マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

冷えてきたらば、グツグツグツグツ…関東煮

2016-11-25 01:12:47 | Weblog


何が喰いたいという訳でもないのだが、突然おでんが喰いたくなることがある。

だが困ったことにおでんとは、思い立ってすぐ食えるというものではない。

下茹でしたり、さらしたりする手間が肝要で、鍋で煮るのは仕上げみたいなもの。

グツグツ煮て、煮込んで、よく味がしゅんだ(大阪弁=沁み込んだ)ものでないと面白くない。 







自分が喰いたいのと、家人孝行の意味合いもあり、準備に取り掛かるが、

とにかくヒマがかかる。 大根の面取りなどやめだ。

一番味が沁みにくいのはコンニャクで細かい庖丁目を入れて、何度か下茹で。

天ぷらの類いは茹でて油抜きしておく。 ああ、茹で玉子の殻が剥けずガッタガタになる。







さて誰が何と言おうと、実は喰いたいのはおでんではなく、関東煮(かんとだき)なのだ。

語源言い出すと長くなるからはしょるが、関西でおでんとは味噌でんがくのことを指すので、

それと区別するために、関東から入ってきたおでんを、関東煮と呼んだというのが定説。

本来、ここに皮鯨(コロ)など入ると、味が一段複雑になるのだが、これがまた時間がかかるので、

今回は見合わせた。








イメージとしては織田作之助の小説「夫婦善哉」のヒロイン蝶子が、「二人で関東煮屋でもしよ」

それに対する柳吉 「そらエエ考えや。早速わいな、たこ梅やら正弁丹吾亭の味を研究してくるさかい」

これである。 だから里芋や蒲鉾が入るのもたこ梅風。ボッコボコ煮返すのもここの流儀。 



ベストマッチは燗酒である。なんか際限なく喰えてしまう。

ごはんのおかずにならぬこともないが、東京老舗では「おでんに茶飯」というらしいが、

やっぱり酒だろう。



むろん、翌日の方が味が熟れて美味くなる。 

ひん曲った厚揚げやら、じゃがいもの欠片なぞ一緒くたに煮直すのもよかろうが、

それではちょっと面白くない。

もちっと体裁よくしたいではないか。


私の場合、面倒でもいちいち鍋からおでん種を取りだす。



 



そうしてだしも漉して、冷蔵庫へ収める。

このひと手間で、あくる日も気分良く食べられるというものだ。

もちろん家族なんだからそんな七面倒くさいことするかよ、って声も分かる。

あくまで、プロの仕事をただただ真似ただけの、私のやり方。



しかしね、うまく出来たら出来たで、徐々に減って行くのはどうにも寂しい。

手塩にかけて煮込んだものが、一瞬で誰かに食べられて消えてしまう。

それが哀しいというのだから、食べ物商売に向いてないわ、こりゃ。



コース1万円の煮物然としたおでんなど、ほぼ興味が無い。

関西庶民の味、関東煮。 よろしいな、かんとだき。

諸君もぜひ、おでんなどと呼ばず赤丸絶滅種的呼称、「かんとだき」

日常的に使って下さい。



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