仕事で疲れた目を休めるために会社のデスクから左後方に目を転じると、線路を越えた向こうに芝桜で見事に彩られた家が目に飛び込む。
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以前に少し触れた記憶があるが、デイサービスを利用するS氏は愛用の予科練の制帽
をかぶって通ってくる。 Sさんと呼びかけると、きりっと口を結び、海軍式の敬礼で挨
拶を返しててくれる。 骨太な印象を受ける顔。 制帽の徽章が少し曲がっているの
が現代の平和を象徴している。
いろいろな話をしてくれた。 氏のように15歳くらいの年齢で予科練に入校して訓練
に明け暮れているうちに終戦になり、ご苦労もあっただろうが戦闘を経験せずに戦後
を過ごした方々は青春の一時期を同じ世代の仲間と共同生活をしながら、厳しい訓
練を続けたことが今になっては良き思い出になっているのだと思う。
パソコンで予科練の訓練の模様を動画で見せてあげたら本当に喜んでくれた。 言
い過ぎかも知れないが氏にとり、はるかに過ぎ去った戦争は良かれ悪しかれ青春を
精一杯かけた思い出となって頭の中に刻み込まれているようだ。
式典や外出時にはかぶったと思われる制帽は70年の歳月を経て、一部は黄色く変
色してはいるが、手入れがいいのだろう、型崩れはしていない。終戦時に18歳だと
すれば少なくとも88歳にはなっているはず。 つい最近まで会の名前は聞き漏らし
たが、同期の会合を数年ごとに開催していたようだ。 さすがにまとめ役も年を重ね
会合はできなくなったと残念がっていた。
何度も書いたが沢山の個性的な人生の大先輩に接して、話を聞けることは大きな喜
び。 そして皆さんも昔話に付き合ってくれる存在が喜びであってくれればこんなに幸
せなことはない。
お若い皆さんは↑ をクリックしてください。 予科練の様々の写真が見られます。
これらの写真に写っている中に若き日のS氏がいるかもしれないし、また神風特攻隊
で散った隊員が何人もいると思う。
専守防衛といっても現実に戦いが始まれば必ず死者は出る。 国を守るために命を
落としても死者の家族、友人は悲しみにくれる。 命を掛けて守るに値する国であり
国民でなければ死者も浮かばれない。
軍備というものは難しいものです。 また70年も平和が続くということも奇跡なのは歴
史の証明するところ。
そのデイサービスの庭は枝垂桜は終わったが、芝桜の色彩が鮮やかな姿を見せて
いる。 今は平和そのものです。
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