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クロノロジー

2008-12-23 | 佐藤優『国家の罠』&モロゾフ・野坂参三
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2008年12月23日(火)23時00分15秒

『国家の罠』から西村氏の発言内容を抜き出して、クロノロジーを作ってみました。

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2002年5月14日
(背任容疑で逮捕)

5月15日
「私はあなたのことについては、誰よりもよく知ってますからね。このことだけはよく覚えていてね。それから(検察)事務官には席をはずしてもらうことにします。その方が話しやすいでしょう」

5月16日
「こっちは組織なんだよ。あなたは組織相手に勝てると思っているんじゃないだろうか」
「勝てるなんか思ってないよ。どうせ結論は決まっているんだ」
「そこまでわかっているんじゃないか。君は。だってこれは『国策捜査』なんだから」

5月17日
(部屋の電気を消し、ノートパソコンの灯りのみ。強圧的にどなりあげる。)
「世の中それじゃ通らないぜ」
「調べはついているんだぜ」

5月18日
(打って変わって紳士的。)
「そろそろ僕も調書をつくらないと困るので、あなたと対立していない部分について調書を作るのに協力してください」

(日時不明)
「あんたはわかっていると思うが、これは鈴木宗男を狙った国策捜査だからな。だからあんたと東郷を捕まえる必要があった。前島君はそれに巻き込まれた。東郷は逃げた。全体の作りがどうなっているか、あんたにはわかるだろう。こっちは組織だ。徹底的にやるぜ」

(日時不明)
「西村さんは怒鳴ることはないのかな」
「あるよ。僕だってものすごい勢いで怒鳴ることもある。以前、背任事件で銀行員が帳簿に書いた数字が目の前に突き出されているのに嘘をつき通すんで、僕が本気で怒鳴りあげたことがある。これは相手が嘘をついているという絶対的確信があるからだ。それで調書が取れないと検察庁の操作能力が問われることになる」
「よくわかるよ。僕に対しても部屋を暗くして怒鳴りあげたことがあるよね」
「あれは怒鳴ったうちには入らない。それにあなたがどういう人かよくわからなかったから、ああいう訊き方をしてみただけだ。僕がその銀行員を怒鳴りあげたときは、隣の調室の検察官が『西村、いったいどうしたんだ』と心配したくらいだ」

5月31日
「西村さん、外交官というのは一旦、交渉のテーブルにつくとどんな交渉でもまとめたくなるという職業病があるんだよ。西村さんと話をすれば、それはどこかで落とし所が見つかるということなんだ。僕の関心は政治的、歴史的事項にある。この事件関連の資料は、外務省が資料を隠滅しない限り、二十八年後に公開される。そのとき、僕の言っていたことが事実に合致していたことを検証できるようにしたい。供述調書や法廷での発言もそこに最大の重点を置きたい。それならば法的な点については譲ろう」
「その取り引きならばこっちも乗れる。供述調書にはできるだけ政治的、歴史的な内容についても盛り込むようにする」

(日時不明)
「鈴木先生の対露外交はしっかりしているという話をしたら、うち(特捜部)の連中から 『西村は佐藤に洗脳されている。大丈夫か』と言われた」

(日時不明)
私は幹部との具体的なやりとりを西村氏に説明した。それは次のようなものだった。
(中略)
「これも仕方のないことなのでしょう。僕や東郷さんや鈴木さんが潰れても田中(真紀子外相)を追い出しただけでも国益ですよ。僕は鈴木さんのそばに最後までいようと思っているんですよ。外務省の幹部たちが次々と離れていく中で、鈴木さんは深く傷ついています。鈴木さんだって人間です。深く傷つくと何をするかわからない。鈴木さんは知りすぎている。墓までもっていってもらわないと困ることを知りすぎている。それを話すことになったら・・・・」
「そのときはほんとうにおしまいだ。日本外交が滅茶苦茶になる」
「僕が最後まで鈴木さんの側にいることで、その抑止にはなるでしょう」
「それは君にしかできないよ。是非それをしてほしい。しかし、僕たちにはもう君を守ってあげることはできない」
「大丈夫です。そこは覚悟しています。これが僕の外交官としての最後の仕事と考えています」
「やめるつもりなのか。その必要はない。やめてはいけない。君が活躍するチャンスは必ず来る」
(中略)
ここまで話してから、最後に私は西村検事にこう言った。
「西村さん、僕は外務省員として最後の仕事をしているのですよ」
「汚ねぇー。何て汚ねぇー組織なんだ。外務省は」
西村氏は吐き捨てるように言った。私の見間違えでなければ、西村検事の眼に涙が光った。
それから西村氏は、私との会話では、鈴木宗男氏に敬称をつけるようになった。

6月10日
「土曜(六月八日)の日経新聞に、僕が三井物産に入札価格を漏らしたという記事が出ているんだけど、新聞に出すのは最終段階だよね。これが特捜のやり方なのかな」
西村氏は怪訝な顔をして「なあに、その話」と答える。私が記事の内容について述べると、西村氏は事務官を呼び、一時退席した。戻ってきた西村氏は、憤慨した口調でこう言った。
「ほんとうに知らなかった。いまディーゼル班に文句を言ってきた。『僕はいま、佐藤に日経新聞の記事についてどうなっているのかと詰め寄られているんだぞ。いったいどうなっているんだ』と。あなたには正直に言うが、ディーゼルと僕のやっている外務省関連事件は班が違うんだ。僕は完全情報をもっていない。だからどういう構成で事件を作ろうとしているかわからないんだ。僕だって『ガキの使い』じゃないんだから、こんな取り調べはやらない」
事実、その後、一週間、西村氏は三井物産絡みの尋問をしなかった。私は、「任意取り調べ期間に、西村さん以外の検察官から要請が来ても断る。再逮捕になった場合も西村さん以外が担当ならば、房篭もり、仮に強制取り調べになっても、完全黙秘をする」と伝えた。西村氏は「そういうこと言わないで。別の検事が話を聞きたいと言ってきても、一回だけは取り調べに応じて。そうじゃないと僕があなたを囲い込んでいると思われる」と冗談半分に答えた。
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