストーゾ、第8楽
章トリステ、第9楽章ルックス】、
シンフォニエッタ(1999)
ヘンリ・シーグフリードソン(P)
ヨン・ストゥールゴールズ(指)タンペレ・フィルハーモニック管弦楽団
録音:2007年12月 タンペレホール(タンペレ、フィンランド)
制作:セッポ・シーララ 録音:エンノ・マエメツ
フィンランドでもっとも注目される作曲家のひとりキンモ・ハコラ。ピアノ協
奏曲はヘルシンキ・フェスティヴァルから委嘱を受け、1996年に完成。9つの楽
章からなる演奏時間約56分の大曲。カデンツァが独立した楽章とされたことが
注目されます。力強さと輝かしさ、深い情緒とユーモア。ヴィルトゥオーゾ的
書法のパッセージとともにピアノ協奏曲のさまざまな魅力にあふれた記念碑的
な作品です。ヘンリ・シーグフリードソンはフィンランドのトゥルクに生まれ。
シベリウス・アカデミーで学び、1994年にヴァイマールで行われた国際フェレ
ンツ・リスト・ピアノ・コンペティションの第1位を獲得した後、ヨーロッパ
各地のコンクールで優勝もしくは上位に選ばれています。シベリウスのピアノ
・トランスクリプション集(h?nssler 98.261)、ラフマニノフのピアノ協奏曲
第2番・第3番(h?nssler 98.259)は国際的に高く評価され、新しい聴衆を獲得
することに成功しました。管弦楽のための「シンフォニエッタ」は、情熱的、
リズミカルな音楽が一貫する単一楽章の作品です。ヨン・ストゥールゴールズ
とタンペレ・フィルハーモニック管弦楽団がヴィルトゥオーゾ的な音楽を鮮や
かな音で楽しませてくれます。広がりのあるダイナミックな音、温もりのある
響き。ゆったりした空間を誇るタンペレのホールで録音セッションが行われま
した。
<haenssler>
=SWR MUSIC=
93 249(SACD-Hybrid) 2枚組 \3780
(1)ヴェルディ:レクィエム
(2)ハイドン:交響曲第26番ニ短調Hob.I:26「ラメンタツィオーネ」
(3)モーツァルト:キリエ ニ短調KV.341
(1)アナ・マリア・マルティネス(S)
イヴォンヌ・ナエフ(Ms) マリウス・ブレンチウ(T)
ジョルジォ・スーリアン(Bs)
オイローパコールアカデミー(合唱指揮:ヨスハルト・ダウス)
(3)SWRシュトゥットガルト声楽アンサンブル(合唱指揮:マーカス・クリード)
シルヴァン・カンブルラン(指)SWR南西ドイツ放送交響楽団
録音:(1)2008年5月11日バーデン=バーデン、祝祭劇場(ライヴ)
(2)2005年5月21日
(3)2007年11月5日以上フライブルク、コンツェルトハウス(ライヴ)
近現代作品を中心に色彩表現において非凡な感覚をみせるカンブルランの最新
録音は、ヴェルディの大曲レクィエム。このたびは大規模な声楽作品にふさわ
しく、マルチチャンネル・サラウンドも体感可能なSACDハイブリッド盤でのリ
リースもポイントとなっています。
高評価で迎えられた前作メシアンのセットがその代表例ですが、ここに至るカ
ンブルラン独自の切り口とは音価をじゅうぶんに保ちながら、ほとんど耽美的
なまでに作品へと肉迫する傾向にこそあるとおもわれます。その意味では、劇
的な部分とその音響効果で、全曲中もっとも有名な第2曲「怒りの日」、そし
て、その黙示録をおもわせる激烈な場面とは著しい対照をなす、たとえば、
第6曲「ルクス・エテルナ(永遠の光)」といった静謐なる美が集約された祈り
の部分を、鬼才カンブルランがどのように描いてゆくのかおおいに注目される
ところです。
しかも、なんといっても鍵を握る声楽陣の顔ぶれもまた大いに魅力的で、リリ
カルで若々しい素直な声質が好ましいルーマニア出身のブレンチウや、実力派
のナエフといったソリスト。さらに、それぞれ第一人者ダウス、クリードが率
いるふたつの精鋭コーラスもカンブルランの意図を十全に汲んでいるものと期
待されます。
なお、カップリングにはヴェルディに関連して、宗教的性格の2作品を収録。
まず、ハイドン自らの手によって「哀歌」と名付けられたタイトルをもつ交響
曲。第1楽章の“コラール”と楽譜に記された箇所では、オーボエと第2ヴァイ
