ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『森のカフェ』

2015-12-13 19:27:15 | 映画

悩める若き哲学研究者の前に現れた森の妖精?
だがそのメルヘンチックな謎は瞬く間に現実の物語の中に回収。
代りにもう一つの秘密のヴェールが剥がされていく…。
『森のカフェ』を観ることは、その心を地上の引力から解き放つ魔法の時間を過ごすこと。
これは映画館の暗闇の秘密を知った者の映画だ。



----う~ん。
持って回った言い方。
意味がよく分からないニャあ…。
「う~む。
フォーンをしてもそうか。
この映画はね、
Twitterでお世話になっている榎本憲男監督の作品」

----あ~あ。
その監督なら聞いたことがある。
確か、
『見えないほど遠くの空を』を撮った人だよね。
「うん。
あの映画は映画製作をしている若者たちの話、
しかも自分の学生時代に関わりのある懐かしい場所が物語の舞台ということもあって、
懐かしさ交じりで観ていたんだけど、
後半、物語が思わぬ方向へ転がっていく。
脚本としてのオモシロさも見せてくれただけに、
今回もひそかに期待していたんだ。
ところが、Twitterでのつぶやきを観ていると、
あまりにもメルヘンな物語。
しかもヒロインは歌まで歌うという。
果たして、どんな映画になるのか
次第に不安も入ってきてはいたんだ」

----ニャるほど。
「実際、
映画は、これぞフェアリーテールというか、
おとぎ話のような展開を見せる。
なにせ哲学研究者の前に現れた少女が
『ようこそ森のカフェへ』だもの。
二回目に現れたときには
ギターを抱えて歌まで歌う。
そこは何も特別な森じゃない。
主人公が住んでいる場所のすぐ近く。
おいおい、どうなるんだこれは?
と、こちらはそう思うわけ。
ところが榎本監督は、
この裏に隠された秘密というか、
仕掛け>をあっさりと見せてくれるんだ。
このヴェールの剥がし方も
映画を観る人の楽しみの一つだから、
ここで教えるわけにはいかないけどね」

----ふうん。
じゃあ、メルヘンには
ならニャいじゃん。
「いやいや。
ところがそこに、
もう一つの隠された<秘密>が立ち上がってくる。
ファンタジーをベースにね。
このストラクチャーがぼくはとても気に入ってしまった。
気づく人は早くから気づくんだろうけど、
その<秘密>が
主人公とヒロインの間で通底しているんだね。
で、主人公は
少女の歌に自分の抱えている研究のテーマに通じるものを見る。
それはデカルトの心身二元論

---えっ、そんな難しいものが出てくるんだ。
よく理解できたニャあ。
「いやいや。
脳みそが怠けきっているいまのぼくには到底無理。
でも、これはいったい何を言おうとしているんだろうと考えてみたくなる不思議な力を
この映画は持っているんだね。
考えることの心地よさというか…。
最近の映画って、
いかに観るほうに伝わりやすくするか、
それが上手くできていればいるほど
いい映画として高評価を得やすい。
ところがこの映画は、哲学をテーマにしているだけあって、
そんな昨今の流れに与してはいない」

---じゃあ、人によっては
つまらないんじゃないのかニャあ。
「いや、
その思考とは別に
目の前で展開する映像が
秋の枯葉を軸に
色、構図など、
これまた心地よく計算されている。
たとえ主人公が言っていることが分からなくても、
いつしか足が地上からふわり舞い上がったような
不思議な時間に包まれるんだ。
このあたりの魅力を言葉にするのは難しい。
こういうと反感を買うかもしれないけど、
これは多くの映画を観てきた者だったら分かる感覚」

---ニャるほど。
それが“暗闇の秘密を知った者の映画” という言葉になるんだニャ。
「そう。
そしてそれは誰にでも作れるものではない。
Twitterを見ればわかるけど、
榎本監督は、
脚本の構成や
キャメラの位置について
常に論理的に思考している。
この映画、76分しかない小品。
でも、その中身はきわめて豊かだと思うな」


フォーンの一言「歌もいいらしいのニャ」身を乗り出す

※音楽をあまり覚えられないぼくが口ずさんでしまった度
コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

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