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0140 ガーシーの亀田俊和氏批判は正当か。(その3)

2024-08-11 | 鈴木小太郎チャンネル「学問空間」
一、前回配信の補足

「ガーシー」とは何か。→「出発点が変な人」
「佐藤進一は、主従制的支配と統治権的支配という、極めて有用な二つのモノサシを提供した」(p176)というが、ガーシーはいつどこで、佐藤進一の「二つのモノサシ」が「極めて有用」であるかを検証したのか。
それを実際に執拗に検証したのが亀田俊和氏。
検証の結果、亀田氏は佐藤進一の「二つのモノサシ」が「極めて有用」でもないことを明らかにされた。


二、「私であれば絶対に犯さない誤謬」考

p177
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 なお、右の亀田批判に対する学問的反論はいまだなされていない。その一方で亀田は、私の亀田批判から四カ月後、二〇一九年六月に刊行された『法制史研究』六八号(奥付では二〇一八年度末の三月になっているが、実際の刊行は六月十五日である)誌上に、いかにも生兵法でヴェーバーと佐藤進一との関連を論じる論考を発表している。一応、亀田の名誉のために言っておくと、そこには、私であれば決して犯さない誤謬がいくつも含まれているので、四カ月前に発表された私の論考を剽窃したものではない、と断定する。雑誌の発行が三カ月も遅延したのも、私の論考を見て、亀田が直前に手直ししたことによる、とかではなくて、きっと別の理由があるのだろう。ただし、である。その後、佐藤雄基が、ヴェーバーと佐藤進一の研究との関連を論じた論文として、東島とこの亀田の論文を挙げている点には、苦言を呈しておきたい。「三類型」を「三元論」などと平気で書けてしまったり、「伝統的支配」を「カリスマ的支配」と誤断できたりする論文、つまりモノサシを使いこなせていない論文を、私の論文と並べた瞬間に、佐藤雄基の見識自体が疑われかねないからである。
 以上、佐藤進一学説とそれへの批判をどう受け止めるべきか、さらにその先をどう展望すべきか、についてはこれぐらいにとどめ、議論を先に進めよう。やや抽象度の高い議論を続けたので、ここで思い切って一枚の図(図3-1)を披露することにしよう。
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「「幕府」論のための基礎概念序説」(『立命館文学』660、2019・2)の注(46)に「東島誠『幕府とは何か』(NHKブックス、二〇一九年刊行予定)」とある。

亀田俊和氏「佐藤進一の将軍権力二元論再論─東島誠からの批判への応答を中心として─」(立教大学史学会『史苑』84巻1号、2024)
https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/records/2000372

p33
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 以上が東島論文の構成と概要である。以下、東島の私見に対する批判を紹介するが、その前に筆者が佐藤説を検討した著書・論文を発表順に並べると以下のとおりである。
①『足利直義』 (二〇一六年)
②『観応の擾乱』 (二〇一七年)
③「足利尊氏・直義の「二頭政治論」を再検討する」(二〇一八年)
④ 「南北朝期室町幕府研究とその法制史的意義」 (二〇一九年)※『法制史研究』68号
⑤「初期室町幕府体制の「滅び」 」 (二〇二二年)
⑥「南北朝期室町幕府研究とその法制史的意義」(二〇二二年。④に加筆・修正したもの)
 東島の批判は主に①②③に対して向けられたものであり、それが公表された二〇一九年段階においては④⑤⑥は存在しなかった。
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『「幕府」とは何か』が刊行された時点では④⑤⑥は存在しており、ガーシーも④には陰湿な表現で言及。
⑥『南北朝期室町幕府をめぐる諸問題』(国立台湾大学出版中心、2022)は台湾で出版されたもので、気づきにくいところは多少ある。ただ、リサーチマップには明記。

亀田俊和
https://researchmap.jp/read0066419

佐藤雄基云々ついては、⑥注(7)に説明がある。

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(7)東島 『自由にしてケシカラン人々の世紀』(講談社、二〇一〇年)六〇頁など。ただし東島は、 筆者のヴェーバー理解を誤っていると批判する。同時に佐藤雄基に対しても、彼がヴェーバーと佐藤進一の研究との関連を論じた論文として東島論文と拙稿を列挙した点について「佐藤雄基の見識自体が疑われかねない」と述べている(以上、東島『「幕府」とは何か』(NHK出版、二〇二三年)一七七頁)。本稿ではその是非には立ち入らないが、さしあたり筆者としては佐藤進一の学説がヴェーバー理論の影響を受けているとする意見が一致すれば十分である。なお、東島がここで言及する佐藤雄基論文は「鎌倉幕府政治史三段階論から鎌倉時代史二段階論へ」(『史苑』八一―二、二〇二一年)三六頁を指すと思われる。しかし、佐藤雄基は佐藤進一の学説を論じた近年の研究として注(5)所掲シンポジウム討論記録などとともに本注所掲東島論文と注(2)所掲拙稿の初出論文(『法制史研究』六八)を列挙しているだけであり、筆者と東島の見解が一致するなどとは一言も述べていない。また正直に告白すれば、注(2)所掲拙稿の初出論文を公表した段階においては東島が佐藤進一とヴェーバーの関係について論じた著書を筆者は知らず、そのため東島を引用しなかった(注(2)所掲拙著収録に際して、六四頁に加筆した)。この点、この場を借りて東島に不勉強をお詫び申し上げる次第である。
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