オリンに聖週間用のグレゴリオ聖歌から採られた旋律が現れてしめやかなムー
ドを醸成。この曲はそもそも宗教的な目的のために書かれた2つの楽章を発展
させたものと考えられています。
そして、ニ短調によるハイドンの調性を引き継ぐ形でアルバムを締め括るの
は、モーツァルトのキリエ。演奏時間10分にも満たない短い作品にしては、同
時期のオペラ「イドメネオ」と一致する異例ともいえる破格の編成で書かれて
おり、その比類なき高みに達しているという点では、やはり同じ調性による傑
作「レクィエム」にも迫る内容です。
<LSO Live>
LSO 0628(SACD-Hybrid) 2枚組 \3450
ハイドン:オラトリオ「天地創造」(全曲)
サリー・マシューズ(S 天使ガブリエル、イヴ)
イアン・ボストリッジ(T 天使ウリエル)
ディートリヒ・ヘンシェル(Br 天使ラファエル、アダム)
ロンドン交響合唱団(合唱指揮:ジョセフ・カレン)
サー・コリン・デイヴィス(指)ロンドン交響楽団
録音:2007年10月7日ロンドン、バービカンセンター(ライヴ)
プロデューサー:ジェイムズ・マリンソン
エンジニア:ジョナサン・ストークス & ニール・ハッチンソン
ハイドン歿後200周年を迎える2009年、LSO Liveがおくる超強力盤はデイヴィ
スによる「天地創造」。巨匠が80歳の誕生日を迎えるシーズンの呼び物のひと
つとして、2007年10月におこなわれたライヴです。
「天地創造」は晩年の2度にわたる英国滞在中に、「メサイア」などヘンデル
の大作におおいに触発され着想した、その規模内容ともにハイドンの最高傑作
といわれるオラトリオ。旧約聖書の「創世記」と「詩篇」、ミルトンの「失楽
園」をテキストの題材として、神による創造の第1日から第4日まで、生き物が
出現する第5日と第6日、そしてアダムとイヴの登場と、創世の七日間を時系列
に沿って3部構成で描いています。このように直截的にキリスト教的世界観で
彩られた内容と、絵画的ともいうべき巧みな手法でわかりやすく活写される動
物たちの魅力や、大合唱が動員されて聞き栄えすることなどから、欧米ではと
りわけ人気も高く特別な作品として迎えられています。
こうした作品だけに「天地創造」は、すぐれた腕前で声楽作品を意欲的に取り
上げてきたデイヴィスにふさわしいものとおもわれます。このたびの特色とし
てデイヴィスはヴァイオリン両翼型配置を選択。舞台下手から第1ヴァイオリ
ン、チェロ、指揮者のすぐ正面に通奏低音、ヴィオラ、第2ヴァイオリン、上
手奥にコントラバスという具合に、2006年12月の「メサイア」(LSO.0607)のと
きと同じくヴィブラートも控えめに、あきらかにピリオド・アプローチを意識
したアプローチを行なっている点も注目されます。
なお、声楽陣では「優秀さがあまりに凄すぎてそのためかあまり強調されるこ
とがありません」(クラシカルソース・ドットコム)という、LSOに匹敵するも
うひとつの手兵ロンドン・シンフォニー・コーラスに加え、目を引くのが名実
ともにスター歌手を揃えたソリストたち。クリスティ盤のラファエルや、ヤー
コプスの「四季」でのシモンが知られるヘンシェル。ミンコフスキの指揮でザ
ルツブルク音楽祭2009でも同名役を歌う予定の、英国の誇りボストリッジ。そ
してデイヴィスのお気に入りでマシューズという顔触れが並んでいます。
あらためて、当ライヴが取り上げられた時期については、デイヴィス80歳ガラ
・イヴニングとして9月に行なわれたモーツァルトの「レクィエム」(LSO.0127,
0627)、さらに12月のティペットの「われらが時代の子」(LSO.0670)、そして
前作、翌2008年4月のマクミランの「聖ヨハネ受難曲」世界初演(LSO.0671)と
いう流れにあって、この上ない充実ぶりをみせているという事実も見逃せない
ところでしょう。
2L 51SABD(SACD-Hybrid+Blu-ray 音声ディスク) \3650
5.0 DTS HD MA
5.0 LPCM 24/96
2.0 LPCM 24/96
ソナー (Sonar)
