チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第78話 チエちゃん、入院す!

2007年06月10日 | チエちゃん
 その日、チエちゃんは朝から、少しお腹が痛かったのです。
いつもならお便所に行けば、すぐによくなるのに、その日はいつもと違っていました。
 お昼近くなっても痛みが続くので、チエちゃんはおばあちゃんに訴えました。
そこで、正露丸を1粒飲んで様子を見ることになりました。

 けれども、午後になってもお腹の痛みはますます強くなるばかりです。
うずくまって痛みに耐えるチエちゃんを見たおばあちゃんは、心配そうに

 そんなに痛゛いんなら、お医者さんに診でもらわねっかなんねなあ

と言います。
 でも、それだけは絶対に嫌です。チエちゃんは首を横に振り、イヤイヤをしました。
注射器を持った怖いお医者さんの顔が頭を過ぎります。
こうして問答を幾度か繰り返し、とうとう1晩を過ごしたのです。

 翌朝になっても、一向に引く気配を見せないお腹の痛みに、チエちゃんは幼いながらも、ただ事ではないと感じ、しぶしぶお医者さんに行くことを承知したのでした。

 石崎医院は、チエちゃん家の掛かりつけのお医者さんで、絵のぼりの家のわき道を少し入った所にありました。おじいちゃん先生でしたが、腕は確かだと評判の医師でした。

 お医者さんは診察台のチエちゃんのお腹をあちこち押した後、

 フム、・・・・・・・・

看護婦さんに指示を出しました。チエちゃんは何をされるのか不安でたまりませんでしたが、看護婦さんはチエちゃんの耳たぶに傷をつけて血液を採取しました。

 検査の結果を見たお医者さんは、付き添っていたおばあちゃんにこう言ったのです。

 急性の盲腸だな、これからすぐ手術すっから、大丈夫だがら

 それから先は何がどうなったのやら、チエちゃんが気がついた時には、見知らぬ部屋のお布団の上に寝ていたのでした。

 一昼夜お腹の痛みを我慢していたせいで、チエちゃんの化膿した盲腸は破裂寸前であったことを、術後、家族は知らされたのでした。我慢するのも善し悪しですね。

 この入院中に、おばあちゃんは付きっきりで看病してくれたのですが、お医者さんから大目玉を食らった事件がありました。
それは、おならが出るまでは何も口にしてはいけなかったのに、お腹がすいたチエちゃんがあんまりせがむものだから、おばあちゃんは孫可愛さにペコちゃんのミルキーを1つ与えてしまったのでした。
まあ、何事もなかったので、笑い話で済んだのですけれどね。

 追伸
 チエちゃんが緊急手術をした3~4日後に、遠藤商店の息子たかお君も盲腸になったのです。盲腸は伝染病ではありませんが、どうやら流行るらしいのです。