第102回配信です。
一、承久の乱に際しての朝廷側の祈祷
承久の乱の際、朝廷側の祈禱に関する同時代史料は乏しい。
しかし、日蓮遺文に若干の記事。
鶴岡雅代「日蓮聖人の歴史認識─承久の乱の論評を中心に─」（『日蓮教学研究所紀要』21号、1994）
https://rissho.repo.nii.ac.jp/records/11318
p128以下
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それでは、朝廷方の調伏祈禱が、かえって公家政権の敗北をもたらしたとみなされた聖人は、その祈祷の様相をどのように認識されてたのであろうか。聖人遺文において、この祈禱に関して最も詳細な記述が見られるのは『祈祷鈔』であり、その中で聖人は、
秘法四十一人行者。承久三年辛巳四月十九日京夷乱時、為関東調伏
依隠岐法皇宣旨被始行御修法十五壇之秘法（六八一頁）
と記されている。つづいて、「十五壇の秘法」と呼ばれる修法の内容について、
一字金輪法<天台座主慈円僧正。伴僧十二口。関白殿基通御沙汰>
四天王法<成興寺宮僧正。伴僧八口。於広瀬殿修明門院御沙汰>（六八一頁）
とあるように、以下（六八二頁）具体的に修法の名称と行者名などを列記されている。同様のことは『神国王御書』に、
承久の合戦の御時は天台座主慈円、仁和寺御室、三井等の高僧等を相催し、
日本国にわたれる所の大砲秘法残なく行なわれ給。（八八三頁）
とあり、また『本尊問答鈔』にも、
此十五壇の法と申は一字金輪・四天王・不動・大威徳・転法輪・如意輪・
愛染王・仏眼・六字・金剛童子・尊星王・太元・守護経等の大法也。（中略）
其行者の人々又不軽、天台座主慈円・東寺・御室・三井常住院僧正等の
四十一人並伴僧等三百余人也云々（一五八三-四頁）
と記されているのである。これらの叙述に見られるように、聖人は、承久の乱における関東調伏のための祈禱が叡山・東寺・御室・三井において、四十一人の行者を代表として盛大に修せられたことを強調されている。そして聖人は、当時の叡山・東寺・御室・三井の 々たる僧侶たちが関東調伏の真言祈禱を修したにもかかわらず、なぜ朝廷方が敗北したのかという疑問を提示され、その理由は、真言祈祷の在り方そのものに根本的な誤りがあるからではないかという一つの結論に到達される。つまり、真言祈祷の効験がないのは、その修法が釈尊の本意に叶っておらず、仏意を見失った「謗法」の状態に陥っているためであると聖人は主張されるのである。
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日蓮の記録は正確なのか。
近衛基通（1160‐1233）
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E8%A1%9B%E5%9F%BA%E9%80%9A
もしも三浦光村が慈光寺本を読んだなら（その11）─亀菊と長江荘〔2023-02-17〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/631429bc62ffdd914e89bfb7e34289f8
二、顕密体制論は承久の乱の結果を説明できるのか。
承久の乱の際、朝廷側の祈禱に関する同時代史料は乏しい。
しかし、日蓮遺文に若干の記事。
鶴岡雅代「日蓮聖人の歴史認識─承久の乱の論評を中心に─」（『日蓮教学研究所紀要』21号、1994）
https://rissho.repo.nii.ac.jp/records/11318
p128以下
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それでは、朝廷方の調伏祈禱が、かえって公家政権の敗北をもたらしたとみなされた聖人は、その祈祷の様相をどのように認識されてたのであろうか。聖人遺文において、この祈禱に関して最も詳細な記述が見られるのは『祈祷鈔』であり、その中で聖人は、
秘法四十一人行者。承久三年辛巳四月十九日京夷乱時、為関東調伏
依隠岐法皇宣旨被始行御修法十五壇之秘法（六八一頁）
と記されている。つづいて、「十五壇の秘法」と呼ばれる修法の内容について、
一字金輪法<天台座主慈円僧正。伴僧十二口。関白殿基通御沙汰>
四天王法<成興寺宮僧正。伴僧八口。於広瀬殿修明門院御沙汰>（六八一頁）
とあるように、以下（六八二頁）具体的に修法の名称と行者名などを列記されている。同様のことは『神国王御書』に、
承久の合戦の御時は天台座主慈円、仁和寺御室、三井等の高僧等を相催し、
日本国にわたれる所の大砲秘法残なく行なわれ給。（八八三頁）
とあり、また『本尊問答鈔』にも、
此十五壇の法と申は一字金輪・四天王・不動・大威徳・転法輪・如意輪・
愛染王・仏眼・六字・金剛童子・尊星王・太元・守護経等の大法也。（中略）
其行者の人々又不軽、天台座主慈円・東寺・御室・三井常住院僧正等の
四十一人並伴僧等三百余人也云々（一五八三-四頁）
と記されているのである。これらの叙述に見られるように、聖人は、承久の乱における関東調伏のための祈禱が叡山・東寺・御室・三井において、四十一人の行者を代表として盛大に修せられたことを強調されている。そして聖人は、当時の叡山・東寺・御室・三井の 々たる僧侶たちが関東調伏の真言祈禱を修したにもかかわらず、なぜ朝廷方が敗北したのかという疑問を提示され、その理由は、真言祈祷の在り方そのものに根本的な誤りがあるからではないかという一つの結論に到達される。つまり、真言祈祷の効験がないのは、その修法が釈尊の本意に叶っておらず、仏意を見失った「謗法」の状態に陥っているためであると聖人は主張されるのである。
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日蓮の記録は正確なのか。
近衛基通（1160‐1233）
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E8%A1%9B%E5%9F%BA%E9%80%9A
もしも三浦光村が慈光寺本を読んだなら（その11）─亀菊と長江荘〔2023-02-17〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/631429bc62ffdd914e89bfb7e34289f8
二、顕密体制論は承久の乱の結果を説明できるのか。
権門体制論は承久の乱の戦後処理を説明できるのか。
新年のご挨拶（その２）〔2021-01-03〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/c17a2e0b20ec818c1ab0afd80862eb6f
承久の乱後に形成された新たな「国際法秩序」〔2021-10-01〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/c6e725c677b4e285b26985d706bf344c
川合康氏「鎌倉幕府研究の現状と課題」を読む。（その４）〔2023-03-09〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/445055e235c4074de2517fb032953962
0024 佐藤雄基氏の研究について（その１）〔2024-01-24〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/b40ce7a34a7da740383ef93a82085e32
「朝幕関係が一変したとか、幕府が朝廷を従属下に置こうとしたというわけではない」（by 高橋典幸氏）（2021年 9月29日）
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/8fc879a7e15b24002c5aa3efd256d232
東京大学教授・高橋典幸氏に捧ぐ「隠岐にて実朝を偲ぶ歌（後鳥羽院）」〔2021-10-01〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/715897be49d108c681eb0c462e2af4f8
