プラチナ世代のマラソン旅行

時悠人chosan流処世術

★「小さな政府」の幻想⑤

2009-08-26 09:29:36 | 日記・エッセイ・コラム

 スェーデンの制度を、分かり易くたとえると、国民は、収入を二つの財布に分けて持ち、一つを国に預け、使い方を監視する。もう一つの方は、自分自身で管理する。税金は、国民にとって、いわば政府貯金のような性格だ。

 人生80年として、将来、個人で解決不能な事態が発生しても、国や自治体ならばカバー出来る。そう考えれば、高額な税金を払い(=貯金)、還元してもらう図式が成立する。自分の財産を預けるのだから、当然、国民は、使い方(=政治)に関心を持つ。

 政策の基本は、貧困者を国の責任で救済し、中間所得者層を底上げするスタンスだ。絶対多数の中間層が豊かになれば、国全体が豊かになる。高齢者は、豊かな年金生活に入ることで、職場の新陳代謝が図られ、若者の失業リスクが減少する。定年延長によって、年金財源問題を解決する日本とは正反対だ。

 少子高齢化時代にあって、「高福祉は財源を圧迫する」と叫ぶのは、余りにも脳がなさすぎる。ましてや、「小さな政府」とか「地方分権」は、借金のツケを何処に回すかを論じるのと同じだ。企業が払うべき「社会コスト」にメスを入れ、法人税を含めた「税制の抜本改革」が最優先課題だと思う。(次回、最終回)


★「小さな政府」の幻想④

2009-08-25 08:06:59 | 日記・エッセイ・コラム

 高福祉を維持するスェーデンの税金は確かに高い。しかし、国民が、それを受容している現実の方がより重要だ。

 個人に課されるのは、所得税(住民税を兼ねる)30%と消費税25%だけ。日本のように健康保険・介護保険・国民年金等、第二の税金類似の徴収は一切ない。しかも、食品に課される消費税率は11%と低く抑えられている。また、年金支給額は、消費税を十分払うことが出来る水準を確保している。

 一方、企業が支払う税金は、法人税と雇用主税(社会保障税)の二つ。法人税は、純利益に対する賦課で、雇用主税32%は、人件費に対するもの。この32%の中に、年金・保険等の社会保障費がすべて含まれていて、大学就学費用もこの範疇だ。

 その代わり、給与に、「扶養家族手当、育児休職手当」或いは、「交通費手当・住宅手当」等の生活給付に関する手当が一切なく、退職金もない。企業が労働者に支払う賃金は、純粋な労働対価だけなので、日本のように、家族調書を会社に出したりしない。

 年金制度や税体系が単純明快なので、複雑かつ膨大な付随事務は不要。企業側から「雇用主税を軽減して欲しい」との要望が出ても、国に譲歩する考えはない。大企業を優遇する日本政府とは大違いだ。


★「小さな政府」の幻想③

2009-08-24 09:43:53 | 日記・エッセイ・コラム

 現政権の福祉政策は、「中負担・中福祉が妥当」との見解だ。少ない負担で高福祉を求めるのは、虫がよすぎるが、この「中負担・中福祉」は一番曖昧な概念だ。個人的には、「高負担・高福祉」が望ましいと思っている。

 毎年、国会議員や官僚がスェーデンを視察に訪れているが、何一つ、具体的な政策に反映されないのは何故か?「高度の福祉政策は、重い税負担を伴い、財政を圧迫する。行財政改革をどのようにしているのか」と質問して、その返答に戸惑うありさまだ。

 スェーデンでは、「行財政の改革や合理化、或いは効率化は、日常茶飯事」であり、「税金を無駄なく使わなければ、国民への説明がつかない」ことが常識化している。国民の政治的な関心が極めて高く(選挙の投票率は、常に80%超)、議員も公務員も緊張感をもって仕事をしているということだ。

 蛇足だが、スェーデンには公務員の定員という概念はない。新しい仕事が出来れば、新規採用し、終われば解雇するシステムで、労組も了解済みだ。日本のような硬直的な思考回路では、夜明けは遠い。明日は、スェーデンの税制を概観する。


★「小さな政府」の幻想②

2009-08-23 09:17:24 | 日記・エッセイ・コラム

 次の表は、主要国の公務員数を比較したものである。公務員には、「行政・議会・司法・国防・公社・公団・公的企業」従事者すべてを含む。なお、出典は、野村総研及びスェーデン統計局資料(2005or2006年度数値)。

<colgroup><col width="38" style="WIDTH: 29pt; mso-width-source: userset; mso-width-alt: 1216" /><col width="43" style="WIDTH: 32pt; mso-width-source: userset; mso-width-alt: 1376" /><col span="2" width="44" style="WIDTH: 33pt; mso-width-source: userset; mso-width-alt: 1408" /><col width="43" style="WIDTH: 32pt; mso-width-source: userset; mso-width-alt: 1376" /><col width="42" style="WIDTH: 32pt; mso-width-source: userset; mso-width-alt: 1344" /><col width="57" style="WIDTH: 43pt; mso-width-source: userset; mso-width-alt: 1824" /></colgroup>
【人口1000人あたりの公務員数】
日  スェーデン
12.6 42.4 9.8 53 22.4 32
地方 29.6 35.9 64 42.7 47.3 113
合計 42.2 78.3 73.8 95.7 69.7 145

 これを見れば、一目瞭然。公的部門で働く公務員が国民人口に占める割合は、6カ国中、日本が一番少ない。公務員が多過ぎると強調する理由が解せない。

 福祉大国として、常に引き合いに出されるスェーデンは、人口わずか900万人で、GDPは世界19位だ。それでいて、日本の3倍もの公務員を抱えている。となると、福祉政策の決め手は、経済力の規模ではない。

 経済成長を図り、雇用を確保し、所得を再分配すると麻生総理は強調するが、そろそろ、その図式の愚かさに気付くべきだ。国際競争力の美名のもと、大企業を保護し、パイを拡大する日本の社会経済構造の危うさに気付くべきだ。


★衆院選の幻覚

2009-08-21 09:04:40 | 日記・エッセイ・コラム

 8月30日の投票日まで、余すところ9日となった。与野党とも、「政権交代」「政権選択」を訴える割には、中傷合戦に終始し、低調な印象が拭えない。

 TVは、政党別マニフェストの対立点を取り上げるよりも、連日、酒井法子の麻薬事件に時間を割き、見せる週刊誌さながらで、もううんざりだ。民放が視聴率万能主義なのは、ある程度、理解するが、NHKまでがトップ扱いをした日があったのには、あきれ果てた。

 解散から投票日まで、40日間あったにも拘わらず、この国の将来ビジョンに関する議論が深まらない責任の一端は、メディアにある。このままでは、4年前の「郵政民営化イエスかノーか」の二の舞いになりかねない。

 芸能界のスキャンダルを緩衝材にして、劣勢の与党に対する逆風を防ごうとする作為かと、疑心暗鬼に陥ってしまう。長きにわたる自公連立政権の総括をして、国の進路を決する選挙が迫っている。明日以降、政治に関する話題を綴っていきたい。