マグナル・オーム(1952-):ハープ作品集
目的たれ vere meininga (1999 rev.2005)
(ハープ、エレクトリックハープ、弦楽六重奏と朗読のための協奏曲)
今朝、目覚めると det var mjukt (ソプラノとハープのための)
この真っさらの今 dette blanke no (ハープ、天使たちと朗読のための)
エレン・セーイェシュテード・ボートケル(Hrp、エレクトリックHrp)
ヒルデグン・リセ(朗読)
ベーリト・ノルバッケン・スールセット(S) グレクス・ヴォーカリス
カール・ホグセット(指)オスロ室内ソロイスツ
録音:2007年1月、8月 リス教会(オスロ、ノルウェー)
[制作:モッテン・リンドベルグ 録音:モッテン・リンドベルグ、
ハンス・ペーテル・ロランジュ]
ディヴェルティメンティ(2L 50SABD)に続いて2LがSACD+ブルーレイ仕様でリ
リース!今回は美しい作風で知られるノルウェーの作曲家マグナル・オームの
ハープ作品集。マグナル・オームは作曲家としてひとつのビジョンをもってい
ます。ハープのために書いた作品を集めたアルバムに彼は、『ソナー』のタイ
トルをつけました。超音波を発射し、未知の物体の姿や物体との距離を探知す
る装置、ソナー(sonar - sound navigation and ranging)。人間もまた、意味
を探りつづけるため物質的、精神的空間に向けて象徴的ソナーを放つ。宇宙に
答を求め、信号を送る。その表現が人生であり音楽。オームはそう語ります。
古箏と弦楽六重奏のための作品をハープと弦楽六重奏と朗読のための協奏曲に
改訂した「目的たれ」では、(図1)のように演奏者、楽器を配置しより音響効
果を高めています。クラーク・E・ムースタカスの詩をテクストとする「今朝、
目覚めると」、オーム自身の詩による「この真っさらの今」。エレン・セー
イェシュテード・ボートケルのハープに弦楽器あるいは声が応えます。作曲者
のビジョンから生まれた澄んだ音空間は聴き手に反射し、その新たな想像を誘
うはずです。
2L 52SACD(SACD-Hybrid) \2280
シェル・モルク・カールセン(1947-):
コラールソナタ 第3番、トランペット・ミサ
ヨン・ラウクヴィーク(1952-):嘆き
シェティル・ヴェーア(1932-):トランペットとオルガンのためのソナタ
エギル・ホーヴラン(1924-):カントゥス X(Cantus X)
ヤン・フレードリク・クリスチャンセン(Tp)
テリエ・ヴィンゲ(Org:リレストレム教会のリューデ&ベルグ(Ryde & Berg)
オルガン(2004)
録音:2007年6月 リレストレム教会(リレストレム、ノルウェー)
[制作:ヨルン・シメンスター 録音:ハンス・ペーテル・ロランジュ]
トランペットとオルガンの共演アルバム。ヨン・ラウクヴィーク、シェティル
・ヴェーア、エギル・ホーヴラン。ふたつの楽器のために彼らが書いた音楽は
どれも、やさしく瞑想的な気分にみちています。
ヤン・フレードリク・クリスチャンセンは1973年から2007年までオスロ・フィ
ルハーモニックの首席トランペット奏者を務め、ゲオルク・ショルティが指揮
した国連創立50周年記念コンサートのオーケストラのメンバーにも選出。現在
はノルウェー音楽大学の教授を務め、オスロ・シンフォニエッタのメンバーと
して演奏活動を続けています。その柔らかいトランペットの響きでクリスチャ
ンセンは、同郷の作曲家たちの "歌" に美しい共感を示します。オルガンは
Simaxの「ノルウェーのオルガン」録音シリーズを担当するオルガニストのテ
リエ・ヴィンゲ。アルバムの録音はオスロ近郊の町、リレストレムの教会で行
われました。2004年に設置されたリューデ&ベルグ・オルガンとクリスチャン
センのトランペットが独立した響きを保ちながら、美しく融け合います。2Lの
エンジニア、ハンス・ペーテル・ロランジュが巧みな録音技術で音を捉え、素
晴らしい音楽として聴かせてくれます。
2L 46SACD(SACD-Hybrid) \2280
Springar etter Gudmund Eide
