マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

10年ひとむかし

2009-06-29 15:24:38 | 




10年前、この店の斜め前に仕事場を借りていた。

ある日、見るからに蕎麦屋なのに「当分、うどんしかできません」という貼り紙を見て、ケッタイなこと言うなぁ・・・と怪訝な顔で前を掃いていた女将さんに尋ねた。すると、「ただいま息子が蕎麦の修行に出ておりまして、帰ってきたら蕎麦一本にいたしますので」という。
「失礼ですがどちらへ?」と問うと、「小淵沢の翁」と言うではないか。音に聞こえた高橋邦弘さんの蕎麦屋ぢゃないか。「解りました、おとなしく待ちます」と答えた。


約1年後、暖簾をあげた「なにわ翁」も今月で10周年。早いもんだ。記念の蕎麦会があり、師匠高橋さんが特別に蕎麦を打った。





久々に見る高橋さんの仕事ぶり。空気がぴんと張り詰め、無駄口など
叩けない雰囲気。名人上手が醸し出す空気感だろう。
目の前で料理人たちが息をのんで見つめていた。





動きに無駄がない。流麗な動作というのではないが、
無駄な力は入っていない。だから一日に何百食と打てるのだ。
高橋さんの師匠は、蕎麦界では知られた「一茶庵」片倉康雄氏。
なので「なにわ翁」勘田拓志くんは、友蕎子の孫弟子にあたる。




高橋さんは広島の豊平町「達磨」から、道具から台、包丁から蕎麦粉から一切合財、掃除機まで車に積んでやってくる。出張蕎麦会もあちこちでやり慣れていらっしゃる。

客の顔ぶれをみると、パッパの松本さん、トゥルトゥーガ萬谷さん、イルチプレッソ高島さん、可門の清水さんと奥さん・・・料理人が多い。蕎麦職人には格好のお手本がすぐそこに見られる訳で、土山人の若い人たちも連日通ってきていた。えらい。



かぼちゃ羹と小豆のいとこ煮風

豊の秋(島根)、ここではもっぱらこれを呑む。
蕎麦の邪魔をしない、いい酒だ。



前菜盛り合わせ  焼き鴨、鯖、うなとろ、鯖きらずまぶし
お母さん、大奮闘の巻。

次の回に(この日4回あった)やってきた某ホテルのベテランソムリエが、「大阪らしいわぁ」と、きらずまぶしにいたく感激していた。



焚き合わせ  冬瓜、ずいき、茄子、豌豆、海老  



高橋邦弘氏の手打ちそば

翁一門は二八(二割小麦粉)が基本。その方がのど越しのよさが出るという。ぷんと蕎麦のはかなげな香りが鼻へと抜ける。

おろしたての山葵でするする・・・と。 至上の清涼感。 
街中にいながら、野の精気を頂いている気になる。 うまい!





打ち終わった師匠、ホールに出て来られてごあいさつ。
本日は、常陸秋そば(茨城県水府村)を使っている。


勘田くんは師匠と自分の蕎麦では雲泥の差があると言うが、
正直、二つ同時に並べていないので、よくはその差が解らない。
姿、噛んだ歯ざわり、のど越し、鼻へと抜ける蕎麦の香り。僕にはそれほどひけをとっているようには感じないのだが。


10年前、大阪の都心で、たやすく美味い蕎麦を食べるなんて、考えられなかった。東京出張の機会まで蕎麦、寿司、天ぷらは我慢したもんだった。ここはそんな現状に風穴を開けてくれた一軒なのは確か。





ここで昼下がり、のんびり一杯やるのが大好き。
なに、志ん朝さんに教わったことをやってるまでだけどさ。
この10年で、蕎麦屋で酒を呑む秘かな楽しみが
少しでも大阪人に浸透し始めたら、愉快なことだなぁ。

満心などしない人なので安心してるが、たえず蕎麦のグレードを
見詰めつつ、職人としては客の健康を預かるんだから、自らの健康に
も気を配って、良い蕎麦を打ち続けてもらえりゃ、言うことなす。







            「なにわ翁」   大阪市北区西天満4
             http://www.naniwa-okina.co.jp/



大阪府立体育館、まん前

2009-06-29 11:54:56 | 



場所は大阪府立体育館のまん前。分かりやすい。
行ったことなかったので、迷ってしまったのであるが、今月オープンしたばかり。カレー鍋の専門店だ。


この顔のイラスト、見たことないだろうか。ピンとくる人はくるでしょう。
そうそう、あそこのあのオヤジですよ・・・彼の新展開。



昼間はカレーライス、夜はカレー鍋。
「そら、なんぼカレー食べたか分かりまへんで!」と社長が豪語するほど毎日カレー漬けの日々をおくり、ようようカレーの味を定めた。


鍋にかかる前にポテサラなど。
ま、こいつはフツーですな。
実はこういう所もぬかりなくレベルアップしてほしい。


オレはポテサラにゃあ、うるさいよ。


夜のメニュー「カレー鍋」の具材は、キャベツ、もやし、玉ねぎ、鶏、豚肉、牛肉、つくね、餅チーズ巾着、ちくわ、しらたき、赤ウインナー・・・
これで@1480円はお値打ち。

具を入れる前に、コラーゲンをところてん突きで、スープの中にウネウネ・・・と入れるのが、デモンストレーション。「奥さん、明日の朝は肌、エライことになってまっせ」ぐらい毎回言っても。





クタッとなったら、もういける。野菜バクバク、汗ダクダク・・・。
スープが少なくなったら足しに来てくれる。

スープは案外濃い目に感じた。しかしこれぐらいのパンチは欲しい。
肉は少ない気がするが、とにかく野菜を美味しく食べられる鍋だ。

鍋の最後は中華めん@200円を。これがまた美味。
きれいに引き上げた後には・・・





ごはんを入れて、とろけるチーズを上からパラパラ。
店員がレードルで上から「と~ろと~ろ」と撫でてくれる。





カレーリゾット@300円 これはイケる。

さて、よくを言わせてもらうと・・・カレー鍋に対して一般人が抱くイメージの枠内を一歩も出ていない。いや、そんな尖がったものは目指していないというだろうが、一般の食べ手は一歩も二歩も進んでいるぞよ。
何処にもないスペシャルなカレー鍋も見てみたい。それを目指してわざわざ遠方から足を運ぶような・・・





今すぐとはいわぬが、例えば、溶けるチーズもありきたりではなくて、ゴルゴンゾーラ・リコッタ・パルミジャーノレッジャーノ・グリエール・・・などの4種類のチーズにするとか。ぼちぼちカレー味も飽きてきた頃だ、違う味に変えてみようなんて発想は起きなかったか。トマトピュレを入れてトマトカレーにしてオレガノを振るとか、赤ワインを投入して赤ワインカレーリゾットにするとか。和風かつおだしを効かして、卵を割り入れて和風カレー丼的に食べさせるとか。世界一辛いブートジョロキアを入手して、うんとスパイシーな激辛リゾットにするとか。高くなったって美味ければ客は追加料金を厭わないはずだ。


テーブルのスパイスで辛さとコクはご自由に・・・では心は動かない。客はもっと怠惰なものかもしれぬ。店側で練り上げた創作カレー鍋をバリエーションとして1つ持っておくことをお勧めしたい。
そしてスタッフの料理への基礎体力をもっと成熟させることが今後の課題といえる。基礎体力はつまるところ、飽くなき好奇心と向上心を持ち、食べて考えて蓄積することしかないんだけど。若い店だ、今後も奮闘していただきたい!



        大阪なんばカレー食堂   中央区難波中 府立体育館前