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南北朝クラスター向けクイズ(その3)

2024-06-23 | 鈴木小太郎チャンネル「学問空間」
5月26日の歴史学研究会大会、6月16日のシンポジウム「中・近世門跡論の可能性を探る」に参加して、どちらの会場でも質疑応答で大田壮一郎氏(立命館大学教授)が分かりやすい話をされていたのを聞き、大田氏は現在の中世宗教史研究を牽引する優れた研究者の一人なのだろうなと思って大田氏の著書・論文を読み始めてみました。
そして、まずは初歩的な本として『京都の中世史5 首都京都と室町幕府』(吉川弘文館、2021)を手に取ったところ、大田氏担当部分に少し奇妙な記述がありました。
過去二回の「南北朝クラスター向けクイズ」よりは相当高度な問題ですが、良かったら挑戦してみてください。

【設問】
 下記文章は早島大佑・吉田賢司・大田壮一郎・松永和浩編『京都の中世史5 首都京都と室町幕府』(吉川弘文館、2021)の「四 京の武家政権と禅宗寺院」(大田壮一郎執筆)から引用した。(p85以下)
この中に(必ずしも明らかな誤りではないものの)現在の研究水準では相当問題のある記述が含まれるが、その箇所を指摘した上で、どのような問題があるかを説明せよ。

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 現在の真如寺は等持院の東隣にある尼寺で、暦応三年(一三四〇)に足利氏の家宰高師直が創建し、高氏一族の菩提寺となったという。ここで注目されるのは、この場所には元々「仏光祖師塔所」(『夢窓国師年譜』)、すなわち仏光派祖の渡来僧無学祖元の爪髪を収めた正脈庵が存在し、これを開山塔に取り込む形で真如寺(この寺名も無学祖元ゆかりという)が成立したという経緯である。
 当地に正脈庵を営んだのは、無学祖元の弟子の無外如大なる尼僧である。彼女は安達氏の出身で金沢北条氏に嫁し、その息女釈迦堂殿は貞氏の正室となり尊氏・直義の兄高義を生んだという(田中拓也二〇一九)。その関係からか、尊氏と直義はそれぞれ正脈庵に所領を寄せている(『仏光国師語録』、「臨川寺重書案文」)(山家浩樹一九九三)。このように真如寺も足利氏有縁の寺院であり、その境内に葬られた清子の墓所が等持院であった(細川武稔二〇一一)。つまり、先に挙げた記事は錯綜ではなく同じ場所を指していたのである(ちなみに、等持院と真如寺はともに無学祖元の塔所円覚寺正続院と同じ「万年山」を山号とする)。
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なお、巻末の「参考文献」によれば、出典は以下の通り。

田中拓也二〇一九:「足利尊氏の兄、高義の生母をめぐって」(『七隈史学』二一)
山家浩樹一九九三:「無外如大の創建寺院」(『三浦古文化』五三)
細川武稔二〇一一:「等持院・真如寺と足利氏」(西山美香編『古代中世日本の内なる「禅」』
         (『アジア遊学』一四二、勉誠出版)

『京都の中世史5 首都京都と室町幕府』
https://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b598245.html

大田壮一郎(立命館大学教授、1976生)
https://research-db.ritsumei.ac.jp/rithp/k03/resid/S000302
https://researchmap.jp/sou-ohta

南北朝クラスター向けクイズ〔2021-01-29〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/6f646366405cf851acf7b8cf9ee85c1b
南北朝クラスター向けクイズ【解答編】
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/f6d0f6f585a180760d494ad4f9b0c01f

南北朝クラスター向けクイズ(その2)〔2024-05-21〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/1b587c7eb95b3d87f48a4b1c4409d5b1
南北朝クラスター向けクイズ(その2)【解答編】
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/2643d0f8acf1a00ad41b78796b6b258e
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