(グームン・アイデにならったスプリンガル/スタムネス)
Ginas vals
(イーナのワルツ/(ハルダンゲルのニルス・チョフロートにならった)、他
ベーリト・オプハイム・ヴェシュト(Vo)
録音:2007年6月 ヤール教会(ベールム、ノルウェー)
[制作:ヨルン・シメンスター 録音:ハンス・ペーテル・ロランジュ]
ノルウェーの農民舞曲、スロッテル。村人たちの踊りにはフィドル弾きの伴奏
がつきものです。でも、プレーヤーのいない時には歌い手が代役を務めること
もありました。歌い手はフィドルを口真似し、意味のない "言葉" を即興で歌
います。その伝統のスタイルを正しく伝えるため、このアルバムで歌うヴェ
シュトは、アーカイヴに保存された録音を研究、それにも基づき歌唱の録音を
行いました。 ベーリト・オプハイム・ヴェシュトはノルウェーを代表する民
謡歌手のひとりです。フォークにとどまらないジャンルを超えた活動は、ノル
ウェー室内管弦楽団、オスロ室内合唱団、BIT20アンサンブル、ノルウェー放
送管弦楽団との共演にまで及び、フォークオペラ版《魔笛》のノルウェーとス
ウェーデンをまわる公演では夜の女王とパパゲーナの役を歌いました。弾むリ
ズムの歌、のどかな歌に谷間の暮らしの楽しい時間がしのばれます。
<SUPRAPHON>
SU 3976 \1780
(1)ドヴォルザーク:ミニアチュアOp.75a(B.149, 1887)
(2)同:バガテルOp.47(B.79, 1878)
(3)同:テルツェット ハ長調Op.74(B.148, 1887)
(4)ヨゼフ・スーク(1874-1935):ピアノ四重奏曲イ短調Op.1(1891)
ヨゼフ・スーク(Vn)
(1)(2)(3)ミロスラフ・アンブロシュ(Vn)
(1)(3)(4)カレル・ウンターミューラー(Va) (2)(4)イジー・バールタ(Vc)
ヤン・シモン((2)ハルモニウム、(4)ピアノ)
録音:2008年10月27日、11月1、3 & 4日プラハ、
ボヘミア・ミュージック・スタジオ
チェコを代表する名手で、数多くの録音や度重なる来日公演を通じて私達にも
なじみの深いヴァイオリニスト、ヨゼフ・スークはことし2009年に80歳を迎え
ます。
ドヴォルザークが創作中に「まるで壮大なシンフォニーを書いているかのよう
に、わたしを喜ばせる」と音楽出版社ジムロックに打ち明けた「ミニアチュア」
は、まもなくヴァイオリンとピアノに編曲された名作「ロマンティックな小品」
のオリジナル。あたたかな温もりを感じさせ、ときにメランコリックにと、人
懐こい旋律の魅力にあふれたドヴォルザーク3作に続くのは、直弟子スーク27歳
のときのピアノ四重奏曲。3楽章形式で、劇的に開始され、夢みるようなアダー
ジョを経て、情熱のほとばしるフィナーレで閉じられます。
大家スークが息子や孫の世代にあたる仲間たちとの最新録音は、曾祖父ドヴォ
ルザークと、祖父で同名の作曲家スークによる室内楽というアニヴァーサリー
にもってこいのプログラムとなっています。
SU 3967 \1480
マルチヌー:
(1)ヴァイオリン協奏曲第1番H 226
(2)ヴァイオリン協奏曲第2番H 293(1943)
(3)ラプソディ・コンチェルト-ヴィオラと管弦楽のためのH.337(1952)
ヨゼフ・スーク(Vn & Va)
ヴァーツラフ・ノイマン(指)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:(1)1973年11月5-7日(2)1973年9月24-26日(3)1987年11月18&20日プラハ、
ルドルフィヌム
(ディレクター:(1)(2)エドゥアルド・ヘルツォーク(3)パヴェル・キューン、
エンジニア:(1)(2)ミロスラフ・クルハン(3)ヴァーツラフ・ロウバル)
リマスタリング:2009年プラハ、
ルドルフィヌム・スタジオ(エンジニア:オルドジフ・スレザーク)
一時期、チェコ・フィルの第2ヴァイオリン奏者を務めていたこともあるマル
チヌー。マルチヌーがパリ時代に名手サミュエル・ドゥシュキンのために書い
