職場に私と同年代の変なおじさんがいる。
ドーナッツショップで棚一列全部のドーナッツを買占めたり、ハンバーガショップに行けば30個も注文したりと、私には無駄遣いとしか思えない大人買いを楽しむ御仁である。
デスクの引き出しには、箱買いしたチロルチョコ、うまい棒の大袋などがいつも入っていて、自分が食べるというのでもなく、女子社員に配っている。
今日も今日とて、若い子をつかまえ、
「これ、なんだかわかる?」とポリ袋に入ったカードを見せる。
「えっ? なんですか?」
彼は、ニヤニヤしている。
「チエさんなら、知ってるでしょ?」
そう言うと、何十枚か束ねられたカード中から、1枚を取りだして寄こした。
ようかいけむり
ふ~む、見覚えはないものの、昭和の匂いがプンプンする。
「裏側の薄い紙をはがすと、ベタベタするものが付いているから、それを指先に取って、つけたり離したりすると、煙がでてくるんだよ。」
それなら、知っている。
セメダインでそんなことをやった覚えがある。
なつかしくなってやってみると、確かに煙のようなものが出る。
しかし、似て非なるものだ。
子どもだましだ。
けれども、
未来を夢見る子どもたちにはきっと必要なものなんだろうと思う。
「俺、退職したら駄菓子屋やるんだ。」
彼の言葉は、冗談半分、本気半分に聞こえた。