マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

06.5.01   渡さん、ふたたび…

2006-05-02 02:02:58 | カントリー
我々がフォークの洗礼を受けた頃…なんていうと、お前は何者やねん!と
突っ込まれるだろうが、周囲では拓郎やアリスが人気があったりした。だが、なんでギターを同じように操り人形みたいにストロークするのだろう…どうせなら合奏した方が楽しいんぢゃないのかと思ったもんだ。
その頃に出会ったのが、高石友也と高田渡。二人はいろんな楽器を使って、周囲にはない音を出していた。高田渡のURCのデビュー盤は五つの赤い風船と片面ずつ担当し、クレジットにはMBS毎日放送で録音となっていた。
ラヂオで初めて聞いた「自衛隊に入ろう」は衝撃だった…

 皆さん方の中に 自衛隊に入りたい人は いませんか
 ひと旗揚げたい人はいませんか 自衛隊じゃ人材求めてます

 自衛隊に入ろう 入ろう 入ろう  自衛隊に入れば この世は天国
 男の中の 男はみんな  自衛隊に入って 花と散る 
                           『自衛隊に入ろう』

このパラドックスを自衛隊広報部は本気にして、ぜひパブリシティに使わせてほしいと言ってきたという、ウソのようなマコトの話。
こういう歌は、歌う宮武外骨(勝手に命名)高田渡の独壇場だった。視点が小津安二郎ではないが常にローアングル。自分の暮らしに合わせた場所からものを言ったから、決してブレることはなかった。一方の高石はアメリカ民謡に乗せて、中身にゃ乏しいがむやみに明るい世界を歌い、ついには独りで健康的に走り出したりして、おいてかれたナターシャーセブンの連中はどういう訳か次々に亡くなったり、女を殺したりしておかしくなった。
お別れ会では、こうせつの『ブラザー軒』、金子マリの『朝日楼』など友人たちが一曲ずつ渡の歌を歌った。「誰もやらないだろうから…」と、なぎら・坂崎幸之助が『ドキュメント三億円事件の歌』をデユエットし懐かしかったが、そこで誰もやらなかったというか、まるで知られていない歌がある。渡氏得意のパラドックスの効いたトピカルソングの一節を…。

     かつての組合書記長 いま会社の重役
     組合員をおだてた演壇で 社員に訓示する
 
       百八十度回転 πr(パイアール)
       昨日の友は 今日の敵となる

     労働歌よりは 小唄を稽古して 
     赤旗でなく ゴルフのクラブを振り回す

     大衆の拍手の代わりに 自家用車で迎えられ
     団交の時には 反対側の席に
                           『 転身 』

晩年を迎えたじいさんみたいだったが、なんの、まだ56歳。
飄々と歌う志ん生みたいになった老境の渡氏を見たかった。
写真は吉祥寺、くだんの渡さんの祈り台…
コメント
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