たヴァイオリン協奏曲第1番(1933年完成)が、ようやく世界初演されたのは1973
年のこと。ショルティ&シカゴ響のもと、ソリストを務めたのがヨゼフ・スー
クでした。同じ1973年に、第1番の初演者スークが、同郷のノイマン&チェコ
・フィルというこれ以上ない万全のサポートを得て、第2番との組み合わせで
発表したヴァイオリン協奏曲のアルバムは、1978年度のアカデミー・シャルル
・クロのディスク大賞を獲得しています。このような名盤だけに、同じ顔ぶれ
で追加新録したラプソディ・コンチェルトを加え、すでにCD化(11.1969)され
ていますが、2009年にマルチヌーが歿後50年の節目を迎えるにあたり、同時に
傘寿を迎えるスークを祝して、最新リマスタリングで新装リリースされること
になりました。あらためて内容は決定盤と呼ぶにふさわしいものです。
SU 3968 \1480
(1)ドヴォルザーク:交響曲第3番変ホ長調Op.10, B.34
(2)グラズノフ:サクソフォーン協奏曲変ホ長調Op.109
(3)ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
カレル・クラウトガルトネル(Sax) ヤン・パネンカ(P)
ヴァーツラフ・スメターチェク(指)プラハ交響楽団
録音:(1)1959年9月28-29日プラハ、ルドルフィヌム
(2)1962年12月27-28日(3)1953年6月15日プラハ、ドモヴィナ・スタジオ
さっそうとしたスタイルにより、ドヴォルザークの第3番といえばこれ!とファ
ンの間で語り継がれる名匠スメターチェクの演奏がようやく本家SUPRAPHONで
もCD化。最新のリマスタリングで音質も上々です。さらに、ここでは初CD化と
なるカップリングにも注目。グラズノフで惚れ惚れするような音色を聴かせる
のは、クラリネットとサックスの演奏、アレンジと作曲で1950年代から1970年
代にかけて、ジャズ、クラシックを問わずマルチ・プレーヤーとして名を馳せ
たカレル・クラウトガルトネル(1922-1982)。そして、ヤン・パネンカ(1922-
1999)のヴィルトゥオーゾぶりと、スメターチェクのユニークなアプローチを
堪能できるガーシュウィンも思いがけない拾いものといえるでしょう。
<Ondine>
ODE 1145 4枚組 \6240
限定盤
エイノユハニ・ラウタヴァーラ(1928-):8つの交響曲
CD1:交響曲第1番(2003年改訂版)、交響曲第2番
CD2:交響曲第3番、交響曲第4番「アラベスカータ」
CD3:交響曲第5番、交響曲第6番「ヴィンセンティアーナ」
CD4:交響曲第7番「光の天使」、交響曲第8番「旅」
ベルギー国立交響楽団 ミッコ・フランク(指) [第1番]
ライプツィヒ放送交響楽団 マックス・ポンマー(指)[第2、3、4&5番]
ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団 マックス・ポンマー(指)[第6番]
ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団 レイフ・セーゲルスタム(指)
[第7、8番]
録音:1989年-2005年
2008年10月9日に80歳を迎えたラウタヴァーラの交響曲の道程をたどるアルバ
ム。タングルウッドでコープランドに学んでいたころに作曲したクラシカルな
第1番、もっと鋭い現代的な語法による第2番、ブルックナーのロマンティシズ
ムをモデルにしながら、技法は十二音に基づく第3番、音列技法による禁欲的
なモダニズムの第4番。それまでのスタイルを融合、ゆたかな色彩とテクスチュ
アをもつ、流れるようなスタイルに新たな展望を見いだした単一楽章の第5番、
ゴッホを題材とするオペラ《ヴィンセント》に基づき、《星の夜》以下4つの
楽章をもつ交響曲第6番、自由に流れる表現的なメロディが鮮やかな色世界に
誘う第7番《光の天使》、果てない海洋に導くかのような第8番《旅》。第1番
はミッコ・フランクとベルギー国立交響楽団が録音した、「ポエティコ」の楽
章を追加した2003年改訂版が収録されました。
