救援連絡センター発行「救援」紙の、2面の連載コラムより。
2006年、坂上香監督はサンフランシスコを拠点にする劇団(メデア・プロジェクト:囚われた女たちのシアター)と出会った。社会に埋もれている女性受刑者の声を挙げた女たちの集団だ。
参加しているのは、元受刑者、HIV陽性者、元麻薬中毒者。日本の私たちには、ちょっと引いてしまう類の女たち。描かれているのは、薬物依存、前科、家庭内暴力、強姦、虐待、育児放棄、貧困、それらの複合的な総合的な重なり。
彼女たちには、十数名のアーチストが関わっていた。ヒップホップ・ダンサーで振付師、高校の美術の教員、ヨガのインストラクター、演劇を通した社会変革を研究しているという大学院生、学校の事務職についている脚本家、プロのコスチュームデザイナー、公務員兼俳優まで、実に様々な背景を持った多ジャンルのアーチストたちだ。人種も、白人、アフリカ系、ラテン系、フィリピン系、インド系と多様。そのうち二人は、刑務所で服役中にメデアに出会った卒業生なんだって。
主宰者のローデッサ・ジョーンズは、彼女達のようなアーチストの存在がメデアには欠かせないと言う。なぜなら受刑者にとってアーチストは、同伴者であり、ロールモデルであり、シスターであり、時には代弁者であるからだと。なるほど。
声にならない声を詩や踊りで表現し、社会にトークバックする(声をあげる)メデア。自らの人生を取り戻し、仲間や家族や観客と新たな関係を築いていく彼女 たちの姿は、私たちに多くの発見と勇気を与えてくれる。坂上監督は、この映画を完成させるために、大学の専任教員を辞め、フリーの映像作家に戻った。そして八年の歳月をかけて完成させた。
テーマは、「表現」と「人の変容」だ。
本作品が劇場公開され、それが呼び水となって多くの場で上映会やイベントが持たれることを望んでいるとのこと。震災、原発事故を経て、絶望感や閉塞感が加速する社会のなかで、私たち一人一人がトークバックしあう(自らの声を取り戻し、響き合う)ためにも、この映画を各地に拡げていきたい。
3月から渋谷イメージフォーラムにて公開。モーニングショーの直後に15分間、ミニワークショップやトーク有り。
3/22(土) 新井英夫さん(体奏家)
3/23(日) 生島嗣さん(ぷれいす東京代表)
3/29(土) 上岡陽江さん(ダルク女性ハウス代表)
3/30(日) 花崎攝さん(ワークショップ・コーディネーター)
3/31(月) 上野千鶴子さん(社会学者/wan理事長)
4/5(土) 信田さよ子さん(臨床心理士)
4/6(日) 綾屋紗月さん(発達障害当事者研究者)
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