市の星月夜日記

織江市の短歌、エッセイ

ゆくりかに微光松葉の匂ひ射すさやかに消ゆる雪とふるさと

2010-02-18 17:47:09 | Weblog

 春の雪。



 朝方ふりしきり、ずいぶん積もるかと想ったのに、昼すぎから陽射し照りつけ、今はもうあとかたもない。



 向かいの山など、樹影くきやかに白かった。


 アスファルトの雪などは、たちどころに消えてしまう。


 雲が割れて薄日さした午前中に出かけたら、もう雪融けの滴りが、あちらこちらの軒から伝う。


 ふっと、どこからともなく、松林の匂いがした。それは、たぶんわたしの思いなし。


 このあたりに香りたつほどの松はないから。



 

 A・ワイエスの絵のいくつかを思い出す。


 針葉樹の森の大気の記憶は、たぶんわたしの脳のどこかにしまいこまれていたものだろう。



 回想、というほどにもさだかでない、一瞬のノスタルジア。



 雪融け、松林。












 どこか遠くの追憶の巣。
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