ODE 1127 \2080
キンモ・ハコラ(1958-):
ピアノ協奏曲(1996)
【第1楽章フリオーゾ、第2楽章カプリッチ、第3楽章フォルツァ、第4楽章トッ
カータ、第5楽章フオーコ、第6楽章カデンツァ、第7楽章マエストーゾ、第8楽
章トリステ、第9楽章ルックス】、
シンフォニエッタ(1999)
ヘンリ・シーグフリードソン(P)
ヨン・ストゥールゴールズ(指)タンペレ・フィルハーモニック管弦楽団
録音:2007年12月 タンペレホール(タンペレ、フィンランド)
制作:セッポ・シーララ 録音:エンノ・マエメツ
フィンランドでもっとも注目される作曲家のひとりキンモ・ハコラ。ピアノ協
奏曲はヘルシンキ・フェスティヴァルから委嘱を受け、1996年に完成。9つの楽
章からなる演奏時間約56分の大曲。カデンツァが独立した楽章とされたことが
注目されます。力強さと輝かしさ、深い情緒とユーモア。ヴィルトゥオーゾ的
書法のパッセージとともにピアノ協奏曲のさまざまな魅力にあふれた記念碑的
な作品です。ヘンリ・シーグフリードソンはフィンランドのトゥルクに生まれ。
シベリウス・アカデミーで学び、1994年にヴァイマールで行われた国際フェレ
ンツ・リスト・ピアノ・コンペティションの第1位を獲得した後、ヨーロッパ
各地のコンクールで優勝もしくは上位に選ばれています。シベリウスのピアノ
・トランスクリプション集(h?nssler 98.261)、ラフマニノフのピアノ協奏曲
第2番・第3番(h?nssler 98.259)は国際的に高く評価され、新しい聴衆を獲得
することに成功しました。管弦楽のための「シンフォニエッタ」は、情熱的、
リズミカルな音楽が一貫する単一楽章の作品です。ヨン・ストゥールゴールズ
とタンペレ・フィルハーモニック管弦楽団がヴィルトゥオーゾ的な音楽を鮮や
かな音で楽しませてくれます。広がりのあるダイナミックな音、温もりのある
響き。ゆったりした空間を誇るタンペレのホールで録音セッションが行われま
した。
<haenssler>
=SWR MUSIC=
93 249(SACD-Hybrid) 2枚組 \3780
(1)ヴェルディ:レクィエム
(2)ハイドン:交響曲第26番ニ短調Hob.I:26「ラメンタツィオーネ」
(3)モーツァルト:キリエ ニ短調KV.341
(1)アナ・マリア・マルティネス(S)
イヴォンヌ・ナエフ(Ms) マリウス・ブレンチウ(T)
ジョルジォ・スーリアン(Bs)
オイローパコールアカデミー(合唱指揮:ヨスハルト・ダウス)
(3)SWRシュトゥットガルト声楽アンサンブル(合唱指揮:マーカス・クリード)
シルヴァン・カンブルラン(指)SWR南西ドイツ放送交響楽団
録音:(1)2008年5月11日バーデン=バーデン、祝祭劇場(ライヴ)
(2)2005年5月21日
(3)2007年11月5日以上フライブルク、コンツェルトハウス(ライヴ)
近現代作品を中心に色彩表現において非凡な感覚をみせるカンブルランの最新
録音は、ヴェルディの大曲レクィエム。このたびは大規模な声楽作品にふさわ
しく、マルチチャンネル・サラウンドも体感可能なSACDハイブリッド盤でのリ
リースもポイントとなっています。
高評価で迎えられた前作メシアンのセットがその代表例ですが、ここに至るカ
ンブルラン独自の切り口とは音価をじゅうぶんに保ちながら、ほとんど耽美的
なまでに作品へと肉迫する傾向にこそあるとおもわれます。その意味では、劇
的な部分とその音響効果で、全曲中もっとも有名な第2曲「怒りの日」、そし
て、その黙示録をおもわせる激烈な場面とは著しい対照をなす、たとえば、
第6曲「ルクス・エテルナ(永遠の光)」といった静謐なる美が集約された祈り
の部分を、鬼才カンブルランがどのように描いてゆくのかおおいに注目される
ところです。
しかも、なんといっても鍵を握る声楽陣の顔ぶれもまた大いに魅力的で、リリ
カルで若々しい素直な声質が好ましいルーマニア出身のブレンチウや、実力派
のナエフといったソリスト。さらに、それぞれ第一人者ダウス、クリードが率
いるふたつの精鋭コーラスもカンブルランの意図を十全に汲んでいるものと期
