夜明け前、風の音におどろく。
ベランダで吹き荒れるすさまじさ。どこぞでごぉっ、とうなるよう。
ばたばた、と何かがはためく。翼さながら。洗い物は昨夜にしまったはず……
なかばは眠りながら、耳だけがあざやかに風を聴いた。
まだ明烏にも早い。
ふわっとまた深い眠りに落ちて、今度は目覚まし時計で起きた。
春一番かな?
曇り雨のお天気のはずだけれど、快晴。濃い青空に、輪郭のやわらかな雲の景色。
ああ、春、と想う。
自転車であちらとこちら。
南風に真向かって、なかなか進まない。季節風。
あたたかなまひる。
ひとの体も自然には敏く、わたしの手、昨日おとといより、しっとりと潤っている。
ハンドクリームを塗っても、冬から春へ、季節を吸い込んだ皮膚の感触は違う。
自然のうつろいに、揺られ運ばれて生きていること……。
雲のかげり、湿度を含んでくらがる。明日は雨かもしれない。