mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

身の壁

2023-06-09 08:34:15 | 日記
 修理に出していたパソコンが「届いた」と、販売店から電話があった。いそいそと受け取りに行った。メーカーとの「交渉」については、担当したスタッフがお休みなので明日電話するという。日差しは強く、もう真夏の気配。日除けのために羽織っていった長袖のシャツが汗ばんでいる。もうそれだけですぐに修復に取り掛かる気にならず、お昼を済ませてからと後回しにして、TVをつける。
 家の中はひんやりとして、暑さは感じない。コンクリート造りの建物の密閉性によるのであろうか、いつも外気より何度か低い。冬は寒くて困りはするが、徒然草のいう通り建物は夏をもって旨とすべしだ。
 さてと、お昼を済ませ、梱包を解く。
 二通の文書が添付されている。ひとつは「注意:リカバリ作業を伴う修理ご返却後の注意事項」というA4版裏表1枚と「BitLockerデバイス暗号化回復キーの取得方法について」という表題のA4版裏表2枚の文書。ところが後者は、コピーしたものらしいが、インクが薄くて読み取るのに難儀する。ことに〈手順〉の後に記載されたURLは、メガネを掛けても読み取れない。天眼鏡を使うと少し見えるが、ドットやスラッシュはあるのかないのかさえわからない。
 これですっかり「やる気」をなくした。販売店はこのコピーが薄いことを知っていたのか、このパソコンメーカーが発行する「あんしんサポート」の電話番号を記したカードをつけてくれていた。だが、消え失せた「やる気」はもうすっかり影を潜めた。そもそも、この修理に出したパソコン以外のパソコンがなくては、指定のURLにアクセスもできない。これで修理が完了したと言われても、使えないではないか。そう思うと腹が立ってきた。
 私は今応急に使っているのがあるからいいとしても、といったんは思った。だが「やる気」が失せてしまうと、それはそれとして、すっかり取り掛かる気が失せてしまった。明日販売店にもっていって、家へもって帰って電源を入れたら基盤取り替えのために消失したソフトを入れて使える状態にしてもらおう。そうでないと「修理完了」とならないのではないか。
 これは、たぶん、難しい。たぶんというのは、添付文書の前者を読むと、「回復キー」を入力してから1〜5時間電源を切らず、どのキーにも触らず放置して置かなければ、操作可能な状態にならないと「注意事項」が書いてある。これを販売店が行えというには、特段のサービスをお願いしなければならない。
 そんなこんなで「やる気」をなくして、小説を読んで過ごした。戦国時代を舞台にし暮らしに行き詰まった農民の子どもたちがどう生き延びていたかを出発点にして、人が生きるとはどういうことかをテーマにした今村翔吾「じんかん」(講談社、2020年)。つるつると読めて、後の時代から観た自治都市・堺の町の出来上がり方を仕掛けにして展開する。畿内の地理的な布置を描きながら読むと一入の感興がある。早々と床に入り、夜中に目を覚まして2時間位読みすすめて、頭の浄化を図ったってところか。
 今朝起きて、少しやる気が回復していると感じている。おちついたら、「あんしんサポート」に電話をするか、天眼鏡で読み取ったURLにアクセスして取り掛かってみようかと思い始めている。昨日「やる気」が失せたのは、私の身の壁。この壁は、しっかりと私の身体的条件と心情的心持ちとが作用してつくられたもの。養老孟のいうバカの壁と同じしろものだ。こういう体感が世間から年寄を遠ざけるんだね。まだまだ負けるわけには行かない。