待されます。
なお、カップリングにはヴェルディに関連して、宗教的性格の2作品を収録。
まず、ハイドン自らの手によって「哀歌」と名付けられたタイトルをもつ交響
曲。第1楽章の“コラール”と楽譜に記された箇所では、オーボエと第2ヴァイ
オリンに聖週間用のグレゴリオ聖歌から採られた旋律が現れてしめやかなムー
ドを醸成。この曲はそもそも宗教的な目的のために書かれた2つの楽章を発展
させたものと考えられています。
そして、ニ短調によるハイドンの調性を引き継ぐ形でアルバムを締め括るの
は、モーツァルトのキリエ。演奏時間10分にも満たない短い作品にしては、同
時期のオペラ「イドメネオ」と一致する異例ともいえる破格の編成で書かれて
おり、その比類なき高みに達しているという点では、やはり同じ調性による傑
作「レクィエム」にも迫る内容です。
<LSO Live>
LSO 0628(SACD-Hybrid) 2枚組 \3450
ハイドン:オラトリオ「天地創造」(全曲)
サリー・マシューズ(S 天使ガブリエル、イヴ)
イアン・ボストリッジ(T 天使ウリエル)
ディートリヒ・ヘンシェル(Br 天使ラファエル、アダム)
ロンドン交響合唱団(合唱指揮:ジョセフ・カレン)
サー・コリン・デイヴィス(指)ロンドン交響楽団
録音:2007年10月7日ロンドン、バービカンセンター(ライヴ)
プロデューサー:ジェイムズ・マリンソン
エンジニア:ジョナサン・ストークス & ニール・ハッチンソン
ハイドン歿後200周年を迎える2009年、LSO Liveがおくる超強力盤はデイヴィ
スによる「天地創造」。巨匠が80歳の誕生日を迎えるシーズンの呼び物のひと
つとして、2007年10月におこなわれたライヴです。
「天地創造」は晩年の2度にわたる英国滞在中に、「メサイア」などヘンデル
の大作におおいに触発され着想した、その規模内容ともにハイドンの最高傑作
といわれるオラトリオ。旧約聖書の「創世記」と「詩篇」、ミルトンの「失楽
園」をテキストの題材として、神による創造の第1日から第4日まで、生き物が
出現する第5日と第6日、そしてアダムとイヴの登場と、創世の七日間を時系列
に沿って3部構成で描いています。このように直截的にキリスト教的世界観で
彩られた内容と、絵画的ともいうべき巧みな手法でわかりやすく活写される動
物たちの魅力や、大合唱が動員されて聞き栄えすることなどから、欧米ではと
りわけ人気も高く特別な作品として迎えられています。
こうした作品だけに「天地創造」は、すぐれた腕前で声楽作品を意欲的に取り
上げてきたデイヴィスにふさわしいものとおもわれます。このたびの特色とし
てデイヴィスはヴァイオリン両翼型配置を選択。舞台下手から第1ヴァイオリ
ン、チェロ、指揮者のすぐ正面に通奏低音、ヴィオラ、第2ヴァイオリン、上
手奥にコントラバスという具合に、2006年12月の「メサイア」(LSO.0607)のと
きと同じくヴィブラートも控えめに、あきらかにピリオド・アプローチを意識
したアプローチを行なっている点も注目されます。
なお、声楽陣では「優秀さがあまりに凄すぎてそのためかあまり強調されるこ
とがありません」(クラシカルソース・ドットコム)という、LSOに匹敵するも
うひとつの手兵ロンドン・シンフォニー・コーラスに加え、目を引くのが名実
ともにスター歌手を揃えたソリストたち。クリスティ盤のラファエルや、ヤー
コプスの「四季」でのシモンが知られるヘンシェル。ミンコフスキの指揮でザ
ルツブルク音楽祭2009でも同名役を歌う予定の、英国の誇りボストリッジ。そ
してデイヴィスのお気に入りでマシューズという顔触れが並んでいます。
あらためて、当ライヴが取り上げられた時期については、デイヴィス80歳ガラ
・イヴニングとして9月に行なわれたモーツァルトの「レクィエム」(LSO.0127,
0627)、さらに12月のティペットの「われらが時代の子」(LSO.0670)、そして
前作、翌2008年4月のマクミランの「聖ヨハネ受難曲」世界初演(LSO.0671)と
いう流れにあって、この上ない充実ぶりをみせているという事実も見逃せない
ところでしょう。